第二話 科学者の母、誕生日の私

 母は科学者。あの煙も前作った物を溶かす粉も全部科学。私も最初は魔法だとかそういう類のものだと思っていた。しかしそういうたびに母に否定された。

「これは魔法ではなくしっかと自然の摂理に従ってできた科学の産物なんですよ」と。

 母に何度も科学について教えられ、テイン王国でいう中等教育学校を卒業する齢の頃には母のやっていることがなんとなく理解できるまで成長した。母には遠く及ばないが、確かな成長を感じた。

 冬が明け、雪が溶け、美しい花が咲く季節。今日は私の誕生日。今年で16歳になる。森の奥にテーブルと椅子を出して、作った料理を静かな森で食べるというささやかな誕生日会。並べられた手作りの料理は決して豪華ではなかったが、私にとって料理なんて正直どうでもよかった。母さえいれば私は幸せ者…

「ベレッタ」

 急に名前を呼ばれて少しビクッとしてしまった。

「は。はい。何でしょうか」

「誕生日おめでとう」

 そう言って私に本を一冊プレゼントしてしてくれた。

「ありがとうお母様!」

 つい声が大きくなってしまう。

「いいのよ。喜んでもらえたようで嬉しいわ」

 そうして少しばかり談笑した後、誕生日会はお開きとなった。食器を家に運び片付けを始める。母が先に帰ったので私は一人。風が強い。ビューっと大きな風の刃が体にあたる。

 風はしばらくすると止んだ。そしてまた静粛が舞い戻る。慣れているはずの物音ひとつしない森になんだか胸騒ぎを感じた。この静粛が嵐の前の静けさでないといいが。

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