第85話 聖剣に照らされて

 形勢が逆転した……なんて言えればどんなにいいだろうか。残念ながら、ジークに動揺したような姿は見えない。

 そんな強敵に相対しながらも堂々たる立ち姿を見せるレイ。その自信満々なレイの横腹をつき、尋ねる。


「で、これからどうするか考えてるか?」

「……いや、全く。」

「一つ、聞いておきたいんだが。レイの全力なら、あいつを消し飛ばせられるか?」

「エクスカリバーの力を借りればできるだろう。ただ、相手は再生する。勝ち目があるとは思えない。」

「ははっ、それならいいよ。再生の方は俺とグシオンで何とかするから。レイはエクスカリバーの力を貯めるのに集中してくれ。」


 言い切った所で、グシオンが俺の頬を軽くつつく。


「ちょいちょい、そんな安請け合いしていいのザッキー。数秒しか稼げないんじゃない?」

「……それもそうだよな。レイ、エクスカリバーで全力出すのにどの位時間がかかるか分かるか?」

「私の魔力の全てを込めるなら、三分位は欲しい。頼める、だろうか。」

「……任せろ。何とかしてみせる。グシオン、聞いてくれるか?」


 はっきり言って分は悪いだろうが、これしか方法が思いつかない。

 俺は思いついた作戦をグシオンと脳内で共有する。


「ザッキーって、ほんとに向こう見ずだよね。でも、そういうのも嫌いじゃないよ。」

「そう言ってくれると思ったよ。」


 不敵に笑うグシオン。彼女を肩に乗せたまま、前に出る。

 レイはエクスカリバーを掲げ、背後で魔力を貯め始める。


「くだらん会議は終わったか?」


 威圧的な言葉と共に血に濡れたグラムを構えるジーク。


「待たせて悪いな。そろそろ終わらせよう。」

「はっ、世迷言をっ!!」


 視界からジークが消え、同時に右腕が切り落とされる。視界の端に右腕を視認した時既に、グラムは俺の胸に突き刺されていた。


「口ほどにもないな、つまらん。」


 ため息をついてジークはグラムを抜こうとするが、グラムが抜けることはない。それは俺が左腕で押さえているから。グラムが深く突き刺さってなお、俺の腕から力が抜けることはない。

 何故、自分がグラムを引き抜くことができないのか。その種に気づいたジークは初めて表情を崩した。


「自己犠牲……いや、貴様……っ!!」

「ははっ。俺があんたの動きを止めるためだけに、わざわざ剣で刺されに来たとでも思ったか?」


 ジークのグラムが俺に突き刺さったその時。急接近したジークに俺もまた突き刺したマンドラゴラの根を。

 マンドラゴラの根を通り、ジークの身体から吸収された魔力は俺に力を与えてくれる。


「疑似永久機関、完成だ。さぁ、根気比べの始まりと行こう!!」

 

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