第83話 隠し種
引き抜かれたことで、エクスカリバーはグラムと分離した。その様子にジークは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにレイとの距離を詰める。その手はグラムに伸びている。
「……っ、あいつの置き土産か。厄介な……!!」
振るわれたグラム、それをレイはエクスカリバーで受け止める。並みの剣とは異なり、エクスカリバーが砕けることも押し負けることもない。
「アーサー様から直々に預かった剣だ。私にも勇者の資格があったらしい。」
「まぁ、いい。異物がなくなったお陰でグラムも動きやすくなった。」
「こちらも勇者様のご加護か、身体が動くようになってきた所だ。」
両者つかず離れずで繰り返される剣戟。エクスカリバーを手にした効果か、レイはジークの動きに対応している。両者にある実力差をものともしないレイの勢いは次第にジークを圧倒していく。
「く……っ。手こずらせるな……!!」
「このまま勝たせてもらう。」
鍔迫り合いの末、レイはジークの拳を勢いよく押し上げた。そして、無防備な身体を晒したジークの身体を切り裂いた。グラムを握ったまま切り飛ばされた右腕、バランスを崩したジークの肉体に向け、レイはエクスカリバーを差し向ける。
心臓に向けて突き出されたエクスカリバー、それを避けるようにジークは飛び退く。しかし、逃げ切れる筈も無く、ジークの胸にエクスカリバーが突き刺さった。だが、先が刺さった所で剣は止まってしまった。勝利を確信していたレイの顔は苦悶に歪んでいる。その右腕には切り離したはずの右手に握られたグラムが突き刺さっていた。
「な、何故……。」
「あいつなら、トカゲの尻尾切りとでも称しただろうか。もう俺に人としての矜持はない。」
左手でエクスカリバーを引き抜きつつ、右手を遠隔操作してグラムを引き抜く。レイの右腕からは鮮血がこぼれ、ジークの身体に右腕が戻る。
「うっ。」
「暇つぶし位にはなった。……死ね。」
レイが防御の姿勢を取るのを許さないまま、ジークのグラムが迫る。しかし、その刃がレイに届くことはなかった。ジークの肉体から伸びた何かが彼の腕の動きを止めていた。
「何だこれは……根か……?」
「はぁっ、はぁっ、間に合った……!!」
異世界から来た勇者が到着し、現場は古の勇者の予言通りになろうとしていた。
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