第三章 冒険者の街 ラルスローレン

第33話 Re:スタート

 空から舞い降りた少女と地上の少年。住む世界の違う二人の出会い、言わばボーイミーツガールが冒険の始まりを告げる。

 金曜日によく見る映画から考えるなら、未知の人間との特殊な出会いは、冒険の匂いを感じさせるものだ。つまり、冒険者にとって最高のシチュエーションの筈。


「雲の上、しかも天空の城から来てるし。」


 浮遊出来るような石は無いけど、それ以外は大体あの映画と一緒だ。最後に崩壊したのも一緒。まぁ、こっちはバハムートに撃墜されたからなんだけどな。

 そうやって、ぶつぶつと呟く俺の肩をレイが突く。


「ツカサ、何の話をしているんだ?」


 小声で俺の様子を伺うレイの顔には不安げな表情が浮かんでいる。


「金曜日のちょっとしたお楽しみの話だよ。」


「い、意味が分からないぞ……。」


「ま、気にしないでくれ。」


 確かにこの状況でふざけるのは良くない。でも、こうでもしないと俺は叫びだしてしまいそうになる。どうしてこう、次から次へと問題を抱え込まなくちゃいけないのか。

 そんな俺達に状況を形成する大きな要因、俺達を囲む様に武器を構える冒険者達が口々に告げる。


「何をごちゃごちゃ話してるんだ!!」


「状況分かってんのか!!」


「大人しくしろ!!」


「変な動きを見せたら切るぞ!!」


 血気盛んな冒険者達、彼等の顔に浮かんでいるのは怒りというより、恐怖に近い。怖いのを必死に奮い立たせているって感じだ。

 そりゃ、バハムートの爆撃喰らった後に妙な格好の奴等が降りてきたら怖いのは当たり前だ。俺はせめて和ませようと、口を開く。


「なぁ、龍の巣って知ってるか?」


 俺の言葉を聞いた冒険者達は、その額に血管を浮かび上がらせる。


「ふざけんな!!」


「やっぱりお前ら、バハムートの手下だろ!!」


「意味分かんねぇこと言ってんじゃねぇよ!!」


「目つき悪いんだよ!!」

 

 飛び交う怒号。ていうか、最後のはただの悪口だろ。生まれつきだよ、仕方ないだろ。


「はぁ……。」


 それにしてもどうしてこんな事になったのか。これも全部バハムートが悪い。次会った時は絶対ボコボコにしてやる。


「俺の異世界生活は何で波乱続きなんだよ……。」


 もうちょっと楽させてくれてもいいだろ、またゼロからのスタートじゃん。


「まぁ、ゼロじゃないか。」


 俺には仲間が出来た。彼女達のお陰で問題も解決…………増えてないか?

 気付いてはいけないことに気付いた俺は天を仰ぎ、俺達が抱える問題へと想いを馳せた。

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