第15話 料理のさしすせそは1つもない【実践編】

 俺とマーリンがやって来たのは城の外、庭園の一角。


「で、ここで何するんだよ。」


 とりあえず付いて来い、それだけ言われてきた。そろそろ説明があってもいい頃だ。


「其方のマンドラゴラに関する能力の底上げを行う。ほれっ。」


「ほっ、と。」


 マーリンから投げ渡されたのは紅い宝石の付いた指輪。年季の入った如何にも高そうな指輪だ。


「それは余の指輪。嵌めれば其方の能力の底上げが可能となる。」


「いいのかよ、こんなのもらっちゃって。」


 異世界に来てから一文無しだし、代金を払えるような余裕は無い。

 心配する俺に対して余裕の笑みを浮かべると、マーリンは両手を顔の前で広げる。


「余はまだこれだけあるから問題ない。」


 そこには9つの指輪が嵌められていた。それぞれの色は異なっており、丁度左薬指にだけ指輪が無い。それが俺の手元にあるやつで間違いない。


「そっか、ありがとな。それじゃあ、ご厚意に甘えさせて貰いますっ!!」


 左手、薬指に紅い指輪を嵌める。痛みは無く、あっさりと指に収まった。


「うむ。上手く適応できておるな。では、マンドラゴラの種を作ってみよ。」


「種……?」


 モンスターに種とかあるのか? 確かに動物系モンスターも子供とかいたりするし、種があっても可笑しくない。


「まずは種、そこから品種改良していけばよかろう。」


「なるほどな。……マンドラゴラの種。」


 目を閉じ、両手にマンドラゴラの種を想像する。俺が与えられた能力はマンドラゴラの生成、恐らくそこに種からの生成は含まれてない。その上限を解放してくれるのが、この指輪なんだろう。

 仄かに温かくなる手のひら。そっと目を開ける。


「種……出来てる!!」


「早速、埋めるが良いぞ。」


「おう。」


 言われた通り、人面が付いているようにも見える球根を地面に埋める。これが成長すれば実験成功、といった所だろうか。


「それじゃあ、もうしばらく待つとするかの。帰るぞ、ツカサ。」


「ん、今行く。」


 頼んだぞ、と地面を一撫で。それをしてから俺はマーリンと共に庭園を離れた。

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