第37話 脈アリ
「急に部屋が寂しくなったね・・・」
「これが普通なのよ」
「・・・そうだな。昼寝でもするか」
「あら、英慈も昼寝部に入信する?」
入部じゃなくて入信なのが闇を感じるな。
「え、英慈も寝てしまうの?」
「あぁ。起きていても仕方がない」
「そうね。七海も一緒に寝ましょ」
「嫌だよ!まだお昼だよ!遊び足りないよ!」
小学生か。
「そうね。ベッドの中で遊びましょ」
「おい。絶対外でそういうこと言うなよ」
「あら、どういう意味かしら」
「・・・おやすみ」
言い合いで敗北する姿を予知出来た。人間、立ち向かうことも大切だけど、逃げることが出来てこその対峙だからね。
「英慈・・・気持ち悪っ!」
七海からの鋭すぎる言葉の矢が心へと刺さったけど、気にしない気にしない。人間、痛さに気付いて治療することも大切だけど、我慢することも重要なんだ。
「あら、今頃気付いたの?私はとっくの前に気付いてたわ。」
「ホントだ・・・ウチも初めて出会った瞬間に気付いていたのに・・・」
人間、泣くことも大切だね。
「とにかく襲われないように固まって寝ましょ。貞操の危機が迫ってるわ」
「うん。賛成!」
「襲わねぇよ!」
俺、そこまで変態視されてるの?考えることを放棄しよう。ほら、人間って賢いから疑問を確信に変えてしまうことが出来るんだよね。
これ、自分にとって有利なことだったら大歓迎だけど、有利じゃない、つまり不利な事は黒羽的には避けたい。ってことで知らぬが仏っていうことわざを免罪符にして眠りにつきます。おやすみなさい・・・。
―ピロッ
ワンコールで起きる男、黒羽英慈です。嘘です、眠れませんでした。
「はい」
「あ、歩です! 黒羽君ですか!?」
「おう。黒羽君だよ」
「感激です・・・!!!っじゃなくて萩くんの事で・・・」
電話に出ただけで感激されるなんて・・・自己肯定感が上昇してきた。最近、罵られてばっかりだから涙が出そうだ。
・・・そうじゃなくて萩がどうしたって?
「今からなら大丈夫だそうです!場所は談話室でどうでしょうか!?」
「お、おう。分かった」
「分かりました!伝えときます!」
―プチッ
千宮くん、零細企業の秘書みたい。それにしても今から会えるのか・・・。
脈ありだと想ってもいいのだろうか。あ、そういう意味じゃないです。はい。
ベッド、異論としてソファーから立ち上がって七海とゆずを見るとぐっすり眠っていらっしゃる。貞操の危機ならもう少し危機感持っていた方が良いのではないでしょうか。
持っていくものは・・・無いか。手探りでSAEGを探していたけど、そのSAEGを取り返しに行くんだった。さぁ、取り返しにいきましょうか。
「行くのね」
「起きたのか」
「珍しく目を覚ましたわ」
「雪でも降るのか心配になってきたぞ」
「そうね。傘は忘れずに」
「持っていかねーよ」
「・・・行ってらっしゃい」
「・・・行ってきます」
「夫婦みたいね」
「自分で言って恥ずかしくないのか・・・」
ドアを閉める寸前に手を振られた気がした。
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