第35話 千宮歩の告白

誰も居なくなった談話室を去る。これ、電気とか消さないで良いのかな?まぁ、どうでもいいか。四ノ宮の電気代が高くなったって俺には関係ない。

 

「連れてきたわよ」

 

部屋で待っていると、千宮くんと七海よりも早く夏美さんと瑠璃夏さんをゆずが連れてきた。

 

「助かる。あ、夏美さん達もありがとうございます!」

 

「いやいや~事情は聞いたから!」

 

「大丈夫だよ!英慈っち」

 

「本当に助かります!」


持つべきものは先輩です。


「それにしてもSAEGを盗まれるって中々の不注意だね」

 

「全くだわ」

 

「気をつけます・・・」

 

はい。こればっかりは俺の不注意です。SAEGから目を離さないことにします。

 

「でも大丈夫だよ!私達が覗いてあげるからね!」

 

「直ぐに分かる感じですか?」

 

「うーん、英慈っちが盗った?ってその人に聞いてくれればハッキリと覗けるよ!」

 

「頑張れば部屋に入った瞬間に覗けるかも」

 

「凄いっすね・・・」

 

とんでもなく便利な能力だな。


・・・あれ?部屋に入った瞬間、直ぐに分かるなら最初から頼ってしまえば良かったのかな?

 

「あーそれは無理だよ!」

 

「そうなんですか?」

 

「うん。相手がそのことを少しでも思い出している状況なら覗けるけど、普通は四六時中そんなこと考えていないよね? つまり英慈が今、脳内で妄想していたように私達と校内を散歩しながら出会った人の思考を除いて犯人を見つけるって方法は少し難しいかな」

 

「そうなんですか・・・。いろいろあるんですね」

 

「そうなんだよ!不便だよね」

 

いや、非常に便利だとは思いますよ。

 

そんなことを話していたら本日の主人公を従えて七海が登場した。

 

「連れてきたよ!」

 

「おう。千宮くん、こんにちは」

 

「は、はひ!」

 

緊張しているからか語尾が既存の日本語用法に当てはまっていない。

 

「俺の、黒羽英慈のSAEGを盗んだ?」

 

ここでダラダラ話している時間はない。

 

「盗んでないんですって!!!」

 

声だけは威勢の良いこと。嘘をついても無駄なのにねぇ。さぁ、夏美さん、瑠璃夏さんお願いします!

 

「あー・・・これは・・・」

 

「これはこれは・・・」

 

微妙な顔をぶら下げているお姉さん方。え、まさかハズレですか?

 

「ど、どうっすか?」

 

「うーん、これは本人の口から聞いた方が・・・」

 

「え?」

 

「私もそう思う・・・」

 

「へ?」

 

どういうことですか? 聞いてはみるけど・・・。

 

「千宮くん、この2人は超感覚者で考えていること、思っていることが手に取るように分かってしまうんだけど・・・・」


ビクッ

 

「何か言うことはない・・?」

 

絵に描いたようなうろたえを実践している少年。お姉さん方もどういうつもりだ?普通に教えてくれれば良いものを。

 

「あ、あの!」

 

「はいはい」

 

「好きです!」


「はいはい」

 

ということは真犯人が別の所に・・・おい。


今、脳がシェイクされて意味が理解できなかったぞ。好きです・・・?

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