第34話 千宮歩、確保

「英慈、あの子で間違いないの?」

 

「あぁ。間違いない。それじゃぁ行ってくるから。七海はアイツがもし逃げたときに追いかけてくれ」

 

「分かった!」


 朝食後、二手に分かれて少年を探してもらい、突き止めた場所が談話室。


ちなみに少年の名は千宮歩。昨日、寝る前に生徒名簿で調べておいた。

 

さて単刀直入に話させてもらおう。

 

「千宮くん・・・だよね?少し話いい?」


職質みたいだな・・・。

 

「あ、ははい!!!!」

 

「俺は黒羽英慈。知ってるよね?」

 

「はい・・・。いや知らないです!だ、誰ですか!」


本音がボロボロ漏れているけど気付かないことにしてあげよう。


「そうかそうか。ところで一昨日の朝、競技場に居たよね?」

 

「お、一昨日の朝ですか?寝てましたよ!昼まで寝てました!」


「そうかぁ~、寮の管理人さんに聞いても大丈夫かな?」

 

「あ・・・・」

 

「それで、朝は競技場に居たんだよね?」

 

「いや・・・」

 

「正直に言った方が良いんじゃないか?」

 

「・・・競技場にいました」

 

素直な子は嫌いじゃないよ。穏便に終わりそうでなによりだ。

 

「うんうん。それで俺のSAEGを知らないかな?」


「いや!それは知らないです!」

 

「え?」

 

「ホントですって!それはやってないんです!」

 

顔を伝う汗がはっきりと見える。怪しさ満載なんですけど。

 

「正直に言ったら誰にも言わないよ・・・?」

 

「ホントに盗っていないです!」

 

「俺、盗ったとか言っていないけど?」

 

「いや・・・その・・・。ごめんなさい!」

 

そう言い残して脱兎のごとく談話室から飛び出す千宮くん。でも同じ学校で過ごしているんだから逃げても長期的には無駄なんだけどね。


あ、短期的にも七海が待ち構えているから無駄か。うーん可哀想な子。

 

少年の確保は七海に任せるとして、あとはゆずに連絡をいれよう。ゆずは今、夏美さんと瑠璃夏さんとお茶をしてもらっている。リストからゆずの名前を探し、電話をかける。

 

「ゆずー?」

 

「あら、出番かしら」

 

「あぁ、頼む。多分、七海が捕まえてくれるから俺らの部屋に集合で」

 

「分かったわ」

 

解決まで秒読み状態。そろそろ七海が確保した頃合いかな?

 

―ピロピロピロッ

 

「英慈ー?」

 

「おう、確保出来たか?」


「出来たよ!」

 

「ありがとう。それじゃ、計画通りに俺の部屋へ連れてきてくれ」

 

「了解だよ!」


本当にありがたい。1人だと何も出来なかったと思う。感謝しているし、この恩をどうやって返せば良いのか分からない。まぁ、何度も考えてきたけど、積み重ねで返していくしかないな。

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