第33話 あっさりと特定
「それで・・・どうだったか?」
深夜とも言えるような時間なので食堂には俺達以外の人はいない。
「誰もかもが寝ていた。当たり前だよな」
知り合いには全員メッセージを飛ばしたし、陸上部の人達を何人か捕まえて聞いてみたけど、部活がなくて5時には外に出ていないって声をお腹いっぱいに頂いた。
「そうね。私も知り合いに聞いてみたけど全員寝てたわ」
「ウチも」
「私もです」
「俺もだ。競技場の予約履歴を除いてみたけど、はすみと英慈が使用した5時台以降に予約があったのは11時で2年生の特別実習ってなってたぜ」
「そもそも、あの時間帯に外へ出ていた人が少なすぎ、もしくはいないから前々から想定していた通り、圧倒的に効率が悪い」
「あ、あの・・・少し思い出したっていういか・・・意味ないかもしれないけど・・・」
「是非聞かせてくれ。今は何よりも情報不足なんだ」
とにかく情報が欲しい。一切関連性がない情報でも無いよりかはマシだ。
「うん。一昨日の話なんだけど・・・」
「俺が視線を感じたって言った時か? やっぱりはすみも感じたのか?」
少しの期待を持ってはすみに尋ねる。
「ごめん、英慈。それは感じていない・・・」
「そうか。すまん、気付いた事を話してくれ」
「うん。一昨日って英慈は少し寝坊してたでしょ?」
「あぁ。そうだな」
「私も少し遅刻しそうで、寮の管理人さんに聞いたんだ。英慈君は通りましたか?って」
そこではすみが一旦話を区切り、コップに注がれているオレンジジュースを飲む。
「そしたら、背が小さい子?って言われたから違うって言った。そしたら通っていないって言われた」
「つまり背が小さな子が寮を早朝に出たっていう事実か・・・」
「うん。だから、背が小さな子が計画的に英慈を狙っていたとしたら目線の件もしっかり論理立てできるし・・・」
「・・・それ、解じゃね?」
「俺もそう思うぜ・・・」
「私もそう思うわ」
「ウチも・・・」
はすみ、それ超重要な情報です。意外すぎる速度で正解にたどり着きそうで実感がない。
「そ、そうかな?私はあんまりしっくりこなかったんだけど・・・」
「いや、これで俺のSAEGは戻ってくるぜ!ありがとな!」
そうだ。遂に終わるんだ・・・。一日で片付く問題とは思わなかったけど。明日あたりにSAEGと感動の再会か。ヌルゲー過ぎて心が躍る。
「でも、どうやって言い逃れを阻止するんだ? 今のままだと少し弱いぞ」
「その通りね、ライル。でも、いざとなったら瑠璃夏や夏美に協力してもらいましょ」
「おーその手があったか!最近、二人に中々会えていないから忘れてたぜ」
「二人にライルが存在を忘れてたって言っておくわね」
「それは性格悪いぜ、ゆず」
「そうね。私はまだ人間で居たいわ」
「おい、なんでライルが相手だとそこで口撃が終わるんだ?」
「あら、いつも通りよ。ね?」
「ん? そうだと思うぜ」
世の中は不条理で飽和状態だ。
「それじゃ。今日は終わりにしないか?俺の為にわざわざ助けてくれてありがとな」
「大丈夫だよ!でも、ウチもそろそろ眠たくなってきたし部屋に戻りたいな」
「そうね」
「うん!」
「そうだな。それじゃ、また朝食で」
確信って言葉を今ほど使いたい時も珍しい。はすみがくれた情報だけでは少ないと、多分みんなが思っているだろう。
だけど、これは俺にしか気付いていないと思うけど・・・ゴールデンウィークに入る直前に談話室で同じような背が低い子、少年から妙な視線を受け取っていたことを思い出したんだ!!!
あー勝利を確信するってこんな感情かぁ・・・。
もし言い逃れをされてたとしても、あの超感覚者、夏美と瑠璃夏さんに頼めば悪事は即暴かれるって話よ。
完璧過ぎない?あ、唯一の懸念点はある。国藤とその少年がつるんでいるところを一度も見たことがないんだよね。
でも、国藤が関わっているっていうのは推測であることを忘れてはいけない。
ごめんね、国藤。今回は少し疑っちゃったよ。でも、本当は俺の知らない異国の地で遊んでいて欲しいっていう願いは変わらないけどね。
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