第28話 夏美と瑠璃夏
超感覚者。
双子には古来より不思議な力があるとされていた。その存在を全科学者が認めるようになったのはつい最近のことだ。
2042年、旧中東共和国の田舎に存在する産婦人科にて双子が誕生した。帝王切開ではあったものの、母体も安定しており、双子達も健康状態にあることから出産から二日後の朝に退院予定となっていた。
その予定は出産から一日が経過した時までは確かなものだったが、退院予定の6時間前になって異変を看護師が発見したのだ。
異変、それは双子が同時に泣き初めると医院の床が共鳴するように軋むのだ。この異変を感じた看護師は同僚に事を話すと、何人も床が軋むような音を聞いていたのである。双子は看護師や医師達の好奇心を掻き立てるのには充分な存在となった。
一晩中、大勢の大人に見守られた、言い方を変えると監視された子供はどうなるだろう。
答えは、泣き続ける。二人は泣き続け、床は軋み続けた。共鳴させてたのが床だけだったら良かったのかもしれない。次の朝、夫が退院予定の妻と子供達を迎えに行くと、医院があった場所には底の見えない地割れがあったという。
この事件がきっかけとなり、その後生まれてくる双子には希にこのような特性を持っていることを確認された。
この特性を科学者達は超感覚と名付け、持っている超感覚によってカテゴリーに分類することにした。良く知られているのは心理系、空間系、身体系、そして分類不可能な未知系。
ただ、分類はされているものの超感覚者の母数が少ないため、知り合いにいるかいないかのレベルである。さらに未知系に至っては、一般人には存在するのかも知らされていないものである。とにかく、超感覚者達は希有な存在なのである。
「それで私のタッグがこれ・・・英慈よ」
「おい。今、人を物扱いしなかったか?」
「気のせいだわ」
絶対言ってたね。これからはボイスレコーダーを即起動できるショートカットをリリスに仕組んでおこう。
「お馬鹿さんなのね?」
二人のお姉さんのうち、一人が真実を投げかけてきた。どちらが夏美、瑠璃夏さんか分かりません。
「いやぁ~それ程でも~」
「謙遜する場合じゃないと思うわ」
「うるせぇ」
「うん!英慈っちなら大丈夫そうね」
うん?何が大丈夫そうなんですか?
「私もそう感じたかな」
どうしたんですか、お姉さん方。
「だから大丈夫だって言ったじゃないの。心配性なのね」
「いやーゆずが心配で夜も眠れなくてね」
「そうそう。私達のゆずを汚す男だったら今頃串焼きにしてたよ」
え?目が怖いよ?この人達、大丈夫?
「ということで英慈君は合格よ」
「おめでとうだね!」
「良かったわね」
「ちょ、ちょっと待てよ。どういうことだ?」
いや、なんとなく予想は出来るけどね?恐らく、俺がゆずとタッグを組むのにふさわしい相手か見極められたのだろう。今回は許可を受けるための挨拶だろう・・・結婚かよ。
「いや、ゆずを変な人に預けられないよね。瑠璃夏達なら頭の中、見ることできるからね」
「そうそう。覗いてみたら邪念は少なかったよ。信念もなさそうだけど」
「信念はありますよ?俺の信念は努力しないです」
「「その割には毎日努力をして・・・・。」」
「はーーーーい!!!!こんにちは!!!!!」
あ、やっべ。この人達、本当に隅から隅まで覗けるパターンだ。
でもこれだけの能力を持っていたら国の機関で過ごすって話が・・・そうかぁ・・一ノ宮だっけ?
ゆずとライルの出身。この人達の出身もそこなんだろうな。
「「頑張ってね!」」
二人からニッコニコの笑顔を頂きました。
「そうなの?英慈は毎日、自堕落に過ごしているだけだと思っていたわ」
「いいや。俺は自堕落な毎日を過ごしてるさ。安心しろ」
「そうなのね」
「ところで、ずーと玄関で話をしてるけどそろそろ上がらない?」
「そうなんだよね。私も思ってた」
気がつけば玄関から一歩も進んでいなかった。
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