第27話 超感覚者
「勉強しないで大丈夫なのかしら」
「明日します」
朝食を済まし、部屋へと戻って一休みしていると母と化したゆずから素晴らしいご提案を頂いた。
まぁ、勉強しなくちゃいけないってことは理解しているけど、まだする気にはなれないのでパスで。
「そんなので大丈夫なの?」
「・・・分かってるって」
「そうね」
さて、今日はプリンを食べながら映画鑑賞でもするとしよう。面倒くさいことは全部未来の黒羽英慈へプレゼントってことで。
「英慈、暇なら付き合って欲しいわ」
「暇ではないかな。今から映画鑑賞っていう義務がある」
「付き合ってくれないとネット検索でヒットしたネタバレを冒頭で語るわ」
「おい!優しさってものは何処へ捨ててきた!」
「英慈が拾ってくれないだけよ」
「そもそも落とすものじゃねーよ!!」
「とにかく今日は付き合いなさい」
えー・・・面倒くさい。俺じゃなくて七海を誘えば良いんじゃないか?
「七海と一緒に行けよ」
「沙稀はトレーニングセンターに行ってるわよ。それに、英慈でなければ務まらない役目だわ」
朝食の後から七海を見ていなかったけど、そういうことなのか。朝から運動なんてまた体に酷なことをするものだ。
「どんな役目だよ」
「行ってからのお楽しみね」
そう言って着いてきなさいとばかり先導するゆず。どこに連れて行かれるかの恐怖があるけど、早く帰って映画を見るためには仕方ない。
あと、俺にしか務まらない役目ってフレーズも気になる。
もしかして・・・頼られている?
そうかぁ~頼られているのかぁ~・・・それなら仕方ないなぁ~。
エレベーターに乗ろうとしているから、てっきり外に出るのかと思ったら押したボタンは3階。3階って確か二回生の部屋じゃなかった?
3階で降りてしばらく歩き、着いた先には329号室。え?全っ然記憶にない。てか、友達にも知り合いにも先輩はいない。全員同級生だ。
―ピンポーン
押しやがった。心の準備がまだ出来ていないのに・・・。他人の部屋に行くって緊張しない? しかも暫定で赤の他人。菓子折でも持ってくれば良かった・・・。
いや、どうせ部屋に菓子折は無かった。あるのは・・・あ、もう一袋にんにく&にら風味のポテトチップスがあったような。
うん、仕方ない。菓子折の件については後悔しても意味がないことが判明した。
「はーい」
女性の声がする。
「ゆずー?」
―ガチャ
「お久しぶり。夏美、瑠璃夏」
「ひっさしぶりー!!」
「久しぶりだね」
奇跡の一枚。そんな言葉を聞いたことないだろうか。
これ、普通なら奇跡的に撮れたアイドルの可愛いすぎる写真とか、なかなかお目にかかれない自然現象とかのプラスの意味を持ってるよね。
だけど、今この瞬間にカメラのシャッターを切れたら恐怖に支配された奇跡の一枚を生成できると思う。
そう、ドッペルゲンガーが居るんだ。ドッペルゲンガーが出会ったら死んでしまう、なんて噂を信じると・・・俺はどっちを助ければ良いんだ!?
「「ドッペルゲンガーじゃないよ?」」
「は、はい!?」
考えていることがあっさりバレてる。
「いやーごめんね?急に呼び出しちゃったりして」
「いやいや俺は着いてきただけですから・・・」
「謙虚だねぇ~。お姉さん、そーいう子は嫌いじゃないよ」
つまり脈アリってことですか?あ、あと・・・その身体の一部、女性の武器をそんなに密着させられると・・・。
「「脈アリってどういうコト?」」
え?俺、そんなこと思ってもいな・・・言ってないハズなんだけど・・・。
「夏美と瑠璃夏は心理系統の超感覚者よ」
「えー言っちゃうの?」
「もう少し遊びたかったのにねー」
二人揃って可愛げに頬を膨らましているけど、怒るべきなのは俺だと思います。そうか、超感覚者なのか。ということはドッペルゲンガーではなくて双子。
心理系の超感覚者は久しぶりに出会ったかもしれない。
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