第25話 近接戦闘?模擬戦闘?なんですかそれ
もう七時だけど、休みの日だけあって風呂は閑散模様。
といっても各階に一つ大浴場が設置されているし、かなり広いから混んでいる時間の方が少ないんだけどね。
うーん、どれくらい居るのだろう。湯煙の中に一人・・・二人くらいの影が視認できる。それくらいならゆっくり羽を伸ばすことができそうだ。
シャワーで体を洗い、湯船に浸かる。あぁ・・・極上だぁ・・・。
「英慈か?」
名前を呼ばれた先にはライルが居た。
「あぁそうだ。ライルも早起きだな」
「まぁな。生活バランスを極力崩したくないから仕方なくって感じだぜ」
理由が驚くほどライルらしい。
「ところで、はすみとの朝練どうだった?」
「まぁまぁだよ。・・・ってライルが付き合えば良いんじゃないのか?」
そうだよ。普通はタッグパートナーが付き合うべきじゃないのか?
「あー・・・俺は良いよって言ったんだがな」
「ほう」
「入試のタイムを教えたら、何故か断られてしまった」
「・・・ライルのタイムが速すぎたんだろ」
「そういうものなのか?」
「そういうものなんだ」
ライルのタイムを聞きたいけどやめておこう。今の俺にはまだ早すぎる。
「それで思い出したけど、競技会の方は大丈夫なのか?」
うっ
「・・・ゆず頼みかもしれない」
本当にゆず頼みだ。今から練習して間に合う種目なんかたかがしれている。
しかも、この四ノ宮に居る生徒は運動競技でも全国トップクラスだ。どうしようもない気がしてならない。
「それは大丈夫だ。ゆずは問題なく全ての競技でトップを取ると思うぜ」
デスヨネー。
「だから英慈は30位以内に入れば良いかな」
改めて考えると10位以内にタッグランキングが入っていないとダメっていう条件、キツすぎやしませんか?俺、個人ランキング最下位ですよ。
「ちなみに競技会の特殊競技って何があるか知っているか?」
普通の競技、つまり100メートル走とかではなく、特殊競技がメインって聞いているけど、その特殊競技が何か分からない。
「んー正直、俺も詳しくは知らないが模擬戦闘とか障害物競争とかは有名だな。」
障害物競走って小学生の時にあったあれか。でも格段にレベルが違うものが出てくるんだろうな・・・。
そもそもの身体能力で差が出てしまう競技は避けたいところ。模擬戦闘とかならまだ勝ち目があるような気がする。
「一人2種目だったよな?」
「そうだな。ランキングに反映される種目数は3種目までだった気がするぜ。だけど、上位3種目が自動的に選ばれるから、何種目でもエントリーして良いはずだ」
「それは知らなかった。助かる」
そうか。一人何種目でもエントリーして良いのか。つまり全種目エントリーすれば・・・ってそれは体が壊れるか。でも半分はエントリーしておきたい・・・。
風呂から上がったら七海とゆずをたたき起こして皆で朝食。部屋に帰ってきて二度寝をしようと思ったら七海とゆずがゲームする音で寝られずに・・・。
「・・・強すぎだろ」
「その意見にウチは完璧に同意するよ」
圧倒的にゆずの独壇場。いわゆるFPSをやっている訳だが、どうしたことかゆずがとんでもなく強い。
俺は中学の時に結構やっていたはずだが、初心者であるゆずに殺されてばかりだ。最初の一試合だけはゆずに圧勝していたが、二試合目から手も足もでない。成長スピードが早いっていうレベルでなく、操作方法を覚えられたら負け確定って感じだ。
「このゲーム、楽しいわね。だけど、慣れてしまえば死の軽さを現実と重ね合わせてしまうかもしれないわ」
まぁ確かに。死ぬことを前提に敵陣に突っ込む時もあるからな。
「でも形式は模擬戦闘みたいね」
模擬戦闘・・・?
「それって競技会の種目のことか?」
「そうよ」
「ちょっと詳しく説明してくれよ」
俺の思っていた模擬戦闘とは少し違う可能性がある。
「このゲームの通りだわ。チーム戦、個人戦の2つがあって相手を触るかポインター弾で打ち抜けば勝ちよ」
「そうなのか・・・。正面の敵と殴り合いをするのかと思ってたな」
「それは近距離戦闘ね。種目にあるけど英慈はやめた方が良いわ」
「そうなのか?」
「勿論よ。英慈は明らかに弱いから」
「・・・・」
はい、否定できません。
「だから、まだ模擬戦闘の方にエントリーして欲しいわ。正しく私の足を引っ張ってね」
はい・・・正しく足を引っ張ることに致します・・・。
「そうかぁ・・・競技会もあるのかぁ」
「七海は普通の種目でメダル乱獲してこいよ」
「出来るかなぁ」
「余裕で出来るだろ。問題が見当たらないぞ」
「そ、そうかな? よーしっ! ウチ、頑張るからね!」
「おう」
「楽しみだわ」
流石の七海。チョロい。それと、チーム戦もあることは救いかもしれない。ライルを是非ともお誘いしたい。勉強もやらなくちゃいけないけど、射撃場にもちょくちょく通おうかな。
まぁまだまだ時間はあるさ。人生、生き急いだら負けだよ。ゆっくり余裕を持って過ごそうぜ。
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