第13話 授業初日

朝九時。一限目、開始。隣に座っている七海は目を擦っている。


「それで。なんでお前はそんなに寝不足な顔をしてるんだ?」

 

「いやー・・・。眠れなくなっちゃって・・・」

 

「あーあれか? 遠足の前の日は眠れないってやつか?」


いや、そんな訳ないだろってセルフツッコミを脳内で再生する。

 

「あー・・・。そんな感じ・・」

 

「明日からはちゃんと寝るんだぞ」

 

「うん」


ま、大体は想像がつくけどな。あえて触れないけど。


前言撤回っていうのを早々にしよう。これは時間が解決しない。俺がどうにかしなきゃいけないらしい。七海に至っては巻き込まれに巻き込まれている状態だ。早急に国藤をどうにかしなきゃいけない。


え? 具体的に? 思いついていないから、どうにかしなきゃいけないってごまかしてるんだよ! 


あー・・・一つだけ完璧な解決策はあるぞ。そう、ゆずが国藤を受け入れることだよ。ま、無理だろうけどな。・・・ちゃんと考えなきゃだな。

 

一限目、人間工学。

よく分からん。終わり。

・・・はいはい、真面目に感想言いますね。ほら、身の回りの物を観察してごらん。人間が使うのに適した形になっているだろ? そんな感じの授業だ。いやいや、詳しくって言われても、これが初めての授業で半分オリエンテーションだったからこれくらいしか説明できないよ。でも銃のグリップが出てくる時点で四ノ宮だなぁって思ったよ。はい、終わり。


ちなみに隣に座っている七海は爆睡。コイツ授業時間を睡眠に全振りする予定なのかな。ま、テスト前になったら学年最下位のノートを見せてやるから安心して寝な。


そして、寝顔を見る度に胸に痛みが走るけどこれは恋ではない。罪悪感だ。

 

二限目、線形代数。

よく分からん。終わり。

・・・はいはい、真面目に感想言いますね。いやー・・・正直、数学には自信があったんだけど見事に自信が崩れていったね。行列? 何それ。ベクトル空間? 何それ。これまで勉強してきた「数学」と今、授業を受けてきた「数学」は完全に違う気がしてならない。ほら、「雲」と「蜘蛛」みたいな。兎にも角にも、今から百年前の学生はこれを大学で学習してたらしい。つまり、百年前だったら高校1年生は数一を学習しているらしい。流石、ゆとり期。


七海? 寝てたよ。


昼食、第三食堂にて。メンツは七海とライルとゆずとはすみ、そして俺。

 

クオリティの高い親子丼、ご馳走様です。授業がヤバいって感じてるのは俺だけじゃないはず! 


そう思って聞いてみた。

 

「授業? 今日はオリエンテーションと導入部分だから退屈だったぜ」

 

「そうね。全部寝てたわ」

 

「ウチもー!!!」

 

おい、七海は一切授業内容聞いてないだろ。ま、今日の授業が難しいって思ったの俺だけだってうすうす気付いてたけどな。


「・・・私は少し難しかったな」

 

無心で会話を聞いていたらはすみが声を掛けてくれた。

 

「だよな・・・。あいつらおかしいぞ」

 

「仲間だ・・・ね」

 

「お、おう」

 

テラ可愛い。そんな恥じらいのある顔で上目遣いしないで。少しドキッとするじゃないですか。ちなみにテラはギガの1024倍だ。

 

三限目、体育。

これは文句を言おう。何が体育だ、護身術って授業名に替えとけよ。


これは勘違いしたヤツが沢山いたと思う。だって「体育」だぞ? ほら、体育って聞いて何を思いつく? 


はいはい・・・高飛び、ソフトボール、サッカー、バレーボール。いやぁ正常です。間違っても武術のオンパレードじゃないよな? 学校的に・・・って言われたら仕方ないけど。期待するじゃん! 体育っていう柔和な響きに騙されたよ。

 

七海は女子グループなので分かりません。

 

四限目、国語。

普通でした。いや、国語に関してはマジで中学の内容と変わらない。なーにも変わらない・・・気がする。


七海? 寝てました。


そして今日は四限で終了。そろそろ家・・・寮に帰りますか。


今日の感想。一授業が一時間半だからなかなかキツい。そろそろ終わるかなって時計を確認するとまだ三十分しか経過していない時の絶望感よ。


ん?? 国藤をどうにかするんじゃないかって? いや考えていたよ? だけど何も具体的な策が思いつかない。だって相手はほぼ無敵だぜ? 無理ゲーof無理ゲーって感じ。それでも解決しなくちゃいけないってことは分かってるからさ。ポリシーに反するけど脳をフル回転させるんです。

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