第11話 七海沙希の思惑と初日への終止符
最悪よ。この状況は本ッ当に何? セクハラ野郎と同じペアになり、そのペアは解消できない。本当に最悪。しかも部屋ではネチネチ話しかけてくるし、英慈は知らない子とペアでイチャイチャしてるし・・・。
別にどうでも良いけどね!?
本来ならば、食事はレストランでとらなければならないと思う。だけどさっきの話を聞くと極力会うのも過ごすのも避けたい。そして一緒の部屋で寝ることは最優先で避けなければならない。
とりあえずコンビニに行こう。最低限のご飯だけは食べとかないと・・・。本ッ当にウチ自身が情けなくて目も当てられない。
230円。おにぎりとお茶。これからは節約しないとね。ここの学生は毎月四万円もらえるけど、毎日コンビニで食べるならかなりの節約が必要になると思う。
無人コンビニを出て行き場もなく歩く。こんなことになると思わなかったな。この学校に入学したことは後悔していない。ただ、あまりにもウチを襲う不運に少しくらい文句を言いたい。教員が手を出せない&成績優秀の生徒はセクハラ最低野郎。本当にどうすれば良いんだろ。
寮に前の広場に置かれたベンチに座っておにぎりを食べ始める。寮のほとんどの部屋には明かりが灯っている。あそこの部屋もそうだ。英慈とゆずの部屋。
黒羽英慈が部屋へと帰ると、全く不機嫌な顔をせず不機嫌なセリフを放つゆずが居た。
「遅いのね。私以外の女と遊んできたの?」
部屋の前に鎮座していた女の子はとんでもないことを言う。そうか端末忘れたんだっけ。
「キャバクラ帰りのおっさんはそう言われるのか」
「私なら許さないわ」
「さようですか」
なんだかんだ部屋に帰るのが遅くなってしまった。明日からは普通に授業があるから今日は早めに寝ておきたいな。
「ゆずは風呂に行かないのか?」
「そろそろ行くつもりだったわ。」
「そうか。俺はもう行ってくるぞ」
「私を置いていくのね。」
「それなら一緒に行くぞ」
ゆず節。圧倒的ゆず節。
「少し待って。着替えのブラがないわ」
「着れるのか?」
少しからかってみるか。
「あら。英慈は着ていないのね」
「いや着てねぇよ!!!」
「美しい形を維持するには必須よ。オススメするわ」
予想の斜め上すぎる回答を頂きました。俺が突然ブラを着用する趣味に覚めてもコイツは認めてくれそうだ。いや、目覚める予定なんてないけどな? 目覚めたくもないからな? 勘違いしないでよね。
「準備完了よ。行きましょう」
「はいはい」
この寮には大浴場が各階に存在する。つまり、国藤とは裸の付き合いをする確率は極めて少ない。本当に良かった。
「英慈は女子風呂に入るの?」
「男子風呂だよ!!!」
「そう。残念ね」
「何がだ!? とりあえず入ってくるから入り終わったらその椅子で待ってろよ」
「何故かしら」
「お前が鍵持ってないからだろ!」
「私はゆずよ」
「分かったから。もし俺より早く風呂あがったら待っとけよ」
のれんをくぐり脱衣所を見渡す。誰もいないらしい。早業でズボンとシャツを脱ぎ、いざ風呂へ!!
あー気持ちぃぃぃぃぃぃ・・・。今日は疲れたからなぁ・・・。染み渡る・・・。
ゆっくりと体を休めることが出来た。牛乳を飲みたい気分になってくる。明日コンビニに行く時間があれば是非とも牛乳を買おう。
「遅いわ。」
「お前は早すぎないか!?」
男子風呂の目の前に腰を下ろしている女子は紛れもなくゆず。女子って早く風呂に入ることが出来ない生物だと思っていた。
「普通よ」
「そ、そうか」
そうなのか? まぁどうでも良い。さっさと帰って早く寝たい。山の中にあるから若干気温の低さを感じるし。
「英慈は飲む?」
部屋に着き。なぜかお茶の準備を始めるゆず。何故今するのか、という疑問が脳内に浮かんでくるけど、「ゆずだから」で無理矢理納得することにする。
「いや、もう寝る。おやすみ」
「まだ起きるのよ。ゲームするわよ」
ゆずが指差す先にはテレビが一台。最近のテレビゲームはゲーム機なんて必要無くてテレビ本体だけで遊ぶことができる。
「寝る」
「つまらない男ね」
なんだよそれ。
「私も寝るわ」
寝るのかよ!!!
「・・・おやすみ」
「・・・うん」
まだ一日。人生史上最も濃い日だった・・・。
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