第10話 七海沙希への忠告
ウニにいくら!? そんなの出して大丈夫なの? 調理ロボがその場で焼いてくれるステーキ? マジかよ・・・。とりあえずステーキは確保かな。タッチパネルを操作してミディアムを選択する。焼き上がるまでにスープを探してこよう。スープも結構種類あるな。トマトスープでいいや。焼き上がったステーキとスープを盛って机に戻る。まだ誰も帰ってきていないようだし飲み物とサラダを取ってこよう。あ、ご飯も追加で。あれ、あっちにプリンが・・・。
「遅いわね」
「どれもこれもおいしそうでな」
「分かるぞ。環境的には凄い恵まれてるぜ」
―コクコク。
「その子は誰かしら」
流石っす。多分ゆずが居なかったらこのまま進んでいましたよ。
「お、そうか。紹介していなかったな。俺のパートナーで小神はすみさんだ」
「・・・よろしく」
ゆずのように静かそうなタイプだけど全く同じ訳ではない。ゆずには少し近寄りがたい雰囲気を感じるが、小神さんにはそんな雰囲気を感じない。
「はすみ、でいいかしら」
「うん」
「私は桒野ゆずはよ。ゆずで良いわ」
「分かった」
一応俺もしとくか。
「俺は黒羽英慈。よろしく」
「英慈でいい?」
この子も囁くように喋る子だなぁ。囁きブームなの?
「いいよ」
「私もはすみでいいよ」
「わ、分かった」
ふと漏れた笑顔が眩しい。こういう時、イケメン男子は「笑顔が可愛いね」なんて平気で言うけど俺には無理です。想像しただけで身の毛がよだつ。
「笑顔が可愛いな! うつむくと勿体ないぜ」
!?!?!?!?!?!?
「・・・ありがと」
これはヤバいぞ。顔面偏差値の差をひしひしと感じた。さっきは学力の差を思い知ったのに・・。
あと何回心に傷を負わせればいいのだろうか。二人の雰囲気を壊しそうだし、僕の心の傷を癒やすために散歩してこよう。
「お腹がいっぱいになったから少し歩いてくる」
「俺も散歩してくるぜ」
おいおいおい。意味を消すな。
ひたすらご飯に夢中なゆずに目を向ける。
・・・・そういえば、あなたは何も気にしないのですね、ゆずさん。
何故かライルと一緒に廊下まで来てしまった。
「で、何があったんだ?」
「・・・コケただけすよ」
「言い訳が無理過ぎるぜ。それは間違いなく殴られた後首絞められてるぜ」
「何故分かる・・・」
「経験ってヤツだ。相手は国藤軍団か?」
「ご名答」
「で、お前から殴った理由は」
「色々あって・・・ってなんで分かるんだ?」
あっさりと全てを見透かされ、驚く。
「100%国藤からは手を出さないからな。徹底的に陰湿なヤツだからその位は安易に想像できるぜ」
そうなのか。まぁ痴漢騒ぎの所から陰湿だと思っていたから特に驚きはない。
「それで何で手を出したんだ?」
「誰にも言わないというなら」
「約束するよ」
そういうことなら説明しますか。料理が冷めてそうだから早く戻りたいんだけどなぁ。
「そういうことか・・・」
「まぁ、今回は俺が引き起こした問題だからな。先生達が動かなくて助かったよ」
先生が関わってきたら面倒くさいからな。
「ということで戻ろうぜ。飯が冷えてしまう」
「あぁ」
流石にライルのリアクションが少し薄い。こういう風になるからあまり話したくなかったんだよな。
席に着いたら食べかけ以外は空の食器がこんにちはをしていた。
「おい、ゆず。俺の料理を知らないか?」
「食べてあげたわ」
「微塵も感謝できない行動だな」
ま、暖かい飯をもう一度取りに行くか。案外、俺に暖かい飯を食べてもらいたいっていう神様的の思いやりがあったりして。
「食べた理由は?」
「お腹が減ってたからよ。」
「・・・」
思いやりなんて無かったな。期待していた自分が馬鹿らしい。いや、期待してなかったけどな!?
夕食を終えた後、ライル達と分かれて部屋に戻る。大浴場に早く行きたいけど、することがある。寮のエントランスに七海を呼びつけておいた。本当はしたくなかったんだけどね。どうぞ勝手になってくださいと無慈悲に言える間柄ではないからな。仕方ない。
「どうしたの!? その怪我!」
呼び出してからまだ数分しか経っていないぞ。来るの早過ぎない?
「少しコケただけだよ。」
七海は騙せることが出来るのか・・・?
「そうなんだ! バカだね!」
疑う素振りはなし。勘が鋭いからバレるかもしれないと危惧していたが、何とかなったらしい。
「それで・・・こんな遅くに何・・・?」
顔赤くないですか? お風呂上がりなのかな?
「国藤と一緒に寝るなよ。」
「ハ・・・ハァァァ??? な、何言ってるの英慈?」
意味は通じたらしい。それにしても道端に落ちている嘔吐物を見るような目でこちらを見るのはやめて欲しい。これでもかなりオブラートに言ってるんだよ。
「国藤が連れと話しているのを偶然聞いてしまってな。どうやら国藤のパートナーは女子だから皆でヤっちまおうぜって・・・・」
「うっわぁ・・・・」
「いやだから俺じゃないって」
「そんなこと分かってるわよ」
そう? 明らかに俺に対しての嫌悪感をあらわにしていなかった? 気のせいかな。
「そう言えば部屋で着替えている時、目線感じたのよね。ちゃんとカーテン閉めてたのに」
「え、それヤバいと思うけど・・・・」
もう、行ってるところまで行ってると思う。しかるべき場所に通報すればしかるべき刑を受けさせることが出来るのでは?
「大丈夫よ。教えてくれてありがとね」
「気をつけろよ」
「大丈夫よ。ウチが負けるとでも思ってるの?」
凄い自信満々で言っているけど、実際ランキングでは天と地の差だよね。言わないけど。
「いやいや、全くこれっぽっちも」
「よろしい。下がりなさい」
「かしこまりましたお嬢様」
七海はさっさと寮と反対の方へ歩いていく。特に足取りが重く見えるとかはない。七海は強いからなぁ。
「寮には帰らないのか?」
「少し散歩に行ってくるだけよ」
夜中に一人でのお散歩は推奨しないけど、色々思うことがあるのだろう。
「もしウチがピンチになったら・・・助けてくれる?」
歩くのを突然やめ、後ろを振り向いた七海が問う。
「当たり前だろ」
「ありがとう」
照れるなら聞くなよ。こんな表情を出すなんて・・・! これってもしかして僕のことを好きなのでは!?
って勘違いし、地獄に落ちた体験談は沢山聞いてきた。多分、今のとびっきりの照れている表情は100人中77人が眼違いするだろう。残りの23人になれて良かったよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます