第15話 幻の魔法のランプ
#15.幻の魔法のランプ
みんなには叶えたい願い事はあるだろうか?
私の今の願いは勿論元の世界に帰る事だけど……
一度でいいからチート無双と言うのをしてみたい。
今迄不思議なアイテムでそれっぽい事はしてきたが、爽快感がまるでないのだ。
それもそのはず、最初のドラゴンやリザードマン以外はスライム以外碌に戦ってない。
更に人助けをしても大金を得た訳でも素敵な恋愛をしたわけでもいない。
「異世界転移者って何かしらの恩恵があるもんじゃないのー!」
と大声で叫んだ時例の店が出て来た
店に入った私、今度こそ損をしない様にと念入りに品定めをする。
今回目にとまったアイテムはこれ、「幻の魔法のランプ」です!
「幻の」てついてる位なんだから凄い性能に違いない。
私は早速ランプを購入すると店を後にした。
さっそくランプの効果を確かめる為にランプを擦る私。
こういうのはこうやって使うと相場が決まっているのだ。
私がランプをきゅっきゅと擦るとランプから煙が黙々と出て来た。
煙が晴れるとそこには長身のイケメン紳士が立っていた
「あなたが今度のご主人様ですか?お嬢さん」
「は、はい!」
思わず返事をしてしまった私。
私の姿をまじまじと観察すると、イケメン紳士(以下ランプの紳士)が私にこう言った。
「ではお嬢さん、ランプから出してくれたお礼に願いを叶えて差し上げましょう」
「えっ!?(お約束展開キタ――(゚∀゚)――!!)」
「たーだし、願いは3つまでですよ」
「わかりました……(これもお約束お約束)」
「と、まずは願いを叶える前に禁止事項をお伝えしましょう」
「え、そんなのあるんですか?」
ランプの紳士によると禁止事項はこれだけある
まず死者を生き返させる事と不老不死の願い。
まあ魔法にも限度があるよね、と思ったら単に気持ちが悪いからってだけでした。
次に人の気持ちを操る事。
例えばその気の無い人に恋をさせたりとかそういう事である。
まあその辺は自分でなんとかするしかないだろう……
最後はお約束だが、願いの数を増やす事、だ。
まあそんな馬鹿な願い通る訳ないのは最初から分かっていたけど、ちょっぴり残念。
制約はだいたいこんな感じだ。
私は悩みに悩んだ結果願い事をランプの紳士に伝えた。
「私を絢爛豪華なお姫様にして!」
「承知致しました」
ランプの紳士がパチンと指を鳴らすと、私の制服がドレスに変わった。
身体には数々の宝石の付いたアクセサリー、そして白い馬の馬車。
12時になったら魔法が溶けそうな位に眩く変身した私は、さっそく近くのお城へ向かう事にした。
「へへ、貴族のお嬢さんよ、俺達に少しめぐんでくれねぇか」
野盗である、こんな奴最強の剣と盾で……てあれは隠れ家に置いて来たんだった。
じゃあ無敵のバリアーで……舗装されてる街路だから円が書けない!?
じゃ、じゃあダ洒落なスマホで……と私があたふたしていると、しびれを切らした盗賊がナイフを向ける。
「さっさと金目の物を出せって言ってんだよ!」
「ひいぃっ!?」
うろたえる私、そうだここはランプの紳士に、いや貴重なお願いをこんな事に使ってもいいんだろうか……等と悩んでいたその時である。
「やめないか!」
「王国聖教騎士団だ!大人しくしろ!」
茶色い無骨な鎧を着た騎士と、純白の鎧を着た騎士様が登場した。
ちなみに二人ともアイドルかってくらいイケメンである。
他にも部下と思われる兵士達がぞろぞろと後ろにいる。
思わぬ登場に盗賊はびびって逃げ出してしまった。
「大丈夫ですか―」
と無骨な騎士が私に近寄る前に、純白の騎士様が私の前に割って入る。
「お怪我は御座いませんか聖女様」
「せ、聖女様!?」
「見たこともない装飾品の数々、その美しさ、聖女様と言わずしてなんと申しましょう」
うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
ラブなフラグが立ってキタ――(゚∀゚)――!!
私はこの熱心なラブコールを物にする為にランプの紳士さんに更なるお願いをした。
「ランプの紳士さん、盛大なお祭り、いやパレードを開いて!」
「かしこまりました」
再びランプの紳士は指を鳴らすと私の周囲に屈強な天使の軍勢と華やかな聖歌隊、そして白いドラゴンが現れた。
白いドラゴンは乗ってくれと言わんばかりにかがんでくる。
そのドラゴンに私が乗ると盛大なパレードが始まった。
なんだなんだとわいてくるお城の衛兵たちを天使達が阻む。
聖歌隊達はその場でクラシックコンサートを開き、場を和ませる。
私が乗った白いドラゴンはパレードの中心に降り立ち一番目立っている。
「なんだこの騒ぎは!?」
喜ぶどころか警戒心を剥き出しにする無骨な騎士。
一方で純白の騎士様は笑みを浮かべる。
「いいじゃないか、俺はあの聖女様にプロポーズするぞ」
「な、何を言ってるんだ!?」
無骨な騎士の静止も聞かずにパレードの中心へと向かう純白の騎士様。
私も察したのかドラゴンから降り、天使の軍勢に道を開けさせる。
聖女と化した私と純白の騎士様が触れ合おうとした。
その時である。
パレード全体が煙に包まれると、ドラゴンも天使も聖歌隊も私のドレスも馬車も全て消えてしまった。
「嘘でしょおおおおおおおおおおおお!!!」
私はダッシュでその場から逃げ出した。
「どうなってるのランプの紳士さん!」
「いやー、無料体験はここまでという事で」
「はぁ?」
どうやらランプの代金と願い事の料金は別料金らしく、ここまでは無料体験だという事だ。
第三の願いを叶えたければ代金を支払えという事らしい。
ううう、どうしよう。
私は財布を見るが異世界マネーはほんのわずかしか残っていない。
ピコーン!
閃いた!次の願いでお金持ちにして貰えばいいんじゃない?
「ご主人様、ちなみに私は前払い主義ですからね」
がっくしと肩を落とす私。
「払えないなら私はそろそろ……おや、いい物をお持ちで」
「え?」
ランプの紳士が目を付けたのは最強の剣と最強の盾だった。
しかしこれは私が魔王を倒せる唯一の装備だ。
つまり元の世界への片道切符、そうやすやすと渡せはしない。
「これはダメ!あげられないわ!」
「いえ、少しお貸し頂くだけで構いませんよ」
にっこりと不気味な笑みを向けて来るランプの紳士。
私は不安半分安心半分で最強の剣をと盾を渡す。
紳士はまじまじと剣と盾を観察すると盾だけ返してきた。
ランプの紳士から黒いオーラが噴き出すと、剣が怪しく輝いた。
【カウンター】剣「600」盾「200」
↓
【カウンター】剣「200」盾「200」
ランプの紳士はもう料金は頂いたという感じで剣を返してくれた。
剣のカウンターが大幅に減った事以外特に変わった点は無い。
ほっとする私、て願いまだ言ってないんですけど?
「どんな願いでも料金は同じですので」
「そ、そうですか……」
しょーもない願いをしなくてよかった、と安堵する私。
て、待てよ……1つ目と2つ目って無料体験じゃなかったらもっと長続きしたんじゃ……!
しかし私の心を見透かした様にランプの紳士はこう言った。
「お客様のお手持ちでは一つ目の願いだけしか叶えられなかったですよ」
確かに……、剣のカウンターを見ると400位減っているので1つ叶えたら終わりだったのかもしれな……いや待てよ?。
「最初の願いで私をお金持ちにしてって頼んだら払えたんじゃないの?」
「いえいえ、私が頂くのは寿命ですから」
「え?」
「ちなみに不老不死にする願いがダメなのは、それじゃあ取引にならないからです」
なるほど、つまりさっきのは剣の寿命、使用回数を吸い取った訳だ。
あれがなければ自分の寿命がどれだけ取られたんだろうとゾっとした私。
しかし過ぎてしまった物はしょうがない、頭を切り替えて第三の願いをしよう。
第三の願いは決まっている。
「私を元の世界へ戻して!」
「はい、かしこまりました」
ランプの紳士は光り輝くとその眩しさに私は気絶した。
「うーん、ここは?」
次に私が目にしたのは空だった。
そして周囲を見渡す。
現代風の家やビルの数々、現代の衣服を着た人々、どうやらここは現代らしい。
公園のベンチで目を覚ました私はやっと帰ってこれたと安堵した。
しかもこの公園は自宅の近所にあるので自宅にもすぐ帰れるのであった。
「ただいまー!」
「お帰りなさい、夕飯できてるわよ」
長い間行方不明で両親に怒られるか泣かれるのを覚悟していたが、いつものお母さんで拍子抜けした。
しかしこれはこれで好都合、私はシャワーを浴び久々の自分の部屋のベッドにダイブした。
おー、これですよこれ!これこそ文明!ザ・現代!
もう異世界生活は勘弁だと思った私は、もう不用意に面白い事ないかなとは言わないと心に決めた。
―
久々の母の手料理にお気に入りの動画サイト、友達との電話と、ひとしきり元の世界を満喫した私はマイベッドでぐっすりと熟睡した。
Zzzzzzzzzzzzzz
「はぁ~よく寝た~」
「あれ?」
私が目を覚ました時に見た光景、それはいつもの異世界の隠れ家であった。
「なんでええええええええええええええ!?」
仰天する私。文明は?現代は?どこに行ったの?
慌てた私はとにかくランプの紳士を問い詰める事にした。
「どこにもいない……」
あちこち探したがランプもランプの紳士も消えてなくなっていた。
そう、まるでここまでの全てが幻だったかの様に……
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