第14話 無敵のバリアー

#14.無敵のバリアー



 私の戦闘力の低さ、特に防御力の件はまだ解決していない。

いつまでもスライムやゴブリンで武者修行してる場合ではないのだ。

バイト代もあることだしここはいつものあの店に行こう。


「いらっしゃいませー」


笑顔で接客する店員……しかし騙されてはいけない。

この間この店で買った鎧はとんでもないはずれだったし、

毎回説明をはしょるのだ、この店員わ。

今度こそと警戒していた私だったが一本の棒きれに目が留まる。

それには「無敵のバリアー」と書かれていた。

名前だけで安心した私は使い方を聞く前にまた買ってしまった。


しまった!と振り返ると店も店員も既に消えていた。


 仕方なくこの棒の使い方を模索する私。

杖の様にぶんぶん振ってみる……が何も起こらない。

今度は地面に棒で円を描いてみる……が何も起こらない。

うーん次は投げてみようかと数歩歩いたその時、見えない壁にぶつかった。

立ち止まって周囲を見渡すが何もない、いや、足下に先程書いた円がある。

つまりこれは書いた図形が無敵のバリアーになる効果の棒なのだ

 ふむ、これは良い買い物をしたぞい、と思った私の脳裏に妙ちくりんな案が浮かんだ。

それをするには……私は自分を中心に円を描くと、その辺の小石を上に投げる。


コン


石が見えない天井に当たる音がする。

ビンゴだ、この中は密閉状態にあると言っていい。

私は足で内側から円を消すと、さっそく準備を始めた。


 用意する物は手ぬぐい、バスタオル、大きめの石数個、薪、火おこしの道具、以上だ。

やる場所も特定の場所でやる必要がある。

冷たい水のある場所、自分で用意するのもいいが、現代じゃない今なら川か湖の側がいい。

そして平地である事も大事で、草や木のある所ではやらない。

私は人目の無い事を確認するとまず服を脱ぎバスタオル一丁になる。

そして例の棒を使い、内側から大きめに円を描いた。

そして石を円形状に並べ薪を入れたらその上に大きい石を置く。

次にいつかの「ダ洒落なスマホ」を取り出しこう唱えた。


「キャンプファイアーとは縁起がいいねぇ」

これは、ファイア→炎=縁(どちらも”えん”と読む)を掛けたギャグである。


するとスマホから火が出て薪に火が付いた。

薪の上にある石が熱せられ熱々になる。

よしこれで最後、私は外側から小さな円を描く。

円が小さいから天井も低く、椅子代わりには丁度よかった。

これで無敵バリアー付きサウナの完成!


 密閉されたサウナバリアーは敵から身を守るだけでなく、気持ちいい位に汗だくにしてくれる。

そして数分後程よく汗をかいた私は熱々の石に水(お湯になってる)をかける。

石からは白い蒸気が吹き出しバリアー内は一気に熱くなった。

そして用意した手ぬぐいを振り回し熱風を送る。

石に水をかけるのがロウリュ、熱風を浴びせるのがアウフグースというらしい。


「あっつーい!!でも気持ちいー!!!」


 私は一通りサウナを満喫したら今度は円を消し外に出た。

そしてバスタオルを脱ぎ水で汗を軽く落とすと、今度は川にダイブした。

熱々の身体が急速に冷やされてこれはこれで気持ちがいい。

天然の水風呂を楽しんだ後はバスタオルを巻き、新しいバリアを作り入る。

大地に大の字になって寝転ぶととっても気持ちがいい。

一応完全な円にはせず所々隙間を作っておいたので、外の風が、日光がここちよく体に当たる。




 小一時間サウナを楽しんだ私は使用した物を片づけ火もバリアも消した。

敵に襲われる心配がないという安心感こそが今回のサウナの良い隠し味になったのだろうと思った。

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