第13話 良役令嬢ちゃんシール
#13.良役令嬢ちゃんシール
お金がない……私は必死に仕事を探した。
しかし最近は魔物達も盗賊も大人しくしてるらしく、冒険者には碌に仕事が回ってこないのだ。
仕方なく一般人用の求人掲示板を覗く私。
そこにはこうあった
【館のメイド募集】
条件:若くて根気のある女性
:住み込みOKな方
報酬:言い値で(要交渉)
ほう、これは中々いい条件だ。
女子高生だから当然若いし、根気だって今迄の冒険で鍛えられている。
そう思っていた、いたんですー!(涙目)
「こんな服を私に着ろって言うの!?新しいの用意して!」
「お肉料理は嫌いなの。魚が無い?じゃあ買ってきなさい!」
「ふふふ、お父様の浮気の証拠の手紙……これでお小遣いアップを―」
そう、この館の一人娘、お嬢様は悪役令嬢なのである。
悪役令嬢、つまりとんでもなく性格の悪いお嬢様なのだ。
どうやら私以外のメイド、つまり前任者は全員逃げ出してしまったらしい。
原因は勿論この悪役令嬢様だ。
今は私と超お年寄りの執事さんが一人だけである。
「腰が、腕が、足が、主に体全体が痛い……」
明日からの仕打ちに悩みながらも解決策を探した私は、いつもの店に寄る事にした。
「というわけなんですよ~どうにかなりません?」
いつもの店員にいつもの様に相談する私。
店員はそっと私に紙切れを渡した。
その紙はシールのシートで、そのシールには「良役」と書いてあった。
それがどういう物なのか、どう使うのかも説明されないままお店は姿を消していた。
とりあえずこのシールを貼ればいいのだろうか。
私はあの悪役、いや、お嬢様が起きる前に館に戻り、今日着るドレスにシールを貼った。
「寝起きには紅茶を用意してって言ったでしょ!」
朝から機嫌の悪いお嬢様。まだ寝巻のままなのでシールの効果は出ていない。
我慢我慢、我慢だ私……、ドレスを着れば何か変わるはず……
「今日のお食事はとってもおいしいわ。爺やもメイドさんもいかが?」
めっそうもないと断る私達に残念そうに手を振るお嬢様。
執事の爺やさんはやっと心を入れ替えてくれたと涙を流していた。
ある程度メイド業を務めてお金も貯まったし、そろそろ辞め時かな。
私はお嬢様に意思を伝えると熱心に引き止められたが、なんとか振り切っていつもの旅に戻った。
その後の話ではお嬢様は人が変わったように料理や掃除等を手伝ったり、浪費家だったワガママ性格も直り、良役令嬢になったようである。
めでたしめでたし。
あ、そういえばシール剥がれたたらどうなるんだろ?
一応全部のドレスに貼っておいたけど……
ま、まあ期間限定の良役令嬢て事で。
私はそうならない事を祈りつつ、館からダッシュで逃げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます