第11話 ダ洒落なスマホ
#.11 ダ洒落なスマホ
「あーついにきれたかー」
私はがっくしと肩を落とした。
転移の際に持ってきていたスマホ、それのバッテリーが切れたのである。
一応家族の写真を見たり、暗い所を照らすだけにしたり不要な時は電源を切る等と、節電対策はしていたつもりだったのだが、転移して数日、ついにバッテリー切れしたのである。
「コンビニならおいてあるよね……多分」
私はそう言いながらいつものお店に入った。
「充電させて貰っていいですか?」
「構いませんよ」
お、これはラッキーと思っていた所でいつもの様に商品に目が釣られる。
よろしければお売りしましょうか?と快諾してくれる店員さん。
ここの商品にはずれはまあほぼないので、充電のお礼も兼ねて買う事にした。
それはなんとスマホである。
当然電話もメールできないし、せいぜい懐中電灯代わりにしかならないだろうけど、月額料金なしでお安かったのでつい買ってしまったのだ。
しかしそのスマホには一つだけアプリがインストールされていた。
その名も「ダジャレウィザード」……ダジャレ、いわゆる親父ギャグである。
このアプリを使えば何かしら起こるのだろうと期待し、私は店を出た。
ニンゲンコロス!
丁度いい相手が来た。スライムに次いで雑魚敵のゴブリンである。
私はスマホのアプリ「ダジャレウィザード」を起動するとさっそく試した。
「アルミ缶の上にあるミカン!」
私がそう言うと目の前にアルミの空き缶とその上にみかんが乗っかっていた。
そう、このスマホは駄洒落を現実にしてしまう面白スマホなのだ。
グギャギャ?
突然の光景に驚くゴブリン。
そうだろうそうだろう。
続けて私は第二の渾身のギャグを唱えた。
「もうかき氷はこおりごおりだよー」
自分で言っててうすら寒くなったが、ゴブリンの方は本当に凍えているかの様にブルブルと震えていた。
続け様に私は駄洒落を連発した。
「さーまちに待った夏休みだー」
これはサマーと夏を掛けた応用ネタである。
ゴブリンはまるで真夏の砂漠にいるみたいにダラダラと汗を流している。
「これでとどめよ!」
グギャ!?
「こんな所に塔があったわー」
これも塔と英語のタワーを掛けた応用ネタである。
ゴブリンは高々とそびえる塔の頂上に立っていた。
これで塔が消えてもそのままでも私の勝ちな訳だ。
少し気の晴れた私は充電が終わったであろう店に立ち寄る事にした。
「充電終わりましたか?」
「いいえ、それがまだ……」
「えー」
ちょっぴり落胆する私
そーだ、ソーダでも飲んで待っていよう。
そう唱えた私はソーダ水を飲みながらお店でくつろいでいた。
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