いちごジャムのビンを割る

空港のような広いスペースを歩いていた。あちこちで物販のようなことをやっている。

いちごジャムが売られている。ここは果樹園の近くだっただろうか。そんな気分があり、ことのほか、美味そうに思えた。


いくつかの売り場を見て回り、一番スタンダードないちごジャムを買った。

しかし、それまで持っていたいちごジャムのビンを持て余すことになる。私は新品のいちごジャムと空っぽのビンを持ったまま先へ進んだ。


出口に来る。ガラス張りの小部屋のような場所だ。

そこには受付の女性がいて、通ろうとすると止められた。空っぽのいちごジャムは捨てないといけないようだ。

仕方がない。私はゴミ箱を探して歩き始めた。なんとなく、ビンを放り投げてくるくると回転させ、落ちてくるとキャッチする。そんなことを何度かやっているうちに、ビンを落としてしまった。


意外なことにビンは割れた。

広い会場の中で、ガラスの欠片が広がっていく。


背後で悲鳴が聞こえた。

「目にガラスが入った!」

女性が呻いている。


涙を流せば、ゴミは出てくるはずだ。大丈夫、大事にはならない。

それより、散らばったガラス片をどうにかしてもらわなくては。

一斉に解決する方法があるはず。運営なら一斉削除できるだろう。


私はそう思い、受付の女性のもとに戻った。優しかったお姉さんはヒステリックに叫んでいる。

「なんてこと、してくれるのよ!」


延々と怒鳴り散らす彼女を尻目に、少しでも片付けようと思い、しゃがんで、そこにあったガラス片を拾うことにした。

大皿ほどのガラス片を拾い、そこに小さな欠片を入れていく。ガラス片は無数にあった。


女性が何かを話しかけてくる。それを横目に欠片を拾い続ける。

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