第18話#18.異世界を司るモノ

#18.異世界を司るモノ




「ナーロウ君、君には期待外れだよ」


初老の紳士がナーロウに告げた。

他にも数人の初老の紳士と淑女達が席を並べている。

彼らは彼女らは異世界監察局の幹部達だ。

つまりナーロウの上司にあたる存在である。


 ここは異世界裁判所。

本来異世界のチート者や女神を裁く施設であるが、今は監察官であるナーロウが裁かれている。


「これはいったいどういう事ですかのう?」


「君はやりすぎたのだよ」


「本来適当に見逃し異世界転移・転生を看過するのが通例なのだから」


「じゃあ最初から仕事を送ってこなければよいじゃろうに!」


ナーロウの憤慨も当然だが、向こうは暗黙の了解だと思っていたらしい。

そして次の一言がナーロウの胸に思いっ切り刺さった。


【作戦:異世界監察官ナーロウは打ち切りとする】


ていのいい業務終了宣言である。

これからはほそぼそとデスクワークを……する訳がなかった。


 「お主らみたいな老害連中がいるからチート連中がはびこるんじゃ!」


「ほう、我々と戦おうというのかね」


「当然!」


ゴゴゴゴ


軽い地震が起こると床下から一体の人型ロボット(以下ロボ)が現れた。


「ふん、そんなちゃちぃ奴でやれるとでも―」


ナーロウが余裕をかましていたその瞬間、ロボはナーロウの首を鷲掴みにしていた。


 「な、なんの……!」


ナーロウは腰の球、今迄封印してきたチート者達を開放した。

まずは力のチート男と技のチート男だ。

二人は謎の大岩を用意しロボに投げた。

大岩の直撃にびくともしないロボだが、その岩には爆薬が仕込まれていた。

大爆発を起こす大岩、さすがにこれでロボも倒しただろう……か?


「「やったか?」」


フラグっぽい台詞を言う力のチート男と技のチート男。

しかし爆風を抜け飛んだロボは手から光の光線を放つ。

光のチート魔術師が使っていた力である。

光線は力のチート男と技のチート男を貫き致命傷を負わせた。


「もういい戻れ!」


ボールに二人を戻すナーロウ。

ボールの中では自動回復もするのでこれで二人は無事な筈だ。


 「次はこれじゃ!」


いつぞやの炎のチートJKが現れた。


「ナーちゃん、待ちくたびれたし~!」


炎のチートJKは巨大な爆炎の球を作るとロボに投げつけた。

先程の爆発とは比にならない程の大爆発が起こる。

しかし爆風を抜け飛んだロボは今度は雷を手に纏い突進してきた。

これはいつぞやの執事が使っていた技である。(威力は桁違いだが)


「ぐはっ……こ、こんなの聞いてないし……」


炎のチートJKはロボの掌底を受けると気絶した。

またもやチート者をボールに戻すナーロウ。


「まだやるのか、ナーロウ君」


「まだまだじゃ!」


 ナーロウにはとっておきの切り札があった。

あのドス黒いオーラを纏った母とコンビプレー抜群の父親二名だ。


「いでよ、チート両親!」


しかしそこには仲睦まじい和解した彼らと彼女がいた。

どうやら今は父親二人が母に求婚してるらしい。

のろけ話?他所でやって下さい、他所で。


 「手駒は尽きたようじゃの、降参するかね?」


「ふふふ、ふはははははha!」


急に笑い出したナーロウ。

気でも触れたのかと嘲笑う幹部達。

しかしそれは最後のトドメを確信した笑いだった。


 ロボの動きが急に止まった。


「コンセント抜きましたよー」


えっ?こいつコンセント付いてたの?と狼狽える幹部達。

そしてそのコンセントを抜いた英雄こそ、6人のNoチートなJK、しかも普通のJKだった。


「き、君いつからいたの?」


普通JKに尋ねる幹部の一人


「最初からいましたけど」


どうやら普通故に影が薄く気付かれなかったらしい。

(本人曰くちょっぴり傷ついたとの事)


「ふふふ、幹部諸君!これで勝負ありじゃのう!」


「ま、まだだ!警備兵―」


 と、幹部達が言い終える前に天井が、いや天が大きく開いた。

まるで鍋の蓋を開けるかの様に開かれた天から何か巨大なモノが覗いている。

それは巨大なナーロウ?だった。

そして何故か電源が切れたかの様に動かなくなる小さいナーロウ。


『アバターちゃん、ご苦労様』


大きいナーロウが小さいナーロウをなでなでする。

そして今度は幹部達の方に視線を向けた。


『やっぱりだめかー、改心してくれると思ったのになぁ』


「き、貴様、な、何者だ!?」


『私?』


『私はナーロウよ、ここより上層の存在だけどね』


『じゃあリセットかけまーす』


巨大なナーロウが声を掛けると裁判所が、いやこの世界その物が、音を立てて崩れ去った。

小さなナーロウも幹部達も他のチート者も、全ての生命が塵も残さず消えた。

残ったのは……光も闇も無い”無”そのものだった。


 そして大きな巨大なナーロウは“我々に”微笑んでこう言った。



『ここまでのご愛読ありがとうございました♪』



『異世界監察官ナーロウ~チート転移者が暴走して大変な件。もう遅い?まだ間に合うので助けます~』-完-

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異世界監察官ナーロウ~転移者が暴走して大変な件。もう遅い?まだ間に合うので助けます~ 勇者れべる1 @yuushaaaaa

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