第17話#17.オンラインゲーム系チート者~管理者の資格~

#17.オンラインゲーム系チート者~管理者の資格~



「あー納期ギリギリだよー」


ゲームクリエイターである俺は徹夜で仕事していた。

仕事内容はいわゆるネトゲの運営である。

これも大人気オンラインゲーム「ユニバース・クエスト・オンライン(略してユニクエ)」の無茶な仕事スケジュールの為だ。

俺は眠気からふらふらと歩いているとトラックに轢かれてしまった。

 

 しかし俺が行くのは天国でも地獄でもない。

異世界だった。



 俺が目を覚ますと目の前で魔物の軍勢が人間の兵士と戦っていた。

ゴブリンにゴーレム、ハーピーにドラゴン、RPGゲームによくいる面子だ。

しかし俺はこいつらには別の意味で見覚えがあった。

ユニクエのモンスターのデザインに瓜二つなのだ。


 放心している俺に天から声が聞こえる。

俺はその声に従ってこう叫んだ。


「スキルボード展開!」


透明な板状のボードが出てくると見慣れたユニクエのステータス画面が表示される。

俺のステータスは……全てカンストしていた。

スキルも全職全種、とにかく全て習得済み。

管理者用のツールも満載完備。

つまりこの世界で俺は神にも等しい存在になったのだ。


 その力でまずする事は……まず逃げよう。

俺は人類と魔物の戦争なんぞ知ったこっちゃないとその場を離れた。


 移動呪文で街まで来た俺はまずカジノに寄った。

運のステがカンストしてる俺は、拾った僅かなお金で億万長者になった。

ゲームでのカジノではあるあるの、コインとの交換で強力な限定装備を手に入れた俺はさっそく装備。

初期装備でもただでさえ強いのが、更に強くなってしまったのである。


 そこからの俺は無双状態だった。

向かってくる魔物や野盗共をばっさばっさとなぎ倒し、俺は次の街へと進んだ。


 「うーん、辛気臭い村だなぁ」

その村では疫病が流行っており、村長の娘である美少女エルフも病気に掛かっていた。

俺は助けたお礼に期待しつつスキルボードを出し、最上位の解毒の呪文を唱えた。

さらに助けたエルフ少女の好感度をスキルボードで弄り一目惚れさせる。

これで村の英雄&エルフ嫁ゲット!の流れになるはずだった。

 

 俺は真っ黒な空間に飛ばされると元の現代の姿に戻っていた。


「あ、あれ?なんで?」


「計画は失敗だった様じゃのう、社長」


「はい、面目ない限りです。ナーロウ様……」


そこには軍服姿の少女と、どこかで見た様な顔があった。

どこで見た?TVか?雑誌か?頭をフル回転させる俺。

そうだ!この人はウチの会社の社長だ!


「しゃ、社長、何故ここに?」


「君を視察に来たのだよ、神、いや管理者としてね」


 どうやらこの世界は女神でなく彼が治める世界らしい。

無論俺のいた現代も、さっきまでいた異世界もその一つだ。


「しかし随分と私利私欲で動いてくれた物だな」


「こ奴はお主を後継者にと考えていた様じゃが、見込み違いの様じゃの」


 社長もこの少女も言いたい放題言ってくれる。

今の俺は従順な奴隷社員じゃない、俺が俺こそが神なんだ。

スキルボードを出そうとスキルボード!を連呼する俺。

しかし俺の声が虚しく暗闇に響いただけだった。


「その力は私が与えた物だ。既に没収済みだがね」


「そ、そんな!俺が何をしたって言うんですか!」


 反論する俺に冷淡な態度で答える社長。


「まず最初の戦争に介入しなかったね。あれは正解だ」


え?てっきり怒られると思ったがそうではなかった。

どうやら管理者は不介入・不干渉が原則らしく、無視した俺の選択は正しかったらしい。


「次にカジノで豪遊したそうだね。まあ神にも娯楽は必要だろう」


これも怒られると思ったが違った様だ。

 

 残った案件はただ一つ……


「好感度弄ってエルフ嫁をこしらえた事ですか?」


「違う。君が疫病を直してしまった事だ」


え?それっていい事じゃないの?

何故怒られてるか分からない俺に社長が答えをくれた。


「あのまま全員治していたらあの世界の医療レベルは著しく下がる。来るべき別の大疫病には耐えられないだろう」


「それってどういう事ですか?」


 社長の説明はこうだ。

村が疫病で死に絶え、それを重要視した人類が大陸レベルで医療改革を行う。

それが起こらないと医療技術の進歩は普通で、別の大疫病が流行ったら人類全滅レベルでやばいそうだ。

そもそも神は不介入・不干渉が原則である。

このレベルの案件に関わってはいけなかったのだ。


「で、でもそんな事俺知らないですよ!」


「ジャーナルアーカイブスにストーリーは全て載せてるはずだ」


「そもそも自分の作ってるゲームの世界観とかシナリオとか把握してなかったんか?」


呆れる社長と少女。

ご最もです、はい。


 「それで……俺はどうなるんですか?」


「ネットゲームの運営で世界の管理者を選定するには無理があったか」


「お主も難儀な立場よのう」


俺を無視して立ち去る二人。

そして俺の意識は次第に遠くなっていった……


 


 「プロデューサー、起きて下さい!」


ん……ここは……いつもの会社か?

俺は眠気眼をこすると再び仕事に戻った。

いつものネトゲの管理・運営に。



-オンラインゲーム系チート者~管理者の資格~編・完-

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