第15話#15.チートな母VSチートな父達

#15.チートな母VSチートな父達



~某旅客機機~


ある旅客機がエンジン不良を起こし不時着しようとしていた。

しかし旅客機はいつ爆発してもおかしくない危険な状態だった。

今回は不運にもその旅客機に乗り合わせた親子達の物語である。


 単刀直入に言うと旅客機は爆発した。

そしてその直前に旅客の二組の親子が異世界転移したのである。

いや、正確には異世界転移の予定の為に女神の間に転移した。

異世界転移の控室の様な場所である。


 一組目の親子は高校生の少年と未亡人の母親(以下母)の日本人親子で、職業は専業主婦である。

性格は普段はおっとりしてるが、息子の事となると人が変わる。

一方的に母親が溺愛しており、息子を自分の命より大事にしている。

その愛と祈りが通じたのか彼女と息子は異世界転移し、更に”魔剣オカンスレイブ”という武器まで与えられた。

これは子供への愛が強い程強力な武器で、病的なまでに息子を愛している彼女にとっては最強の魔剣と言っても良いだろう


 二組目の親子は高校生の少女と強面の日本人男性が二人。

職業は片方はFBI捜査官(以下父F)、片方は警視庁捜査一課の刑事(以下父K)で、二人とも敏腕である。

少女は死んだ親友の娘であるが、小さい頃から面倒を見ていて実の親子同然の存在になっている。

性格は正反対で、父Fが冷静沈着、父Kは頑固者である。

友人同士だが、しばしどちらが父親に相応しいか争っている。

その闘争心と愛情から、親Fには全てを貫く”狙撃魔銃ファーザス”を、親Kには全てを打ち砕く”魔拳頑鉄”が与えられた。

これらも同様に子供への愛が強い程強力な武器である。


 今回の異世界管理している女神はこういった変わった争いが大好きで、どちらの親の愛が深いか、を戦わせて確かめようとしていた。

条件は勝ったらそのまま親子で親子のまま異世界転移、という事らしい。

親子の絆が強すぎる二組はこの勝負を二つ返事で受けた。


「さあ、存分にわらわを楽しませるが良い」


 戦いがいざ始まろうとしていた。


 一方その女神の後ろにナーロウはいたが手をだせないでいた

今回の戦いは上からのお達しで手出し無用とされており、チート者封印も勝負がついた後にしろとの事だ。

悪趣味ではあるが貴重なケースという事で、という感じらしい。

異世界に飛ぶ前の為、現行犯封印という荒業も使えない。

何もできない展開にナーロウは少しイライラしていた。


 「ていうかワシいらんじゃろコレ。帰っていいか?」


「駄目です」


帰ろうとするナーロウを引き止める使い魔のグーコ。

気持ちは分からないでもないが、監察官たるもの嫌な仕事もたまにはある。

というか止めないと叱られるのは自分なのでグーコも必死だった。


 「じゃあ勝負開始~」


気の抜けたナーロウの開始合図で勝負は始まった。


 「息子君への想いは誰にも負けないんだから!」


母は魔剣オカンスレイブを振ると黒い斬撃波が放たれる。

それを魔拳頑鉄で打ち砕く父K、そしてその隙を狙い魔銃ファーザスで狙撃を行う。

しかし弾丸が母の身体を貫通してもすぐに傷口が塞がってしまう。

それは息子への愛故になせる魔剣の力であった。


 「ちぃっ!この女化物か!」


頭か心臓を狙うべきだったと後悔する父F。

 

「女だからといって油断ならんぞ!」


すかさず次の攻撃を警戒し構える父K。


「うふふふふふ!」


 魔剣に支配されているのかそれとも支配しているのか、ドス黒いオーラを放つ母。

今度は先程以上の巨大な斬撃波を二人に向けて放つ。

父Kは拳で、父Fは銃を連射し応戦し、斬撃波をなんとか食い止めた。


 しかしその瞬間、斬撃波の後ろに隠れていた母は魔剣を父Kに振り下ろした。

両の拳でそれを受ける父K。

魔拳にはヒビが入ってしまい、小手の中からは血が流れていた。

そして想像を絶する痛みに耐えながらも魔剣の斬撃を受け続ける父K。

父Kはもうそろそろ限界だった。


 一方で父Fは中々狙いが定まらないでいた。

父Kが母と接近し過ぎている為、撃とうとすると父Kが巻き添えになるのである。


「くっ、俺には撃てない……」


 「馬鹿野郎!俺ごと撃て!」


「!?」


戸惑う父Fを叱りつける父K。

その一声に父Fの背中は押された。


 パァン!


魔銃の銃声が響き渡る。

銃弾は父Kの肩を貫通し、母の頭を直撃していた。

頭から血を滴らせバサッと倒れる母。

ようやく倒せたと安堵する二人。


「娘は!娘はどこだ!」


勝負が終わったと確信し、娘の居所を女神に問い詰める父親達


 しかし女神の答えは予想外だった。


「まだ勝負は終わっていませんわよ?」


背後の母の死体に振り向く父親達。


「息子くぅぅうううんは渡さないんだからぁ!!」


そこには魔剣オカンスレイブの魔力でアンデッド化した母がいた。

再び例の黒い斬撃波を放とうとした、その時である。


「母さん、やめてくれ!」


「父さん達もこれ以上争わないで!」


そこには母と父達が愛する子供達がいた。


 「三人が争う必要なんてないのよ!」


「ナーロウさん達が良い解決法を出してくれたんだ」


女神の後方でブイサインをしているナーロウ。

彼女の提案はこうだ。

二組の親子がいるから争うんであれば一組にしてしまえばいいと。

父や母に溺愛されるという似た様な境遇にいた二人は、この短い間に惹かれ合っていた。


「「私達、結婚します!」」


「「なんだと!?」」


「なんですって!?」


唐突の結婚宣言に驚く両親達。

息子や娘から見れば相手の両親は義理の親に当たる訳だ。

これで一組の親子だけ異世界転移と言う条件は満たされた。


 「という訳で一組、異世界転移してもらうぞ女神」


「しょうがないですわね、私の負けですわ」


「と、その前にっと」


ナーロウは後方でやれ息子君は渡さないだの、娘は渡さんだの言い争っている親子達からほったらかしにされているチート武器を取り上げると、修羅場になりそうなその場を後にした。

一方女神は生き地獄の様な親子喧嘩を仲裁する羽目になった。



チートな母VSチートな父達編・-完-

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