第14話#14.VS食のチート者
#14.VS食のチート者
「あーカップラーメンにコロッケ乗っけるの最高なんじゃぁ」
熱々のカップラーメンに普通のコロッケを乗っけるナーロウ。
パリッでもサクっでもなく、若干へにゃっとなった衣がいい。
更にスープを吸ってぐにょぐにょになりつつあるコロッケをずずずとすする。
別にどこぞの繋がり眉毛の警官の様に借金まみれでも、給料前でひもじい訳でもない。
このナーロウという女がずぼらなだけだ。
「ナーロウ様お仕事ですよ~ってまーた栄養なさそうなの食べてる~」
心配しつつもいつもの事だと呆れている手乗りドラゴン。
彼女はグーコ。
ナーロウの使い魔であり、レッドドラグーンという希少なドラゴンのメスでもある。
「うるひゃい(モグモグ)、わひは楽なのがいいんじゃ(ズズズ)」
「食べながら喋らないで下さいよ。年頃の女性なのに自炊とかされないんですか?」
「ワシ本来性別無いし、読者受けがいいから女主人公にしただけじゃぞ」
はいメタいメタいといつもの雑談を交わす二人。
そしてグーコが呆れながらナーロウの机に書類を置いた。
今回のチート転移者案件である。
書類には食のチート娘(以下食チ娘)と書かれてあった。
「食に関心のないナーロウ様には厳しい案件ですねこれは……」
「ワシは食う専じゃから自分で料理はせんのじゃ」
「なら異世界監察官は上級公務員なんですから、もう少しまともな物を食べて下さいよ」
「メンドクセ」
はいはい仕事に行きますよと着替えを促すグーコ。
ナーロウはかったるそうにTシャツ1枚パンツ一丁の姿から、いつもの軍服に着替えました。
しっかし酷い服装ですね、本当に女性なんですかコレ?
「ナレの奴もうるさいのう……しばし黙っとれ」
ナーロウはナレーターを縛り上げさるぐつわをすると、再び仕事の準備を始めた。
むーむー!
「地の文が分かりにくいと読者様が困るからの。しばらくそうしとれ」
「早く行きましょうよナーロウ様」
「お、そうじゃな」
ナーロウは指輪をはめた手をかざすとワープゲートが開かれた。
グーコとナーロウの二人はそれを通り現場へと向かった。
どうやらまーた女神が転移済みらしい。
「よっしゃあ、ぼちぼち仕事を始め―、なんじゃこりゃあ!!?」
ナーロウ達の出た先はなんと原始時代だった。
文明を感じさせない荒野に原始人らしき人影がちらほらと見える。
「これは対象者を探すのも一苦労じゃのう……」
「そうでもないみたいですよ?」
グーコの向いた先には人だかりが出来ていた。
そこでは水、風、雷、炎の魔術が入り乱れ、食材を調理している。
ナーロウ達はさっそくその騒動の主を確かめる事にした。
「かつ丼にな~れ♪」
女子高生らしき食チ娘がおたまを掲げると、原始人達の用意した土器に調理された食材が盛られ、かつ丼らしい物ができあがる。
「かつ丼よ、おいしくなーれ♪」
食チ娘は怪しい小瓶を取り出すと、出来たかつ丼にパっパと粉末状のナニかを振りかけた。
原人の一人が完成したかつ丼を食す。
「さすがは食の女神様じゃ!うーまーいーぞー!」
長らしき白髭の原人がそういうと、他の原人達もんだんだと同意しかつ丼に食らいついた。
一部始終を見ていたナーロウは人ごみを割って入り、食チ娘にこう告げた。
「異世界監察官じゃ、神妙にせい!」
え、私?という感じでキョトンとする食チ娘。
「あの~私何か悪い事しましたか?」
自覚のない食チ娘にナーロウが書類を見ながら説明する。
「文明度の低い異世界での料理、及び魔術の使用じゃな」
「それの何が悪いんですか?」
「料理のりょの字もない時代で料理なんぞオーバーテクノロジーもいい所じゃわい!」
どうも噛み合わない二人の会話にグーコが割って入り説明する。
「料理で文明度が上がったら軍事とか他の面の文明度も上がっていくもんなんですよ」
再びきょとんとする食チ娘に対し、グーコは丁寧に説明を続ける。
「人が集まればそれだけ文明の発展速度も上がりますからね。料理で人集めもNGなんです」
「なんだか分からないけど、みんなに料理を振舞っちゃいけないって事?」
そうですそうですと言わんばかりに頷くナーロウとグーコ。
しかし食チ娘は不満な様だった。
「これは女子力を上げるための修行なの!邪魔しないで!」
食チ娘からドス黒いオーラがわきでている。
暴走だ。
食チ娘はおたまを掲げると暗雲が空に発生した。
戦闘もやむを得ないかと身構えるナーロウ達。
しかし突然の突風でトマト、小麦、豚、ピーマンが飛来し、暗雲の中に吸い込まれていく。
この時代にはない食材もある事から異世界か未来から呼び寄せた物だろう。
暗雲の中で殴る切るこねる等の調理が魔法にて強引に行われ、最後に落雷で付いた炎で加熱された。
ナーロウ達の目の間に出て来たのはナポリタン(らしきもの)だった。
盛りつけは雑で、無理矢理食材を調理したので凄くまずそうに見える。
更に最後の落雷で過剰に加熱したせいか殆どが黒焦げだった。
「まだまだよ!」
食チ娘はまた怪しげな小瓶を取り出し振ると、如何にもまずそうな一品が、普通のナポリタンに姿を変えた。
「さあ二人とも、食しなさい!」
ずずいとすすめられたナーロウ達はしかたなくフォークを手に取りナポリタンを食べだした。
「うーん、普通に美味しいですね」
「まずくはないが、特別旨いという訳ではないのう……」
意外と言うか期待外れというかそんな感じの淡泊な反応の二人。
一方で食チ娘の方はドヤ顔で二人が食べ終わるのを待っている。
ふーむと少し悩んだナーロウはグーコとヒソヒソ作戦会議を始めた。
ナポリタンを食べてる途中でもういいやとフォークを投げ出す二人。
そして食チ娘に対しある提案をした。
「ワシと料理勝負をせんか?」
「え?」
それは食のチート者である彼女にとって願っても無い提案だった。
「ではお題はラーメンです。調理開始!」
グーコが開始の合図を始めると各々が調理を開始した。
食チ娘はいつも通りおたまを天に掲げいつもの調理をしている。
一方ナーロウは余裕の笑みを浮かべ湯を沸かしている。
「はああああああああ!!!」
食チ娘が気合を入れると天からどんぶりにスープ、麺、チャーシュー、各種食材が落ちて来る。
一方でナーロウはカップラーメンにお湯を注いでいた。
「カップラーメンですって?舐めないでよね!」
食チ娘が例の小瓶を取り出しぱっぱと振りかけようとした。
その時である。
「チートは一人一回までですよ!」
グーコが食チ娘の方へ飛んでいき、例の小瓶を奪っていった。
しかし食チ娘うろたえない。
「鍛え上げられた私の女子力にそんな物はもう不要よ!」
食チ娘は審査員である原人にソノラーメンらしき物を差し出した。
自信満々の食チ娘だが、だがしかし原人の反応は予想外だった。
「まーずーいーぞー!!!!!」
ソレを食した原人は最低だと評価付けた。
ギトギトのスープ、腰の無い麺、焦げたチャーシュー、生焼けの食材、どれもが最低の出来だった。
一方でナーロウの方はというと……
「3分間、待つのだぞっと」
あまりのまずさに悶える原人にナーロウはシーフード味のカップヌードルを差し出した。
「うーまーいーぞー!!!」
思わず口からビームを吐く原人。
その味やたるや、程よい塩味、香り高いシーフードの具、カップラーメン特有の弾力の麺、全てが調和し最高のカップラーメンの味を演出していた。
「勝者、ナーロウ様!」
ナーロウの勝利を告げるグーコ。
審査員は悩む間もなく結果を出したのだ。
「どうして……、私の女子力よりあの娘の女子力が上だったと言うの?」
「女子力とかそういう問題以前の事なんじゃが……」
謎の自信がへし折られうなだれる食チ娘だった。
「ていうかお主相当のメシマズじゃな?」
「え?」
「今グーコに小瓶の中身を調べさしたが、アレを使うと三ツ星の一流シェフ並みの料理になるそうなんじゃが……」
「それを差し引いてもお主の料理はまず過ぎた様じゃの」
なにそれ聞いてないと言う様な顔をする食チ娘。
魔法を使った料理法がまずいのではという指摘もしたが、本来の料理の腕はあれより酷いと言う……
どんだけダークマター製造機なんだこの娘はと呆れるナーロウ達であった。
-VS食のチート者編・完-
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