第69話 俺と鳴神②
今、俺の膝には鳴神がいる。
いや、正確には、鳴神の頭部と指先の一部が当たっているのだが。
あぁ。
今日はデレ日なのか.............。
彼女は、俺をしたから見てくる。
俺も、上から彼女を見つめる。
長い睫毛、いつもの冷たい視線はかなり丸くなっている。
そして、普段、暴言しか吐かない唇は、リップクリームのせいか潤って見える。
何だろう。
やはり、夏は近づいているのだろう。
血液が全身を駆け巡るのが分かる。
あれ?
俺の心臓の音?めっちゃバクバクしてる。
俺は、彼女から目を離せないでいる。
「ジロジロ見ないで。」
ついに、彼女に怒られた。
自分だって見てたくせに。
私はいいの。
「あっち向いてて。」
はいはい。
俺は、顔を赤く、口を尖らす彼女を一瞬拝んで、言われた通りよそを見る。
「ん。」
だが、彼女の声は、まだ何かを欲しがる。
「何?」
俺は、部屋の白い壁を見ながら声だけ返す。
「ん。」
彼女は、横にどかした俺の右手を掴み、髪の毛を触らせた。
ああ。
ここは、彼女の額、おでこだ。
手を動かさなくても、その右手から多くの情報が読み取れる。
髪、サラサラ.............。
肌、つるもち.............。
何より、温かい。
「.............、よしよしして。」
彼女は、俺の手首を自分の頭の上で乱暴に左右に動かした。
はいはい。
「よしよし。いつもありがとう。」
俺は、彼女の髪を優しく2往復。
視覚情報が無いのが残念だ。
「もっと。」
今日はいつになく甘えるな.............。
いつも、辛口なくせに。
俺は、部屋の壁を見ながら、手だけ、彼女と世界を共有する。
何分かたつと、静な部屋に静な寝息が聞こえてきた。
俺はそっと膝元を見る。
か、かわ.............。
かわうぃー。
可愛いだけの言葉では言い表せないレベルの感情と光景が渋滞する。
規則正しく上下する胸。
閉じた瞳はいくら見つめても怒られない。
寝ている間に、俺が襲う事は考えないのだろうか....。
安心したようにすーすーと....。
こんにゃろ。
至福の一時。
飴と鞭ってこう言う事だよな.............。
俺はスヤスヤと眠る彼女の顔を彼女が目を覚ますまで、ずっと見つめていた。
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