第68話 俺と鳴神
フフーン♪フーン♪
鼻歌まじりの声とともに、全身、白装束の鳴神が出てきた。
バスタオル一枚分のお陰で、シルエットは濃いめに確認できる。
俺の妹に比べると、胸の厚みがやや欠点ではあるが、タオルからはみ出る生足は、白く艶やかで輝いている。
おそらく、いや、十中八九、風呂上がり。
まだ少し水気がある体は、室内灯で淡く、しっとりしている。
そんな彼女は、俺が見ているとも知らずに、その格好のまま、奥のキッチンへ消え、手に麦茶を持って戻ってきた。
いつもの強気な彼女を知っているだけに、上機嫌で嬉しそうな彼女とのギャップは計り知れない。
この天使姿に俺は毎回、心を抉られる。
だから、どんだけ文句言われようが、罵声を浴びようが、我慢できてしまうわけで.............。
さすが、俺の幼馴染み様だな。
俺は、顔にドア形がつきそうなほど、中を覗く。
むふ。むふ。
「お!大将!中、入らねーのか?」
俺が1人、変大業を勤しんでいると、後ろからヌッと手が伸び、何の迷いも無く、ドアを開けるバカがいた。
「おい!待っ.............。」
俺が止める間もなく、優は中へ入っていった。
そして、数秒後。
「あぎゃ!!うへっ!!ふご!!!!」
バキッ、バコッと全身が痛め付けられる音が聞こえてきたのは言うまでもない。
俺は、中が静になったのを確認して、さも、今、帰宅したかのように扉を開けた。
「ただいま。」
その日の夜、さあ3人揃ったというタイミングで、優は呼び出しがかかった。
そのまま、変装道具一式を持って、出掛けていった。
おそらく、帰りは朝になるだろう。
俺が言うのも何だが、よく働くやつだ。
で、予定は未定のまま、白紙になる。
んー、突然暇になってしまうと何をすればいいかわからなくなる。
俺は、適当に資料の整理をすることにした。
「いと。」
俺は名前を呼ばれ振り向く。
そこには、ソファーを指差す鳴神がいた。
座れということだろうか。
何だ?
クッションの下に押しピンの針山でも仕込んだのだろうか?
座った途端、背もたれが消えるとか?
俺は、彼女にやられたドッキリの数々を思い出す。
また、人が嫌がる顔を見て、楽しむつもりなのだろうか。
「早く。」
無表情のまま、ソファーを指し示す彼女の顔から、その真意はうかがえない。
今度は何をさせられる?
俺は取り敢えず、いわれるがままに座った。
.............。
良かった。
何も起きない。
いや、時間差だったら.............。
俺は、何があっても動じないでおこうと、背筋を伸ばし、両足を揃え、手を膝の上においた。
所謂、カチコチだ。
「ん.............。っしょ.............。」
俺が身を固めていると、鳴神もソファーに座ってきた。
「手、邪魔。」
そして、彼女の右にある俺の手をどけろと言う。
「ん。」
俺が手をどけると、ファサっと俺の膝に........鳴神の頭が.....。
ひ、膝枕?
俺は急接近した彼女を見たまま、固まってしまう。
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