第26話 王様ゲームって.......。

「王様ゲーム!使用人さんも、一緒にやりませんか?」



その言葉に、流されるように、俺は今、使用人、鳩谷正也として、クラスメイトと輪になって座っている。

椅子を円にして、並べている。

中心の空間は、まるで、世界最古の闘牛場、ベハル闘牛場みたいだ。




最初は、渋っていた、中村優も、参加し、結局、親睦会参加者全員で王様ゲームというのをやる羽目になった。




王様ゲーム。

やったことは無いが、ルールは知っている。



くじ引きで、王様を決め、王様以外は、番号が割り振られていて、その番号を王様が指名して、自分の満足する優越感に浸ると言うものであった気がする。






即席で、作られた、くじ引きを卓上に置き、ぐるっと時計回りにくじの入った缶々を順繰りに回していく。



王様って、何でも出来るのか。

いっそ、世界が全て、王様ゲームで成り立っていたら、人生の攻略も簡単だったな.......。



にしても、俺、何で、ここに居るんだっけ。

そう思いながら、隣の伊世早美優と井勢谷桜を見る。

当然、くじを引く順番も、平等にと、じゃんけんで決めた。




「ジャーンケーン、ほい!」

「よっしゃ、勝ったー。」


「最初はグー、じゃんけんポン!」



こんな感じで。



そして、運が良かったのか、悪かったのか、俺は、妹たちに挟まれることとなった。




いや、素性が、今、バレる訳にはいかないから、ここは、余り悪目立ちしないのが無難だ。

なのに、何だ?この、くじ運は!?




「ドキドキしちゃいますね!」

「ええ。私、ゲームというのを、初めていたしますわ。」



左右の妹たちは、俺の心情なんて、そっちのけで、キャッキャと、楽しそうだ。

まあ、沈んで、悲しそうにしているよりも、笑って喜んでいる顔を見る方が、隠れ兄としては、嬉しいがな。



「じゃ、いくよ!」

『王様だーれだ!!』

掛け声と一緒に、一斉にくじを開く。




「お!

俺だ!

うおおおーーー!!

王様来たーーーー!」


俺と反対側に居た男が、勢いよく、立ち上がった。

名前は、たしか、江口晃(えぐちあきら)だった。



「えーっと.......。」

この雰囲気に、女子たちは、何かを感じ取ったのか、すぐさま、新ルールが誕生した。



「言っておくけど、ここでのルールは、王様が出した命令に、王様自身は干渉できないからね!」


「王様は、あくまでも、家来に命令を出すだけ。

トップは、ふんぞり返って、ただ、座っておくのが、役目。」



「いくら、はしたないこと考えても、王様の好きにはさせないわ!!」






「えーーーー!」

江口晃は、女子たちに、図星の忠告をされ、嘆く。




俺の、バニーちゃんが.......。



そう、涙目で周りの男子に応援を求めるが、




女子を敵に回すことがどんなに危険か、男子たちは、十分理解しているようで、誰も、目を合わせようとしない。




「っく。

ならば、仕方ない、干渉できないならば、鑑賞してやる!!」





「5番号がしゃがんでいる17番の頭を撫でる!!そして、後ろから、23番が抱きつく!

効果音もトッピングだ!!


これを、我に見せてみよ!!」



トッピングって.......。


息使いを荒くしながら、江口晃は、目をかっぴらく。

こいつ.......。


江口の名字を持つものが、全てこうでは、決して無いが、この、江口晃は、名字のごとく.......な奴らしい。


名は体を表す.......か。





「さー!

5番、17番、23番と言う命令が出ました!


番号が当たった人は、手を挙げて下さい?」



いつの間に、実況が始まったんだ?

丸眼鏡をかけ、いかにもオタクっぽい、山口一(やまぐちはじめ)が、進行を務める。



そして、その声で、そっと、手を挙げたのは、隣の井勢谷桜だった。

「ご、5番。私みたいです。」

5と書かれた札を見せる。



「おーっと!!

5番として、名乗りを挙げたのは、なんと、今、世間を騒がせている、超人気女優、井勢谷桜選手だーーーー!



これは、可愛い子に、頭を撫でられる、絶好の機会!

男子であれば、一度、いや、数十回は、夢を見た、シュチュエーション!!



その相手に選ばれた、者は、いったい、男なのか!女なのか!


さあ、17番、その正体はいかに!!




そして、その17番を後ろからハグする人物とは、いったい誰だーーーー?」

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