第25話 親睦会

どういう訳か、俺は、鳩谷正也として、俺のクラスの親睦会に居る。

最初は、俺に、礼をしたいと、始まった計画は、いつしか、主軸が、親睦会にそれてしまったらしい。

今では、なぜ、俺がこの場に居るのか、居る必要があるのか謎だ。

いっそ、用があると抜け出したい。







クラスメイトは、皆、飲んだり、食べたり、話したりと楽しんでいる。

まあ、これで、クラスの仲は深められたんじゃないか?




俺は、行き場をなくし、かつ、一緒に混ざるとか言うがらでもないため、テラスで1人、外の景色を眺める。




はぁ。


こんなにのんびり出来るのなら、せめて家が良かった。


しかも、こんなに時間をもて余すくらいなら、伊世早の来年度の見通しを計画したいものだ。




そんなことを考えながら、ため息を漏らす。

「はぁ。」



「よお。大将。

退屈そうで、なによりだな。」




後ろから、声をかけられた。



中村優だ。



俺は、振り返らずに言う。




「ここで、その呼び方は、まずい。

知り合いってバレたらどうする。」




「ヘイヘイ。使用人さん。」

口調が、どこかチャランポランだ。



中村優も俺に背を向けた状態で、まるで、1人でいるかのように立ち振る舞う。


俺たちは、お互い、背を向けたまま、話す。




「芸能、経営、高校、これ。

随分と、忙しそうにしてるじゃんか。

お前って、顔いくらあっても足りないな。



いい格好しいにもほどがあるぞ。

どっかで、肩の力抜かねーと、後で大変になるぞ?」





「ご忠告どうも。優も、学校のキャラが随分と投げやりだな。」





「まあ、高校めんどいなーって。


しっかしなー。

あいつも、同じ学校とか聞いてねーよ。今すぐ、転校したいわ。


毎日会ってるくせに、プライベートは隠すからなー。」




「はぁ。俺もだ。鳴神が居るのは知ってたけど、あいつらまで.......。」





「ああ、妹たちか。

って、は?

お前、あいついんの知ってて、黙ってたのか?

こんど、絞める。」

顔を見ていなくても、低くなった声から、中村優の顔が想像出来た。




「ヤベ。今の、カットで。」

「無理。」

マジかー。

そう、心のなかで脱力した。



「お、噂をすれば、なんとやらだ。じゃな。」



そう言うが早いか、中村の声は、背後から遠ざかっていった。



その意味が分かる。




「鳩谷さん。

これが、私が通う学校のクラスメイトたちですわ。

高校進学を後押しして下さった、鳩谷さんに、一度、お見せしたかったのです。」



テラスに、伊世早美優が現れた。




「優しそうな人たちばかりのようで、わたくしは嬉しいです。お嬢様は良いクラスメートに恵まれましたね。」

「はい。」

自分のクラスメイトを褒められて、伊世早美優は少し勢いのある返事をした。


「ただ、後2人ほどお声をかける前に帰られたようで、お誘い出来なかったんです。」



そういうことなんだな。

どうやら、彼女は、初めて通う学校のクラスメイトとやらを、見て欲しかったらしい。





俺的には、伊世早美優と2人だけのパーティーが良かったと思うが、これは口が裂けても言わないでおこう。





「あー!

伊世早さんこんなとこに居た!」



「あ、使用人さん。使用人さんもどうですか?」



「いいね!

人数多い方が盛り上がるし!」





なぜか、クラスの女子たちが、俺に近付いてきた。

何事だ。



そう思うと、仕田原理子は言った。




「王さまゲーム!

使用人さんもいかがですか?」



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