第11話 モデル、矢々葉絃千の誕生秘話②

 例えば、ある姉妹の場合。



 姉が、こっそり、妹のお菓子を食べてしまった。

「おねーちゃん!私のチョコ食べたでしょー!」

「ううん。食べてないよ。」


「嘘つき。口にチョコ付いてるもん!」

「ああ、これね。チョコカップケーキを食べたんだ。」



「嘘だ。絶対、お姉ちゃんが食べたんだ!」

「もー。じゃぁ、ゴミ箱見てみなよ。

 そこに、カップケーキが入っていた包装紙があるから。」

 この時、姉は、顔色一つ変えずに、妹にカップケーキを食べたという証拠を提示する。



「ほんとだー。じゃあ。一体、誰が食べたの?」

「さあ。さっき、おじいちゃんが冷蔵庫ゴソゴソしてるのみたけど?」

 妹が、縁側に駆けていく。

「おじーちゃーん。チョコ、チョコ食べたー?」

 その質問に、おじいちゃんは自白するのであった。

「おお。チョコレートだな?食べたぞ?さっき、冷蔵庫に入っていたからな。柔らかくて、美味しかった。」


「えー!私のチョコ食べたのおじいちゃんだったのー!?」





 こんな感じだ。



 姉は、おじいちゃんが、チョコの入ったお菓子を全て、チョコとしか認識していないと言うことを知っている。



 実際、おじいちゃんがチョコケーキを、姉が、妹のチョコを食べている。

 本当は、姉が悪いはずなのに、妹は、この後、おじいちゃんに怒ることとなる。




 小さな嘘が大きな勘違いを生むことだってあるのだ。



 他にも、

 ピン芸人には、潮時がある。

 一瞬目が眩むほど、儲けるが、それは、長い人生の中でたったの1年でしかない。

 何も、芸人だけでは無い。


 芸能界で、一瞬活躍して、そのまま姿を見なくなることは、良くあることだ。




 つまり、いくらか仕事をこなして、さも、矢々葉絃千というモデルが存在すると、人々に思わせ、引き時を見極め段々、消えていくこと、これが、人々の心に刺激を与えず、かつ、記憶にも残りにくい最善策であると、考えた。







 何度も言うが、俺の本当の存在が知られ渡ることだけはなんとしてでも避けたい。



 まあ。

 あの能天気な母さんは、微塵も悪気を感じてないと思うが。

 これで、俺の苦労は3倍になった。2倍じゃなく、3倍だ。





 だから、あの日から、母さんの『一回だけ』っていう言葉には、二度と騙されないように、気を付けている。つもりだった。




 こうして、明るい、活発、元気、お茶目な、自分とは正反対の性格である人物、モデル、矢々葉絃千として、世間の日の当たる場所へ出てきてしまったというわけだ。

最近、学園ドラマの主人公役で地上波もろ出しになってしまったが.............。

まぁ、頼まれて、断るのは筋違いだしな。

格好いいところを見せたいと言うプライドもあるというか.............。




すまん。

俺、気分屋だからさ。

はい。

俺の正体隠さなくちゃならないことは、重々承知してます。



すいません。

調子に乗りました。

次からは気を付けます。

だから、そんな目で見ないで~。

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