第7話 身支度

 静かに、教室を後にした俺は、靴箱に向かう。

 その時。



 ブブ。



 俺のスマホがメールの着信があったことを、バイブで知らせてくれた。


 ポケットから、赤いケースに入ったスマホの方を取り出す。



 メール一件。母。



 はぁ。

 廊下を歩いているため、傍から見て分からないレベルで、小さく溜め息をついた。



 知ってる。

 用件は先週から把握している。



 俺は、そのメールをタップせずに、何事もなかったかのように、上履きを脱ぎ、校門を出た。

 そして、一旦、学校に近い方の家に帰る。





 俺は、この高校に通うのを機にワンルームマンションを買った。


 何か、あったらヤバいから、それの保険用だ。

 何もないとは思うが、準備はいくらしても、損することはない。

 1K(洋6、K2)ではあるが、プライバシーが守られ、寝れたらそれで十分だ。



 鍵を開けると、スクール鞄を玄関に放り投げ、クローゼットを開ける。

 そして、オレンジ色のパーカーに、無難な紺のジャケットを羽織り、黒のスリムパンツを履いた。




 そして、洗面台で下ろしていた髪型をセットし、伊達メガネをケースにしまった。

「よし。」


 朝ぶりに見る自分の容姿を確認する。


 地毛の黒かった髪色を、明るめな枇杷茶色に完璧に染めるため、洗面台の棚から何本もあるメンズのヘアカラーのイエローを手に取った。





 予定の時間は2時30分である。


 現在の時刻、12時30分。

 最悪、2時までには現場に着きたい。



 俺は、手早くかつ、念入りに、髪を染めていくのであった。



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