悪魔を倒す者
デッドストロングは腕を6本に増やし、ヨダレを垂らしながら全身を鬼火で覆う。
「お前では私に勝てない。勇気と無謀が同じ意味でないことは理解しているだろう」
「理屈だけを並べてるんじゃねえ! ストロングマンは教えてくれた! ヒーローは諦めちゃいけないってな!」
走り出した英二は悪魔へ重いパンチを繰り出す。
だが次元の裂け目を開きその中に侵入することで回避され、後ろから燃え上がる右腕で首、胴体、足を力任せに持ち上げられた。
全身を
地面に叩きつけられ、苦しみ悶えながらクロスは立ち上がる。
が、あまりのダメージ量に膝を着き、倒れ込んでしまった。
「呪え! 恨め! 卑怯と思うなら倒してみろ! そんなことは不可能だがな!」
罵声を浴びせ高笑いを上げるイゲルド人に、英二はぐうの音も出ない。
その時だった。
チョウカイ、エワイズ、ダゲキ、そしてらアツの変身した姿であるザードがこの場に集結した。
「みんな。どうしてここに?」
その質問に対し、桜が次元の裂け目を開き戦闘態勢に入る。
「ニュースで悪の巨人が現れたってやってたから駆けつけたんだよ」
「まっ、待ってくれ。あいつの中には霧神さんが乗っている〈ガンマ1号〉が人質として取り込まれてるんだ」
英二の焦った様子から事実なのが分かる。
敵のあまりの卑怯さに全員
一方その頃、柴はストロングマンである少女の場所を突き止めイゲルド人の宇宙船に乗り込んでいた。
人型の真獣を次々に倒していき、研究室のロックされたドアを蹴りで打ち壊し侵入する。
そこには服を着た状態の彼女が緑色の液体が入ったカプセルに入れられており、口には酸素を取り入れるマスクを付けられている。
「待っててくれ。今助けるからな。だけどその前に」
彼は背後にいる敵に気づき振り返ると、ビフォーグⅡがビームダガーの刺しにかかっていた。
足音なく迫って来る真獣に対し、アーマーガイが描かれたコインを変身アイテムの銃に装填する。
銃口から光の刃が伸び、武器を弾いた。
バックステップで距離を取る彼女は表情を引き
「遅い!」
銃口をビフォーグⅡに向け柴はトリガーを弾く。
撃ち出された光の刃が腹を貫通し、ますます真獣は顔を曇らせる。
「あなたにご主人様の計画は止めさせません………」
「ストロングマン達は負けないさ。お前達みたいな悪魔にはなぁ」
全身からボウソウの黒きオーラを放ち始め、姿勢を低くする。
その態勢からなんと回転蹴りでカプセルを破壊した。
液体が流れ出し彼女の体が投げ出される。
ストロングマンをキャッチし、逃走を図る。
しかしビフォーグⅡにビームダガーの回収を許してしまう。
(相手はできるだけこの研究室を傷付けたくないんだろう。どこまでも忠実な奴だ)
腹と背中から流れ出る血で服を汚し、激痛に耐えながら再び次元の裂け目を開く。
(この隙に!)
銃型変身アイテムに次々とコインを装填し、柴はトリガーを弾く。
すると彼の体がボウソウと言う名の巨人へ姿を変えた。
宇宙船を破壊しながら立ち上がり右手のひらには少女が乗っているのを確認後、ストロングマン達が戦闘中の場所へ次元の裂け目を開くのだった。
一方その頃大牙は出撃命令を拒否し、避難所に待機していた。
ストロングマンであることは知られていないためここでやり過ごすことは可能。
テレビの有名人であることもあり、ファン達に心配を掛けられた。
ニュース映像で流れるストロングマン達とデッドストロングの戦い。
それを観ていると逃げた自分がどこまで情けない男なのかと心の中で責める。
(私は戦いに参加できない。怖いんですよ。ダークストロングマンを目の前にした瞬間、汗が止まらなくなる)
もし行ったとしても足手まといに成るのは理解している。
トラウマから逃れられない自分がとても情けなかった。
圧倒的強さに倒れていく正義の巨人達。
その姿を観た避難民は絶望していた。
それを見かねた大牙は拳を強く握り締め、シェルターから勢いよく外に出る。
「私だってストロングマンなんです。やらなくてどうする」
トラウマに怯えながらストロングマンに変身、その姿は正しくマグマを血としたヒーロー。
銀色のボディに黄色いライン、
ライトの様な眼に黒目があり、頭に〈ヒートスライサー〉の強化版〈インフェルノスラッシャー〉が2枚乗っている。
名はイフリート。
天高く飛び上がり、体から放出される熱気が蜃気楼を生み出した。
「相手がなんであろうと、トラウマを乗り越える。でなければマジシャンはやっていません」
独り言を口にしながらマッハのスピードで空を飛び、デッドストロングに不意打ちの〈インフェルノスラッシャー〉を放つ。
熱を帯びた刃が相手の2本の腕を切り落とし、頭に戻って来る。
そこにボウソウが到着し、手のひらで目を覚ました彼女もストロングマンに変身した。
「
「仲間のいないあなたには分からないこととは言っておく。それに私にもちゃんとした名前がある。キズナ、ストロングマンキズナだ!」
キズナと名乗ったストロングマンは強大な相手に勇気で立ち向かう。
それを見た英二は激痛に耐えながら「待ってくれー!」と叫ぶ。
「あいつの中には俺のパートナーが人質になってる! どうにかして助け出さなきゃならないんだ!」
彼の強い想いを聞いた彼女は真摯に受け止め、首を縦に振る。
「ふん。たとえ救い出せる算段があったとしても、私には勝てんぞ!」
高笑いを上げ、余裕を表すイゲルド人。
それに対して天高く手を伸ばし、光を灯す。
「みんな! 私を土台にし力を集結させ、この悪魔から人質を救い出すぞ!」
その指示に最初は戸惑う一同だったが、英二がキズナの横に立ち、手をかざす。
それに釣られる形で全員が手を取り合う。
(まずい!? ここで始末しなければ!?)
何かしらの危機を感じたデッドストロングは口を大きく開き、エネルギーをチャージする。
しかしそこにブルージョーが到着し、力任せに口を塞がれた。
「ストロングマン達! 今のうちに!」
『俺らを完全に忘れていたな。イゲルド人!』
思わぬ奇襲に動揺しながら8人のストロングマンが融合されて行く姿を見せつけられる。
それはまさに黄金の巨人。
禍々しいデッドストロングと比べてこちらはキズナの姿に7人の想いが合わさった黄金のプロテクターが所々に装着されている。
「私の名はない。だが言えることは1つ。お前を倒す者だ!」
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