相棒との別れ

戦闘が始まり、バーニは角からヒョウケツに向けて熱光線を放つ。

だがアツは全身を氷の鎧で覆い、攻撃を防ぎながら前進して行く。

爪で相手の腹を引き裂き、吹き出す血を凍らせ、突進からの鋭い角で首を貫いた。


さらに首の力だけでバーニの体を持ち上げ、完全に凍結させる。


「これでジエンドォォ!」


高く飛び上がりそこから急落下、地面に激突し怪獣の体は粉砕された。


犯人が戦闘部隊に捕まった姿を視認した彼女はジョンの死を痛み、咆哮を空へ響かせる。


「仲間の死を悔やむか。どうせ消える命だ。お前もあの世に送ってやろう」


「その声は! イゲルド人!」


アツの驚く姿に、次元の裂け目からイゲルド人が変身した最凶最悪の巨人、デッドストロングが姿を表す。


ヘドロを彷彿とさせる真っ黒のボディ。

ネチャネチャとした口には鋭い牙が存在し、光の消えた眼を充血させている。


「フハハハ! 私の最高傑作の力! とくと味わえ!」


高笑いを上げ、まるで粘土の様に右腕を鉤爪へ形を変え、同じく左腕を銃口に変化させた。


「あれは山田先生の時の!?」


動揺する彼女に容赦なく銃口を向け、光線を撃ち放つ。

だがこの程度なら凍らせることなど容易い。

冷気を口に集中させ、冷凍光線を放つ。


「無駄なことを」


なんと光線がアツの攻撃を躱すようにクルクルと曲がり抜け、そのまま腹に命中した。


「グワァー!?」


大きく吹き飛ばされ、尻もちを着く彼女に今度は右腕を竜の如く伸ばしながら鉤爪で切り裂きにかかる。

何とか立ち上がりアツは氷の剣を生成、腕を両断した。


「だから言ってるだろう。無駄なことをするんじゃない」


すぐに腕が修復し、後ろからヒョウケツの背中を貫いた。


血が溢れ出しながら、悲鳴を上げ倒れ込んだ。


眼の光が消え、冷気は失われた。


「フン、あとはこの遺体を消滅させれば………」


右腕を元に戻し左腕にエネルギーを溜めていき、必殺の一撃をくらわせようとする。

ストロングマンのデータには死を乗り越えることで更なる力を獲得すると言う作用があるらしい。

ならば完全に消せば問題はない。


放たれるはムクロの必殺光線、〈ザ・ビギニング・オブ・ジ・エンド〉だ。


「今度こそ1人目だ」


光線を放とうとしたその時。


「「させるかー!」」


ストロングマンとボウソウが駆けつけ、ダブルドロップキックをくらわせる。

吹き飛ぶデッドストロングだったが、自身の体をスライムの様に形状変化させた。


そして巨人の姿に戻り、背中から4本の腕が生えてくる。

〈ストロングリング〉からビームライフルに変化させ、2人に向けて連射した。


ストロングマンはバリアを展開し、柴は後ろで待機する。

復活の時間が迫る中、焦るイゲルド人は高く飛び上がりビームライフルを〈ストロングリング〉に戻す。

両腕にエネルギーをチャージし、再びアツの遺体に照準を合わせる。


「ベトレアール・ザ・フレンズ」


6本の腕から放たれる必殺の一撃。

これがどれか1つでも当たればヒョウケツの細胞は完全に破壊され、進化することはない。


「やらせるかぁー!」


そこに柴が巨大なドーム状のバリアを展開し、光線と激突する。

その隙にストロングマンが両腕で十字を作り、イゲルド人に照準を合わせる。


「バースト光線! フル・パワー!」


放たれる水色の光線。

視線がそちらに向くデッドストロングは動揺の悲鳴を上げる。


「しまった!? なんて言うと思ったか?」


ウソをつくほど余裕を見せる彼は〈ストロングリング〉を大量の爆弾に変化させ、彼女の周りを爆裂しバランスを崩させる。

光線の照準がズレ、ギリギリで外してしまった。


バリアにヒビが入り、このままでは悪魔の闇に飲まれてしまう。


「私が与えたダークストロングマンの力、不意にし後悔しながら消えるがいい!!!」


完全に消滅させると宣言しつつ出力を上げ、トドメを刺しにかかる。

その時だった。


ヒョウケツの体が光り始め、紛い物ではない真の正義の巨人と成る。


「しまった。時間を掛けすぎたか」


鋭い2本の角、光の点った眼に黒目が存在し、銀色ボディには黄色のラインがある。

右腕には〈キングブレスレット〉と言う〈ストロングリング〉の強化版を1つ装備しており、金色に輝いている。


アツはバリアを展開している8人目の巨人の姿に、自分が守られていたのだと理解する。

それもギリギリのところを踏ん張っている。

ここで負ける訳にはいかない。

冷気を再び展開し、〈ベトレアール・ザ・フレンズ〉を凍らせて行く。


「その程度で殺れると思うな!」


イゲルド人は技を解除し次元の裂け目を開き凍結を回避、地面からストロングマンを引きずり込む。


「まずい! イゲルド人は1人でも始末するつもりだ!」


柴は次元の裂け目に突入しようとするが時に遅し、完全に閉じてしまい侵入は不可能になってしまった。


「君にも仲間がいるんだろう。行ってやれ」


「でもストロングマンは?」


彼女の質問に対し、真剣な眼差しで牙をむき出しにする。


「僕が必ず探し出す。帰れる場所があるんだ。それは失ってはいけない物だよ」


その発言がアツの中で亀裂を入れる。

仲間の死に向き合わなければならない、そんな現実が悲鳴を上げさせる。


「ジョンはもう帰って来ない! それを受け入れて生きていくなんて怖いよ!」


涙が溢れ出し悲鳴を上げるその姿はその後SNSで拡散され、心配や拒絶などの賛否両論なコメントが載せられた。


一方戦闘部隊はレーモ星人と男性を確保し、能力を使用できないよう専用の腕輪を付け、〈ジライヤ〉本部に搬送した。


なぜこんなことをしたのかと尋問すると、会社をクビにされた逆恨みだったそうだ。


この事件を機により宇宙人に対しての警戒が強くなるのだった。

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