デッドストロング編
タッグファイヤー
「やっとだ。やっと完成したぞ」
5体のダークストロングマンを合成し、誕生した最凶最悪の巨人デッドストロング。
イゲルド人は完成したての巨人を体に取り込み、馴染むまでイスで眠りに着く。
丁度帰って来たビフォーグⅡはその姿に微笑みながら布団を掛ける。
(ゆっくりお休みなさいませ。ご主人様)
静かにその場から離れて行き、彼が起きるのを待った。
一方その頃アツはジョンと共にお昼休憩に入っていた。
「フー。ご飯も食べたし、これから何するの?」
彼女の質問に対して彼は真剣な表情でデバイスの画面を観せる。
そこにはマップが表示されており、赤いマーカーが複数存在した。
「最近怪奇じみた殺人事件が起きてるのは知ってるか?」
「ネットニュースで観たことがある。銃声が鳴った途端人が
この事件は1週間前、
目撃者の証言によるとどこからか銃声が聞こえ、その後悲鳴がしたそうだ。
事件は連続で起き、誰もとある企業の社員が被害者だと言うことは分かっている。
だが銃弾と薬莢は見つからず、さらに火元が不明のため警察が〈ジライヤ〉に事件解決を依頼して来た。
「俺の調べでは犯人は地球人1人と宇宙人1人のタッグだった。目的はなんであれこれ以上被害者を出さないためにも、逃走しているこいつらを捕まえなきゃならない」
デバイスに表示された人物は30代男性と20代女性に偽装した火炎宇宙人レーモ星人だった。
「そこまで調べ上げてるなら戦闘部隊に出動してもらえばいいんじゃないの?」
左肘をテーブルに着け、拳を首に当てるアツにジョンはため息を吐く。
「それはそうなんだけどな。隊長が君に頼んだ仕事なんだ。戦闘部隊を頼るのは良いが、すべて任せるのはやめてくれと言われちまった」
「つまり協力はして良いんでしょ。手分けして探せば見つかる確率も上がるじゃん」
2人が話し合いをしていると、ジョンのデバイスから着信音が鳴り始める。
画面を確認すると、隊長の名前である〈
すぐに緑色の受話器ボタンをタップし、画面に耳を当てる。
「もしもし、団重です。なにかありましたか?」
『依頼の犯人が監視カメラに映ったそうだ。場所はデバイスに送っておく。これ以上被害者を出すな』
「では戦闘部隊にも協力を
ジョンの
『ただし、戦闘部隊にも任務を任せている。人数は限られるがそれでも良いか?』
「分かりました。よろしくお願いします」
『健闘を祈る』
通話が切れ、2人は首を縦に振った。
戦闘部隊から集められた5人と共に大型自動車に乗り込み、目的地に急行する。
アサルトライフルに偽装したビームガンを両手に収め、武装した彼らの姿に、アツは改めて敵にしたくないと感じ、仲間だと思うととても心強かった。
その中には自分と歳が変わらない女性兵士の姿もあり、レスリングの道を閉ざされた未練で心がいっぱいになる。
(私はあの人の事羨ましいって思ってるのかな? 厳しい訓練をやり遂げた人間に嫉妬してるのかな? だとしたら私ってクズだよね。今さら戻れないのに………)
嫉妬が息苦しさを起こさせる中、目的地に到着し大型自動車は路肩に駐車した。
全員外へ出ると、ジョンが戦闘部隊を整列させる。
「戦闘部隊の皆さん。危険なのは承知の上でしょうが、この事件を終わらせるため、よろしくお願いします」
頭を下げる彼に、一同敬礼する。
「協力を受けたんだ。我々も全力で支援する。任務開始!」
副隊長の号令に兵士達は一斉に出撃し、犯人を捜索し始める。
「アツ、俺達も行くぞ」
「うん」
合計6人の捜索隊がそれぞれ辺り周辺を探しに向かう。
犯人は車の免許を持っていないためそう遠くは行けないはず。
ジョンとアツは万が一に備え小型ビームガンを構えながら、警戒と前進を行う。
するとどこからか銃声が聞こえる。
それは本物の銃声ではない。
彼が訓練で使った拳銃の物とは微妙に違うと感じる。
「これは録音された…………」
その続きを言おうとしたその時だった。
なんと突然ジョンの全身が燃え上がり、叫ぶ間もなく
背中から倒れ、仲間の死亡を確信したアツは犯人に対しての恐怖と怒りが入り交じり、拳に力が入った。
銃声が鳴ったと言うことはつまり相手は近くにいる。
彼が伝えようとした言葉を振り返る。
あれはなにかしらの機械で録音した物を流した後レーモ星人の自然発火能力で対象を
(ストロングマンの力が変身しなくても使えれば。うーうん、使ってみせる)
全身から冷気を放出させ、この辺りを完全に凍結させる。
すると左側の曲がり道から警報が鳴る。
おそらく犯人のデバイスが急激な温度変化に耐えられず誤作動を起こしたのだろう。
(そこか!)
全速力で走り出し、足で氷を砕きながら左に曲がる。
そこにいたのは凍りついた犯人である男性とそれを溶かす女性に扮したレーモ星人だった。
デバイスを取り出し、戦闘部隊に現状を報告する。
「こちら高市! ターゲットを発見! 位置情報で現場に来てください!」
アツの連絡により戦闘部隊が全員位置情報を確認しながらこちらに向かっていく。
それに対してレーモ星人は危機感を感じ、カバンから怪獣カプセルを取り出す。
そして小型射出機に装填、空に向けてトリガーを弾く。
現れたのはマグマ怪獣バーニ。
冷えた溶岩の様な黒き鱗があり、鋭い眼がギョロリと動き出す。
頭にはトゲトゲしい角が赤く発光し、主人を守るためアツに向かって紅色の光線を放つ。
彼女はヒョウケツに変身、低い姿勢を取りバーニに向かって怒りの咆哮を上げながら冷気を放つのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます