友人を守るために

今日は桜の休日。

幼なじみであり同じ高校の女友達、さっちゃんこと皿言光さらいひかりとデパートでの買い物を楽しんでいた。


「さっちゃん、最近学校にいけなくてごめんね」


「事情は知ってるから謝らなくって良いよ。それにしても桜ちゃんが〈ジライヤ〉の部隊に配属になるなんて剣道部での部活動が身を結んだんじゃない?」


「そっ、そうかなぁ? えへへ」


光には〈ジライヤ〉の戦闘部隊にスカウトされたと伝えてある。

桜はウソを吐いているようでとても心苦しかった。


「まったく。なんで俺達が皆国を監視しなきゃいけないんだよ」


「仕方ないよ。桜姉ちゃんの友達が悪の巨人かもしれないって隊長が言ってたもん」


大と丈が不満そうに2人を監視しているのには理由がある。


それは数日前、会議中に映された1本の映像。

それには光が異空間に飲み込まれる姿があった。


それを受け桜には光に近づくのは避けるようにと言ったのだが、その前に遊ぶ約束をしていたらしく、命令を無視し今に至る。

2人が移動するところを見逃さず、視界に入れ移動する。

買い物を続ける彼女らにバレないように慎重にだ。


『仲良いなぁ。あの2人』


ショルダーバッグのポケットからブルージョーはメインカメラで映像を本部に送りつつ、感想を述べる。

その後桜と光はゲームセンターのUFOキャッチーで景品を取り、フードコートでハンバーガーセットをお昼ご飯として頂いた。


「ご馳走様〜。さっちゃん、次どこ行く?」


「そうだなぁ。そう言えばここの近くに遊園地があったでしょ。学生引きがあるからそっち行かない?」


「良いね良いね。休憩したら行こうよ」


笑みをこぼす2人。

悪に染っているとは思えない光の普通過ぎる言動や行動に大は逆に恐怖を感じた。


しばらくして移動し始めた彼女達を追って大と丈はバレないよう歩き出す。

デパートを出て遊園地に向かう最中、光が足を止めた。


「どうしたのさっちゃん?」


「ごめん先に行ってて私トイレ行きたくなっちゃった」


手を合わせて謝る彼女に桜は微笑みを返し、親指を立てる。


「じゃあ入口の近くで待ってるからね〜」


2人が分かれてしばらくして、ブルージョーは真獣の気配を光から感知した。


『攻撃が来るぞ!』


大は丈を担ぎ、いきなり飛んできた光弾を躱した。


「やっぱりお前が悪の巨人か」


「そう。桜ちゃんが学校に来なくなった理由だって全部知ってる。怪獣退治のために人体改造したんでしょ? そんなの許されるはずがない。いや、私が許さない!」


事実を突きつけられ、歯を食いしばる。

確かに桜をストロングマンにしたのは〈ジライヤ〉だ。

光からすれば幼なじみを突然化け物に変えられたことを許すわけがない。


「俺は初めて皆国にあった時、彼女の事を認めたくなかった。ストロングマンと同等の存在としてはな。でもなぁ、共に戦っていくに連れて分かったことがある」


桜との日常はとても気持ちが安らぎ、特に食事の時間はそうだった。


いつの間にか彼女を否定されることに苛立ちを覚えていた。


「俺がなんであろうとあいつの笑顔を守らなきゃいけないってな」


自分の本当の想いを伝える。

しかしその言葉が光の逆鱗に触れてしまう。


「ふざけるなぁー!!!」


叫びと共に彼女は右拳を掲げ、悪の巨人に姿を変える。

それは6本の腕を持ち、〈ストロングリング〉を全身に装着している。

さらに黒いボディには瘡蓋かさぶたを思わせる装甲がちらほらと存在し、鋭い牙が狂気によってよりギラギラと輝いている。

名はアシュラ。

悪魔と化した彼女はリングをバズーカに変え、大達に向けて引き金を弾く。


彼らのピンチにブルージョーは巨大化し、シールドでミサイルを防いだ。


『丈! 早く乗り込め!』


「うん!」


丈は腹部分のハッチからコックピットに乗り込み、ビームサーベルを構える。

バズーカを〈ストロングリング〉に戻し、光は咆哮を上げ今度は剣6本に変換する。


「グワーーー!」


走り出した彼女が振り回す剣をテレポートで躱し、丈は後ろからビームサーベルによる攻撃を繰り出す。

だが行動を予想していたかの様に地雷が起動、爆発によって吹き飛ばされるがブースターで上空からゆっくりと着地した。


後ろを振り返るアシュラの前にストロングマンが現れ、さらに苛立ちが加速する。


「あなただ! あなたがもっと早く地球に来てくれれば!」


「地球人には戦力が必要だ。だからあえて来なかった」


冷静に尚且なおかつ正直に発言すると、火に油を注いだようにアシュラは怒り狂う。


叫び声を上げながら剣をデタラメにブンブンと振り回すと、念力で宙に浮かされる。


「今だ青き戦士!」


「わっ、分かった!」


ストロングマンの合図で丈はビームサーベルを振り上げ、ブースターで一気に距離を詰め攻撃を仕掛ける。


(殺られる!?)


光が死を確信した瞬間、どこからか声が聞こえる。


『お前の友への想いはそんな物か? 悪魔に成るのだ光。そのために代償を払ったのだろう』


それは悪の巨人が発した物。

促された彼女は球体状のバリアを展開、光の刃を防いだ。


弾かれた丈達は後ずさりし、バランスを崩す。


「私はあなた達を倒す! 桜ちゃんを怪物に変えたあなた達を!」


バリアを解除し、6本の剣を念力でブルージョーに向けて飛ばす。


「そんな物で!」


テレポートでストロングマンの左側に移動し、ビームサーベルを収納、ビームライフルに切り替える。

青き戦士はアシュラの弱点をスキャニングしていると、〈バルウル〉がその場に着陸する。


「待たせたな」


「子絵さん遅いよー」


大がようやく合流し、改めて3人は戦闘態勢に入る。

分身を展開し、腕に搭載されたミサイルを発射した。


その時だった。


「ダメー!」


ブソウに変身した桜がミサイルを刀の一刀で撃ち落とし、光を庇った。


そしてそのまま彼女をお姫様抱っこし、飛び立ったのだった。

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