報われない才能と努力
高市アツ。
彼女はレスリングの選手生命を絶たれたことに未練を感じていた。
確かに怪獣との戦いは人類にとって恐怖であり、排除しなければならない物だ。
しかしそれでも自分が戦う場所はここじゃないと感じている。
そんなことを言えないまま怪獣の出現情報を聞き、パートナーである日本人とアメリカ人のハーフの男性、
一方悪の巨人の1人は自分の変身者を探すため捜索していた。
そんな中見つけたのはアツのレスリング部の顧問だった女性、
彼女はアツが〈ジライヤ〉の方針でやめたことがとても悔しかった。
他の教え子の事もあるため諦めるしかなかった。
それに目を付けた悪の巨人は次元の裂け目を休憩中にエナジードリンクを飲んでいる彼女の目の前に開く。
「なに、これ?」
『私はお前の望みを叶えに来た。諦めていた教え子である高市を連れ戻しに行こう。さあ、入るがいい』
一種の催眠状態になった彼女は次元の裂け目に入り、体を黒き左手に包まれ、取り込まれる。
感情が肉体を変化させ、名無しからタイバツと言う名を手にし、着々と進化を繰り返すのだった。
一方でヒョウケツとなったアツは地底怪獣ブーブの放つ光線を伝って氷漬けにしていた。
「これで最後! ブレイクレイン!」
上空を見上げ口を大きく開けると、光弾を放ち、それが枝別れになりブーブの体を串刺しにし爆散させた。
「やったな高市さん!」
ジョンは怪獣倒したことを喜びはしゃぐ。
「……………」
「どうした? そんな黙りこんで」
「とにかくだ。変身を解除して昼ご飯にしようぜ」
ハッチを開こうとしたその時、上空から悪の巨人、タイバツが飛来する。
それはまさに光の怒りを体現したように炎を印象付ける鱗があり、とてつもなく長い爪、赤い眼、黒いボディにはギザギザの赤いラインが入っている。
「あれは向井さんがやられた巨人の1人。パワーアップして来たのか」
ジョンが戦闘体勢になると、タイバツは姿勢を低くしながら真っ先にアツを右手にある5本の爪で貫きに掛かる。
それに対してヒョウケツは姿勢を低くし、冷気で槍を形成、右手に持ち防御の体勢を取る。
爪を跳ね除け左拳でのカウンターを仕掛けるが、尻尾で弾かれ逆に回転蹴りを頭にくらう。
「うぁー!?」
彼女はあまりの蹴りの力に悲鳴を上げながら吹き飛ばされ、ビルに激突した。
窓が割れ、オフィスが倒壊する。
「高市さん!? この野郎!!」
パートナーを傷つけられ、怒り心頭とジョンは〈バーチャマ〉のロケットパンチをタイバツに向けて放つ、が、爪で切り裂かれ爆裂し、道路に穴を開けた。
「やっぱりその巨人が………アツなのね………」
ビルから立ち上がり、息を荒くするアツはその声でようやく大事な人が悪の巨人の正体だと気づく。
「その声は、山田先生!?」
「あなたは優秀な生徒だった。世界にも通じるために努力も怠らなかった。そんなアツの選手生命を奪い、化け物にした〈ジライヤ〉を許さない!!!」
怒りが限界を振り切り、光は咆哮を上げ姿勢を再び低くする。
「ストロングマンが言っていたわ。人間に戻すには、勝利をもぎ取らなければいけないとね!!!」
「山田先生! それはストロングマンじゃありません! 先生は騙されているんです!」
「アツをレスリング部に復帰させられるならどっちでも構わない!」
狂ってしまった悪の巨人はもう止めることはできない。
爪を立て、ヒョウケツに向けて突進して行く。
「俺の事を忘れるなよ。イカれたティーチャー!」
背中に搭載されたミサイル弾をジョンは全弾放ち、光の動きを止める。
そこにストロングマンが駆け付け、念力で彼女を吹き飛ばした。
「正気を取り戻すには悪の巨人から引き剥がすしかない。行くぞ2人共!」
光の巨人に感化され、アツとジョンもタイバツに向けて走り出す。
「私の邪魔をするな!」
立ち上がりながら光は咆哮を上げ、口を大きく開ける。
「カオスフラッシュ!」
放たれる太い虹色の破壊光線。
これが決まればこの街が半分吹き飛ぶだろう。
「バースト光線!」
「シルバーブレスター!」
そうはさせまいとヒョウケツとストロングマンは光線を撃ち放ち、お互いぶつかり合う。
「俺の事も忘れるなよ!」
その隙を突きジョンはジェット噴射でのタックルをタイバツに命中させ、バランスを崩させる。
「「今だ! ウォー!」」
2人が出力を上げ、押し上げていく。
だがバランスをすぐに立て直され、すぐに押し負けそうになる。
「なんて力………」
「諦めるな! 大事な人を救いたいんだろう!」
光線の出力をさらに上げ、道路が割れるほどの決戦を繰り広げる。
口が裂けそうになるほど大きく開け、ビルの窓ガラスが割れていく。
(こうなったら、やるしかない)
アツは全身の冷気を口に集中させる。
すると光線がとてつもないスピードで凍っていき、〈カオスフラッシュ〉までもが氷と化す。
それに続いて悪の巨人の体が一瞬のうちに凍りつき、氷の像となった。
怨念達が氷を破壊しようとするがその間に氷の柱となった光線を噛み砕き、高く飛び上がる。
その高いジャンプ力でタイバツの背後を取った。
「フリーザークラッシュ!!!」
勢いよく彼女に抱きつき、力任せに粉砕した。
だが怨念達の復讐心と光の未練が重なり合い、すぐに再生する。
「私は………必ずあなたを………世界に送り出してみせる………」
激痛に耐えきれず咆哮を上げながら闇に消えた。
「吉田先生!」
どこかにいなくなった教師に、彼女は苗字を叫ぶ。
「これ以上はメディアに情報を与えるだけだ。一旦撤退するぞ」
ジョンの発言に怒りを覚えつつ、〈ジライヤ〉の都合に縛られる彼の事情を汲み取り、変身を解除、〈バーチャマ〉の開けられたハッチから乗り込む。
ジェット噴射で〈ジライヤ〉に戻っていく姿を確認し、ストロングマンも空へ高く飛び上がろうとする。
「グッ………」
だがボウソウから受けた〈ゴーストリバース〉のダメージが残っており、膝を着いて黒髪少女の姿になる。
「ちょっと………無理しすぎたかな………」
彼女は足を引きつらせ、転んでしまう。
「絶対に………ここで死ぬわけにいかない………この星は………みんなで守らなきゃいけないんだから………」
再び立ち上がりフラフラになりながらも、息を切らしながら歩き出すのだった。
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