ゴーストリベンジャー

丈とブルージョーはストロングマンに選ばれ、〈ジライヤ〉からも認められている。

ただそれをよく思わない人も中には存在する。

母親がその1人、勉強は家でやっており、成績は平均点をちゃんと取っている。

しかし親にとっては可愛い息子、彼を戦わせるなんて本当はさせたくなかった。


休み時間、怪獣が出現したことを伝える警報がデバイスから鳴り、小学校から出る。

しばらくすると道を阻む様に何やら巨大な次元の裂け目が出現する。


「あれは確か陣さんが言ってた悪い宇宙人の作った危ない道だ」


『気をつけろ。何が出てくるか分からないからなぁ』


戦闘態勢に入るためブルージョーは巨大化し、コックピットのハッチが閉まる。


「これは隊長に教えないと、真獣とかが出てくるかもしれない」


デバイスを操作し、隊長の電話に繋げる。

着信音が鳴る中で待っていると、突然砲弾が飛んできた。


「あぶ!?」


思わず驚きの声を上げつつ、シールドで攻撃を防ぐ。

敵の位置を確認するため、飛んできた方向を見つめる。

そこでタイミング良く隊長との電話が繋がった。


『丈君どうしたんだい? なにかあったのかな?』


「悪い宇宙人の次元の裂け目が出てきたんだよ! このままだと学校が危ないんだ!」


危機的状況を知らされ、さらにモニターにブルージョーのメインカメラからの映像が映し出される。

そこにはかつて戦争で沈んだはずの戦艦が禍々しい姿で次元の裂け目からゆっくりと現れた。


「あんな物が。すぐに陣隊員と岩歯隊員を向かわせろ」


「Bブロックの怪獣はどうしましょうか?」


オペレーターの質問に、膝に右手を静かに添える。


「緊急事態だ。鈍木隊員と向井隊員に対処を任せるしかないだろう」


同時に人造ストロングマンを2体出すのはリスクがある。

だが怪獣も真獣も出ている状況でどちらかを放置する訳にはいかない。


「分かりました」


隊長の命令に出撃指令を出すと、〈ガンマ3号〉と〈アンナイ〉がそれぞれの目的地に出撃した。


〈アンナイ〉を走らせる雷はサイレンを鳴らし、車に退いてもらう。


「こちら〈ジライヤ〉の車両です。この付近に怪獣が出現しています。速やかに避難をお願いします」


拡声器で高美は市民に避難を促しつつ、変身の用意をしておく。

しばらく走らせていると、小学校に到着する。

車を止め、降りるとブルージョーが苦戦しているのが確認できる。


「おいおい、ありゃ戦艦じゃないぞ」


雷はあまりの禍々しさに目を丸くする。

メカニック担当だから分かる。

あれは戦艦ではない、幽霊船だ。


構造からして飛行できるような仕掛けはない。

だがそれを可能にしているのは見れば分かる。

次元の裂け目から半分ほど出ている機体は黒く、怨念の様な粒子が漂っている。

4連式砲台の照準をブルージョーに合わせ、砲弾を射出する。

それをシールドでなんとか防ぎ切り、丈はビームライフルを幽霊船に連射した。


が、バリアを展開され傷1つ付かない。

そんな時高美はダゲキに変身し、彼らの前に立つ。


その姿にストロングマンである少女は急いで正義の巨人に成ろうとする。


(あの真獣は彼女だけでは勝てない。私も戦わないと)


体に光を宿し姿が変わる直前、突然飛んできた拘束具が首に取り付けられ、ランプが点灯すると放電を受け変身ができない。


「なに………これ………」


膝を着く彼女の前に現れたのは、倒したはずの南の姿をしたビフォーグだった。


「どうしてあなたが………」


「私はただの亡霊。今現れた真獣の名は骸船真獣むくろせんしんじゅうコバチ。主人が宇宙の沈没したり廃棄した戦艦達と戦死した者達の魂を融合させた真獣。ストロングマン、あなた達が倒した怪獣や真獣、私も含めその魂もコバチの素材に成り、復讐しようとしているのです」


ビフォーグのイゲルド人への信仰心は本物であり、その邪魔をする者を排除するのは当たり前だと確信している。


「さあ見るのです。1人目のストロングマンが倒される瞬間を」


この拘束具を外さない限り変身できない。

少女はただ戦いを見届けるしかなかった。


一方そんなこととはつい知らず、戦闘を続ける4人。


〈アンナイ〉の武装であるビームランチャーを雷はコバチに向けて攻撃するが、バリアに阻まれ、逆に怨霊が3体現れ襲撃をくらう。


「この化け物が!」


叫びを上げ、親指で赤いボタンを長押しする。

敵が車のボディを触れかけた瞬間、バチバチと静電気が発生し、全身を燃やした。


「ふん、〈ジライヤ〉の科学力を舐めるな」


鼻を鳴らし、「フハハ」と笑うと〈アンナイ〉を降り、避難の誘導を開始した。


コバチの放つ砲弾を筋肉操作で耐えながら、高美は高く飛び上がり、ドロップキックを繰り出す。

だがしつこいようにバリアが行く手を阻む。


「こんな物ー!」


破壊しようとするが、強度が高く跳ね除けられてしまう。

その光景にブルージョーは分析を開始する。

デルタホーンの数字の羅列がメインカメラのレンズに映し出される。


『あいつは攻撃に対してバリアを出している。しかもその範囲は広いが故に中に入ってしまえばこちらのもんだ』


「じゃあテレポートを使えば良いんだね。行くよブルージョー!」


『おう!』


2人はブースターで上空に飛ぶと、テレポートでバリア範囲外であるコバチの船上に馬乗りになる。

ビームサーベルを逆手に持ち砲台に次々と風穴を空ける。

それに反応し、幽霊船が怪獣の怨念を召喚、彼らに襲わせる。

そこにダゲキが割り込み、口から光弾を連続で放つ。

怨念は光弾に触れた瞬間悲鳴に近い鳴き声を上げ消滅した。


「これで、終わりだー!」


ビームサーベルの出力を全開にし、コバチを左側から両断していく。

怨念達がブルージョーを破壊しようと向かって行くが、彼女の放つ拳をくらい消滅していく。


真っ二つになった真獣は怨念と共に次元の裂け目へと離脱し、被害を出したまま消え去った。


「倒したのかな?」


丈の質問に対して高美はゆっくりと近づいて行き、首を横に振る。


「いいえ。多分あの真獣は生まれ変わってまたやって来るわ。その時はまた頑張りましょうね」


怨念の集合体であるコバチがあんな簡単に倒されるわけがないと彼女の中で確信する。

それが的中したのはまた違う戦いであった。




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