イーターオブバレット

「あのさ、霧神さん」


「なんでしょう」


英二が恥ずかしそうに表情を真っ赤にしながら質問しようとすると、冷静に十気は〈ガンマ1号〉を操作しつつ、発言を聞き取ろうとする。


「あれなんだな。変身したら服が破けるとかなくて正直ホッとしてるよ」


「巨大化すると言ってもロボットに乗り込んでいるのと同じような物です。慣れていけば自由に操ることができるでしょう」


そう言っている間に〈ジライヤ〉の基地に到着、車輪を出し駐車するレーンに機体を着陸する。

ハッチが開き足場が出ると、2人は地面に降り立ち、基地の中にいる作業員達に挨拶しつつ、司令室に向かった。


司令室にはストロングマンの変身者であろう5人と、そのパートナーと思われる5人がイスに座って待っていた。


「君が蘭打英二君ですか。私は向井大牙むかいたいが、職業はマジシャンです。よろしくお願いしますね」


黒いスーツを着た40代の男性、大牙は立ち上がり彼に握手を求める。


「はい! よろしくお願いします!」


握手を交わしていると、隊長としてニュースでも度々出ている50代男性が立ち上がり、咳払いをする。


「全員揃ったようだな」


英二と十気に呆れたような視線を向け、話を始める。


「これから君達には怪獣から人類を守ってもらう。支給された薬品は既に打ってもらっているだろうが、ストロングマンの変身能力、それを使えるようにする物だ。戦いには被害を最小限にするため怪獣1体に付き1人のストロングマン変身者とそのパートナーだけで出撃してもらう。もちろん最大限の支援は行う。以上、解散」


その号令に司令室から6組は各々の場所に移動していく。


「もうお昼ご飯じゃん! ここに売店とか食堂はないのー!」


赤髪の女子高生が騒ぎ出し、パートナーである黒髪の男性が苛立ち、貧乏ゆすりをし始める。


(こいつがあのヒーローに成り代わる奴なんて信じられないぜ。まったく、子どものお守りはあれほど嫌だと言っておいたのによぉ)


彼の名は子絵賀大こえがだい、〈ジライヤ〉のパイロットの1人で、若くして怪獣との戦闘を多く経験し、ストロングマンとの関係を人一倍大事にしていた。


突然現れなくなった戦友と、同じく現れた相棒厄介者のアンバランス差にイライラが加速する。


「あぁ、売店なら俺が連れてってやる」


ため息を吐きながら大は彼女を誘導する。


「ホント! 子絵ちゃんやっさし〜い」


彼女の名は皆国桜みなくにさくら、高校2年の剣道部所属、子供っぽい性格でなおかつ食いしん坊、全国大会では1位を取るほどの実力者だ。


「私チョコチップメロンパン食べたいな〜。子絵ちゃんはなににするの?」


「うん俺か? 俺は鮭の親子丼かな」


大の聞きなれない食べ物の名前に、桜は目をキラキラさせる。


「何それ! すごい美味しそう!」


「お昼しか出なくて数量限定だからな、急いで行かないと食べれねえぞ」


「じゃあ頑張って売店に行こう。おー!」


駆け足で2人は売店に向かい、丁度2つあった鮭の親子丼を購入する。


テーブル席に座り、割り箸を割ると、蓋を開け桜はまずサーモンの刺身を頂く。

油が乗りプリっとしたその食感に、箸が進む。

さらにイクラもプチプチと弾け、ご飯に絡み合う。


「子絵ちゃんこれすっごく美味しい!」


「それは良いが早めに食べ終えてくれ。いつ怪獣が出るか分からないからな」


「ご馳走様でした!」


確認すると容器の中が空になっており、彼女はゴミ箱へキレイに分別した。


その姿に大は急ぎで腹を満たし、容器と割り箸を分けて捨てる。

その時だった。


警報がなり、アナウンスが流れ始める。


『怪獣が港に出現。子絵賀隊員と皆国隊員は出撃してください』


「俺達の出番だ。やれるな」


「任せておいて。怪獣なんてコテンパンにしてやるんだから」


彼らは警報が鳴り響く中、2足歩行型対怪獣兵器〈バルウル〉に乗り込む。

その顔はまるでザリガニの様で、腕はハサミになっており、バルカン砲が搭載されている。


「〈バルウル〉、出撃します」


〈バルウル〉のジェットで空へ飛び立ち、港に向かうのだった。


2分で到着した大と桜の前にクジラの様な姿をした四足歩行の怪獣ダグーが口から水弾すいだんを放ってくる。

すると〈バルウル〉は分身を形成し、スラリと攻撃を躱した。


ダグーは分身に混乱し始め、水弾を乱射し始める。


「今だ。変身しろ皆国!」


「オーケー。行くよー!」


桜の体が発光し、巨人ブソウに姿を変える。

カサネと違い眼が十字であり、黄色のラインが2つになっている。

さらに大きな違いは全身に付けられた大量の腕輪、〈ストロングリング〉だろう。

これは様々な物に変化することができる物でブソウの由来である。


「一気に決める! 友達のさっちゃんが言ってた。実弾はすごく痛いって!」


そう言って〈ストロングリング〉をすべてガトリング砲に変化させ、ダグーに照準を合わせる。


「行っけーーーーー!!!!」


乱射される大量の銃弾。

ダグーの硬い皮膚を貫通し、内蔵を撃ち抜いていく。

怪獣はあまりの激痛に咆哮を上げ、大量の血を溢れださせる。


「追い討ちの光線、撃っちまーす!」


口を大きく開き、撃ち出される必殺の一撃。


「ウェポニックバースト!」


白き光線がダグーに命中、全身を包み込み、爆散した。


ガトリング砲を〈ストロングリング〉に戻し、倒した興奮で吠える。

すると大が操縦する〈バルウル〉が右手で肩を叩いてきた。


「なに子絵ちゃん?」


「さっさと変身を解除しろよ。早く帰って売店で美味しい物探ししようぜ」


「おー! 分かった! すぐに行こう!」


桜は〈バルウル〉の後ろにあるハッチに向けて変身を解除し、乗り込むとシートベルトを付け、基地に帰還するためジェットで飛んで行くのだった。

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