第42話 大森 和代(おおもり かずよ)

 あんな無茶な繊維設計だと思わなかった

 触るだけで冷たくなる繊維なんて…


 いや、私が甘かったのだろう

 老舗と呼ばれる企業に何かを…と

 とある企業からの誘いに乗ってしまった


 研究資金はうちでアイデアが向こう

 言いたい放題言われ一向に何も進まず資金だけが…


 半年ほどたった時に向こうが『これ以上進歩が無いなら撤退します』と


 は?


 うちの資金を使いたいだけ使って何言ってる?

 今更何を…

 だがデータだけは渡さないよ


 しかし使い過ぎた、融資か縮小化しかないが、恐らく融資は無駄に使った研究資金で無理だろう…


 あれ?もしかしてこれが狙い?うちの弱小化?


 あ~もしそうなら終わった~


 お母さんごめんなさい、私が馬鹿だったわぁ~


「お母さん行ってきます」


 あ!忘れてた娘の為に買ってあった服

 交流会だったわね


「行ってらっしゃい」


 しかしどうする…

 融資は?増資は?縮小?自己退社募る?ふざけんな!


 でもどれが正解?

 どれか選ばないと…我が社は


 くそっ!

 誰か何とかしてよ!


「ただいま~」


 あっ、うん。今は娘との時間を楽しもう


「お帰り。交流会どうだった?」


 まぁたとえ男子が居ても壁の花だったのだろうは想像できるが


「お兄ちゃんが出来た!お母さん、コレお兄ちゃんから」


 はぁっ?

 渡された名刺…riliKs代表取締役社長【高柳 冬夜】


 え?りりくす?ってあの?えっ?本物?


「えっと…優実?この名刺って本物?」


「うん、冬夜お兄ちゃんに貰った」


 お兄ちゃんって事は男性よね?優実が?


「んっとね、お母さんの事ずっとずっと心配だっんだ、元気なかったし困った顔してたし、だけど今日の為にこのお洋服で、行ってらっしゃいって…でね会場の隅っこに居たんだけどそこで冬夜お兄ちゃんが声を掛けてくれたの!」


 へっ?


「でね!お母さんの事心配してる私の事心配してくれて、お母さんの事相談したらこの名刺渡されて、お母さんとお話したいって…大丈夫だからって言ってた」


 それってまさか私がこの連絡先に?

 現状を伝える?


「えと、優実。今日は楽しかった?」


「うん♪」


 我が娘ながらこんな笑顔は初めて見た


「それでこの人…は、何て言ってた?」


「ん?さっき言った通りだけど?」


 んーつまりはこの人に連絡しろって事?


「えっと、私から連絡すれば良いのかな?」


「うん」


 …娘の語彙力が足りない事に今更ながら後悔したが藁にも縋るこの状況だとそうも言ってられなく


「ねえ優実。この人はどんな人だった?」


「凄く優しくてお兄ちゃんだった、でも中学生だった。あっコレ見て」


 見せられたスマホの写真はほんとに姉弟ぽかったが…これが中学生の男子?


「お母さん。きっと冬夜お兄ちゃんならお母さんも笑顔にしてくれるよ!お兄ちゃんだって安心してって言われたし問題無いって言ってたよ?」


 中学生男子でリリクスの社長に相談?


 我が社の事情を説明する?取り敢えず連絡だけ?


 優実の大丈夫を信用する…として、メールだけでもしておこうか

【御世話になってます。大森化繊の代表をしております大森和代と申します。この度、娘からの話を聞き連絡させて頂いた次第です。ですが、娘からの話を聞いても要領を得ずこうして連絡をさせて貰った次第ですので、御社及び貴方様の意見を御聞き出来ればと思い連絡させて頂きます。何卒ご連絡の程宜しくお願い致します】


 こんなもんか…ってか男性に送った初めてのメールが業務連絡って悲し過ぎない?今更だけど…あ?でもこれって個人情報だよね?えっ?あの男の子の!?すんなり渡されたけどコレって超が付くお宝じゃない?…ごくり


 ピコン

 はやッ


【早速の御連絡頂き誠に恐縮です。御息女から少しばかりの事情を御聞きし、我が社と御取引きの有る御社の事情を少々調させて頂きました。其の上で力添えと今後の事を思いまして、不躾かと思いましたが御息女に言伝をお願い致しました。御社、我が社共々寄り良い発展の為にお力沿いをお願いしたく存じます。今後御社の担当決まり次第その者がご連絡を差し上げると思いますので よろしくお願いいたします。 拙い文章でメールにて失礼致します】


 ふむ…えっ?

 確かに業務連絡だけれど、これが男子中学生のメール…?


 だけど、もしかして‥‥‥


























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