第41話 進路相談
「おはようございます」
咲夜に腕を組まれ家から出たら稽が居た
「おはよー稽ちゃん」
「おはよう稽。で、どうしてうちに?」
「えっと、咲夜様に仕えるなら常にお側にと思いまして」
真面目かよ!?
この子意外と面倒くさいタイプかもしれん
「えっとな、お嬢様つっても面白半分で言い始めた事だからそんな畏まらなくてもいいんだぞ!咲夜の事は友達だと思ってくれれば良いからな」
「そーだよ稽ちゃん。私達はもう友達だよ!」
「えっ?でも、昨日もお母さんから失礼の無い様にとかうちは高柳家に生かされてるとか色々言われて…それで…えっと…」
‥‥‥色々すげー大袈裟だなおい!
「あのな?色々と難しく考えなくていいからな!糸井さんもそのうち慣れるだろうからゆるく行こう!ゆる~くな!じゃあ行こうか」
「あっはい!」
朝っぱらから堅苦しい挨拶されてもメンドクサイからね、後は咲夜がなんとかするだろう
昇降口で咲夜達と別れ教室へ
ドアを開け「おはよー」と、声を掛けるが
‥‥‥‥‥
既に教室に居る数名が互いに顔を見合わせ沈黙する
あれっ?俺って無視されてんの?えっ?いじめ??等、絶対にありえない事を考えてると
「お、おはよう高柳様」
様!?
ってか俺って今までクラスメイトと会話した事無かったわ…そんな状況で良く学校来れてたな…今までの俺?すげー強メンタルだなおい!尊敬するわ!
「おはよー。それから様は要らないぞ!」
うん。名前も知らなかったわ…今更聞けねえしな…ま、そのうち慣れるだろ…ドンマイ今までの俺!
その後良く解らない緊張感がクラス内を包むのであった…
昼休みになり弁当を…って咲夜が持ってるんだったな…
取に行くかと、腰を上げた所で
「お兄ちゃんお昼食べよー」
と、咲夜襲来!にクラス内全員からの注目が?
「ん、此処で食べるのか?」
「ん~食堂行く?」
「そうだな…どこか涼しい所は有るか?」
「だったらやっぱり食堂かな」
「じゃー行くか」
「うん!」
教室を出て食堂に向かうが何故かざわざわとクラスが騒がしかったのは気のせいだろう
しかし何処へ行くのにも腕を組んで来るのは如何な物か?ぶっちゃけ歩きにくいぞ妹よ!暑くないのだろうか?俺は暑いぞ!涼しい所…早く食堂へ行こう
ほぅ此処が食堂か…って此処も初めてか俺!?ほんと何してた俺?
おっ?自販機発見!
「お茶買ってくるから咲夜は席確保な」
「うん、ありがとお兄ちゃん」
お!電子マネー使えるじゃんナイスだ自販機!財布持ってきて無いしな…
スマホでピッとな。さて咲夜は何処だ?
ウロウロキョロキョロしてたら何故か静まり返った食堂内の窓際から声が
「お兄ちゃんこっちー」
と、咲夜が手招きしてるのを発見!
ってかなんでみんなこっち見ながら固まってんだ?
首を傾げながらも『まいっか』と咲夜の元へ向かい食事を始める
『でねー』、『それでねー』と他愛もない会話に相槌を打ちつつも、ほぼ毎日顔を合わせ一緒に居る時間も多いのに会話の尽きない咲夜に尊敬の念すら覚えるよお兄ちゃんは
食事も終わり教室へ戻ろうかと思い席を立った所で咲夜から
「放課後も迎えに行くからね~」と
ふむ‥‥‥
「放課後は職員室に用が有るから待っててくれるか?」
「うん。わかったー」
「じゃ、用が済んだら連絡するな」
「はーい。それじゃまたね~」
静まり返った場所で妹と会話しながらの食事って居心地悪いな…
せめてBGMくらいはと思う冬夜であった
そして放課後になり職員室へ
ではなく咲夜の教室へ…
これには訳があり、今までの俺には個室で女性と二人っきりとゆう状況になった事が無いからだ、緊張とかでは無く、自己防衛の為に
その事に今更ながら気が付いた冬夜である
咲夜のクラスの扉を開け
「咲夜居るかー?」
と声を掛けるが、先ほどまで聞こえてたキャイキャとした放課後雰囲気が一転、呼吸音さえ聞こえそうな程静まり返った教室内だった…
「どうしたのお兄ちゃん?」
この様子だと咲夜も気づいてないみたいだな
キョトンと首を傾げるその仕草も可愛いと思いますよお兄ちゃんは
「あーいくら担任とはいえ、二人っきりになるのは…な」
「あっ!そうだねそれは駄目だよ!解った、一緒に行くよ。美佳ちゃん、稽ちゃん行ってくる」
咲夜も今更ながら理解したようだ
「「解りました」」
「すまんな。少し咲夜借りるぞ」
「い、いえ」
「いえいえそんな…」
「じゃー行こっか、みんなまたねー」
扉を閉めた後から悲鳴にも似た奇声が聞こえたのは何かが有ったのだろう
さて職員室へ
ガラガラガラー
さて担任はっと…ふむ…担任の名前はなんだっけ?
まぁ今更か…顔は知ってる…お!居た居た
担任の元へ向かい何やら書類整理だろうか、作業の邪魔かもしれんがまぁ良いだろう
「先生」
!!!!!!!!!?
◇
突然聞こえた男性の声にビックリして私は手にしてた書類束をまき散らしてしまった
「あわわわっ」
席を立ち慌てて書類を拾い始める私だったけど、どうしてこうなったかが解っていなかった
教師になって早5年。生徒との距離もやっと慣れて来ただろう今日この頃
今年度になり、まさかの唯一の男子生徒が居るクラスの担任をだ!
男子の対応なんて解かる筈もなく、去年一昨年に担当した教師達に彼の雰囲気とかどんな生徒なのかを聞いたりして、嫌な態度だったり横柄な対応はしたことが無いって聞いて安心したり、これからも相談しながらやって行こうと思ったりしていざ新年度を迎えた
男性のイメージは色々有ったけど実際会話は勿論こんなにも近くで接するなんて経験は全く皆無な私は教師らしからぬ気持と期待と、気遣いは当たり前な対応をしなければと、教師初日の様な気分になっていた
複雑な気持ちを持ちながら教室のドアを開け
「みんなおはよう」
クラス内を見渡しながら声を掛け、一人の生徒を探すが直ぐに見つかった。出席番号で黒板に貼ってある席順も気にせず窓際一番前…まるで指定席の様に座ってた、チラリと視線が合った様な気もするけど、我関せず!みたいな雰囲気で頬杖で窓の外を眺めていた
新年度が始まり1か月も経てばクラスの雰囲気も落ち着くはずだがこのクラスは違った…席替えをしようにも当然の様に指定席に座り、見えない壁を作る彼に誰もがチラチラと気にするも誰も仲良くなれてないこの状況に困惑?緊張?してるみたいだったが、当の本人は、全く気にせずまるで何も無かったように毎日を過ごすのだから…
他の先生に相談したのだが、気にするなの一点張りだった…
まぁ確かに気にしなければ良いのだろうけど、受験を控える生徒達がこの重苦しい雰囲気のクラスで日常を過ごすのは大変だろうと思うい頭を抱えるが、かといって彼の対応間違えたらもっと大変な事になる
そんなこんなで胃が痛み始めた頃に1学期が終わり夏休みに入った…ホッとしたのは誰にも言えないけどね
そして新学期…痛くも無い最早癖になってそうな胃の辺りを擦りながら教室へ向い
「みんなおはよー」
と極力明るく声を掛けるが…クラス内が夏休み前と何かが違う?事に気付きクラス内を見渡すと、居た…表情は変わらないが見えない壁が無くなり優しい雰囲気をまき散らす彼『高柳冬夜』君…どのくらいの時間見とれていただろうか?改めてクラス内へと視線を向けようとしたその瞬間、彼と視線が合い二コリと…とても良い笑顔でしたヤベー
たしかにこれは…緊張は無くなったけど更に困惑雰囲気になりましたね、私もそうです‥‥‥もしかして大人の階段上がってしまったのでは?と、思わなくもない程の雰囲気ですが、流石に男子ですからそんな事が有る筈も…無いよね?
何かが有ったであろう夏休みの事など聞けるはずもなくその日は終わり、そして次の日の朝も昨日と同じでしたが、クラスの女子の反応が少し可笑しかったですね…早く何とかしないと受験に響くよね?と、書類整理中にも関わらず深く思案していたのだろう私に声が聞こえた
「先生」
と、男性の声が
ビックリして手に有った書類をぶちまけ慌てて拾うが数枚の書類が目の前に…えっ?と顔を上げてみれば少し苦笑いの彼が居ました「どうぞ」と
状況が追い付かずも
「えっ?あっ、あ、ありがちゅ」
‥‥‥ヤダッ!?もう恥ずかしい!
きっと顔を覆いたくなる程私は赤くなってる事でしょう、ですが彼は
「えっと…これから少しお時間頂いても良いですか?進路の事で相談が有るのですけど」
と、大人の対応されてしまった…
気持ちを抑えた佇まいを直して初めて彼の隣にも生徒が居た事に気付く
彼女もこの学校では有名ですからね…『高柳咲夜』さん
彼の妹でとっても可愛らしいお嬢さん
彼女が咲夜様と呼ばれてるのは教師でも知ってる事実
でもそんな彼女もなぜ?なんて野暮なことは聞かない…だって彼の進路相談をこんな場所でする訳にはいかないからだ、つまりは個室で二人にならない為、当然彼も分かってるから彼女を連れてるのだろう、身内なら問題無く話せるだろうし
「そうね此処じゃあれだし、生徒指導室へ行きましょうか」
「分りました、行こう咲夜」
「うん」
生徒指導室へ彼等を席へと促し話を聞いてみれば、三桜学園へ進みたいとの事でしたが、私には理解出来ず更に問い出していました
「えっ?三桜?」
「ええ、三桜学園です。ですが行き成り男子が受験したいと言っても先方も困惑すると思うので、早めに先生に伝えようと思いまして」
確かに…これは早めに対応しなければならない案件ですね、まさか向こうも男子が受験するなんて思ってないでしょうし。ですが…
「親御さんは大丈夫なの?それに咲夜さんも…」
これに尽きる。もし彼が勝手に決めてるなら私にもとばっちりが来るしそんな事になったら私の立場も悪くなる。それはゴメンだわ
「家族とはきちんと相談して決めてるので問題無いです。最初は反対されましたけど今は納得して貰ってますよ。な?咲夜」
「うん。あたしもお兄ちゃんと一緒の学校行きたいし」
あら?意外とちゃんと話し合って決めてるっぽいわね、じゃあ次ね
「三桜学園って進学校よ?成績は大丈夫なの?男子校みたいに行きたいってだけで行ける場所じゃないのよ?」
まぁ三桜も男子が受験したいって言えば喜んで受け入れるだろうけど、それはそれ
「ええ勿論勉強もちゃんと頑張ってますよ。過去問なら合格ライン超えてますし、今すぐ受けろと言われても問題無い準備はしてますから」
はぁっ!?えぇっ?男子って勉強なんてしないわよね?嘘言ってる様には見えないし、ほんとこの子に何が有ったのよ‥‥‥
ま、兎に角彼の本気が伝わったからには応援しない訳にはいかないわね
「そっか、解りました。三桜学園には私から連絡しておくから兎に角今は勉強頑張りなさい。何か分かったらその都度伝えるわね」
「有難う御座います。それとこの話なんですが他の人には…俺の都合で他の人に不都合があっても困るので。いちお唯一の男子って自覚は有るのですよ?」
「その割にはお兄ちゃん夏休みに色々やってたじゃん」
「ん、まぁ…な。最近忙しくなってる気がするし、毎日メールのやり取りとか大変なんだよなぁ~」
色々!?頬を掻きながら苦笑いしてるけど大変な程のメールのやり取りって誰と?まさか複数と?私も良いかしら?ダメ?あっ!咲夜さんから冷たい視線が…こわっ!
「えっと…そうですね公に出来ない話なのは理解しました。まぁ高柳君は男子校だとみんなが思ってるでしょうから…三桜なんてばれたら大変な事になるでしょう、生徒もだけど先生達もね。でも直前になれば流石にばれるわよ?それは理解してね」
「ええ、直前になって進路変えるなんて事は無いと思いたいですが、無茶をする生徒が居たらフォローをお願いします。説得なら俺か咲夜も手伝うので」
あぁ~居そうだわね~もしかしたら他の先生方と連携取らないと駄目かしら…取り敢えず教頭先生と相談ね
「解かったわ、でももしかしたら他の先生方との連携も必要出て来るかもしれないので、教頭先生には相談していいかしら?」
「あぁそういう事なら大丈夫ですよ。もし何かあればその時にでも。じゃぁこれで帰ろうか咲夜、では先生失礼します」
「せんせーさようなら」
「はい、さようなら。気を付けてね」
ふぅ‥‥‥これから忙しくなりそうね。受験までまだまだ時間はあるけど頑張らないとね…彼の為にも
それにしても
はぁ~‥‥‥‥‥ってか彼‥‥‥素敵だったな…冬夜君
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