第40話 向かった先は
咲夜様に引き摺られる様に引っ張れ向かった先は、やはりと言いますか、間違ってて欲しかったと言いますか、未だに心の準備が整わないまま、全力疾走後みたいにドキドキが止まらないです
「お兄ちゃん入るよー」
ノックもせずに無造作に扉を開ける咲夜様の行動に違った意味でドキドキします
そう冬夜様のお部屋に来てしまいました
扉を潜ったその先はメチャクチャ広かったです!
その風景に驚愕してる私は、ピアノに座る冬夜様を見付けました!
ピアノってグランドピアノかよ!?
ピアノ近くの丸いテーブルセットに手を引かれ
花が飾れてるテーブルなんて初めて座りました
「お兄ちゃんはコーヒーだし稽ちゃんもコーヒーで良い?」
違いますよ咲夜様!この状況がダメなんです!此処は男性のお部屋なんです!!!
「えっと…その‥‥」
何をどーしたら良いか解らない!頭が回らない!!
「お兄ちゃん!お兄ちゃんのピアノ聞きながら此処で稽ちゃんとお茶したいんだけど良い?」
なんつー無茶振りだよ!!普通―に怒られるよね!?咲夜様じゃなくって冬夜様の機嫌損ねたらそれこそうちの家族は…
「ん?なんでも良いのか?」
「うん」
「じゃ川端さんにコーヒーのお替り頼まないとな」
「あたし行ってくるー」
えっ?ちょっ…
「じゃぁ、ちょっと聞いて貰ていいか?」
と言って冬夜様は弾き始めた‥‥‥‥いぁ、色々と全くもって全てに置いて理解の範疇外なのですが!?
『いつも一緒に居たかった
——♪
いまでも覚えている
黒いジャケット 肩の向こうに見えた景色さえも
————♪
———————私も~♪』
心の準備も出来てないこんな心象の私にこんな歌は不意打ち…ってか反則でしょ!?
涙が止まりませんでした‥‥‥いきなり何て歌を歌うのですか!?
恥ずかしくも号泣です!
何で男性が女性目線の歌を…そんな切なく…しかもあり得る様な話で‥‥‥
「お待たせ~ってあれ!?」
「いぁ…まさか号泣されるとは思わなくてな‥‥‥」
「ありゃ…でも、それだけ何かが稽ちゃんに響いたって事なんじゃない?ね、稽ちゃん?」
「ひっぐ‥‥‥こ˝…んな…せ…づ…ない…うだ…は˝じ…めて…ぎき…まじた‥‥‥うぅぁあ~~」
「えっと…咲夜お願いして良いか?」
「あっうん、これは流石にね」
‥‥‥‥‥
‥‥‥
…
「思いっ切り失礼しました」
あんな突然心にガツンと来る歌を聴けるなんて思って無くて
「気にしなくていいから、それより見て貰いたい物があってね…はい、これ」
と言って冬夜様は机に向かい何枚かの紙を渡してきました
渡された用紙に視線を落とせばお家が載ってる物件案内でした
取りあえず全ての用紙に目を通してから
「これは?」と、尋ねてしまいましたが、返って来た返事は
「どれが良い?」でした
はっ?
理解出来ずに固まってる私から用紙を取る冬夜様は
「これと、これと、これなんか良いんじゃないか?」
と、テーブルに並べた用紙にはどれも素敵なお家が並んでいましたが
これを見せられ何をどうしろと?
「お兄ちゃん解って無いんじゃない?」
「あー行き成り過ぎたか…えっとな稽。これらは君達家族の住む家だから好きなの選ぶと良い。うちが買って賃貸…にするかはお母さんと話し合ってからだけど、これから受験も在るし、自分の部屋くらい有った方が良いだろ?」
えっと‥‥‥マジ!?
本当に家を…?確かに咲夜様におねだりしてみろと言われリビングで冬夜様から聞いてたけど本当に良いの‥‥‥?冗談には聞こえないけど、ババ抜きしてるみたいに好きなの選べって…並べられた3枚の用紙のお値段を見れば4000万から5000万…選べって言われて中学生の私に選べるわけ無いじゃん!えっ?この人達そんなのも解んないの!?私がおかしいの?
「えっと…選べって言われて選べる物じゃ無い気がしますが…それにお値段が…」
「それは気にしなくて良い!母さんと咲夜の無駄使いに比べたら安いもんだ!あっ咲夜。母さんから聞いたぞ!何で色違いなんだよ、せめて車種変えるとかなかったの?」
「えっと、お母さんが黒!って言い張ってあたしが白ってなって…じゃー両方買っちゃえばってなって‥‥‥それで…」
尻つぼみに言葉が小さくなる咲夜様めっちゃ可愛い!
「それは母さんから聞いたからもう良いんだけど、値段見た?2台で1億6000万だよ?いくら母さんの了解有ったとしてもお金使い過ぎじゃない?あのな、いくら咲夜お嬢様でも自分で使えるお金は理解しないと駄目だからな!」
「うん…」と頭を撫でられる可愛い咲夜様が居るが
はっ?家より高い車…?それをなんの躊躇いもなく?
えっ?車2台で1億超えるって…何してんの?
「って稽ちゃん固まってるけどどしたん?」
違うよ!貴方達の金銭感覚に付いて行けないだけなんだけど!?
「あ~物件見ないと選べないよなぁ」
違うんだよ!
「イメージと雰囲気は大事だしね~」
じゃないんだよ!!
こんな高額な物、私には選べないんだよ!!気づけ!
「えっと…私には選べなくって…その‥‥‥」
「まぁそっか…じゃ今度の土曜日にでも見て回るか?勿論お母さんも一緒に?それ持って帰って家族で相談したら良い」
「あっ…まぁ…そうですね…これは貰っても良いですか?」
「そうだな…下手に遠慮されても困るからその3枚な!それから稽?旅行行くなら海と山、和と洋どっちがいい?」
問答無用でこの三物件…それに旅行ですか?お母さんのサプライズって言ってたから、どうしましょ…私も加担してますね、そう思うと喜ぶ顔を観たくも有ります。山とか海じゃなくて思い出になる家族旅行にしたいですが…ん~移動は車じゃなくて電車で…そんな遠くない温泉がいいかな…そうすればお母さんもおばあちゃんも移動に負担かからないかな…観光じゃなくてゆっくり出来る所がいいな…家族3人でそんな夢のような時間過ごしたいな…だから
「電車で移動が出来て、近場で家族三人ゆっくりまったり出来る場所へ行きたいです!」
「オーケー任せろ!君らが恐縮する程の宿と部屋を用意しよう!」
とPCの前に座った冬夜様は、お嬢様と言い始めた冬夜様が居た…数千万単位で無駄使いするこのお宅では嫌な予感しかない、思い出じゃなくて何も出来なくなる様な気がしてならない…
「おっ此処が良いか…部屋に露天風呂とか最高じゃないか…離れだし…ってか俺も行きたい…ん~行くか?…ハイヤー頼むか?で、ん~…行くか良し!‥‥‥予約っと…後はハイヤー後で頼むとして…よしプリントアウトっと」
えぇぇ~
「稽、これをお母さんに。来月頭に行くからな」
行き成り過ぎて私にすらサプライズなんですけどぉ~
まんま説明すれば良いだけなんだけど、手が震え緊張するのは何故なんでしょう?
◇
「ただいまぁ~」
あり得ないとか理解出来ないとか信じられないとか色々な感情があって、未だに夢を見てる様な感覚でおんぼろアパートの自宅に着いたけど、実感が沸かず、フラフラと…
「お帰り。って稽?その恰好どうしたの?すごく女の子してるけど‥‥・何してたの?」
解ります…私も今日の出来事は夢じゃないかと思う程ですが、お邪魔して解ったのですが遠慮とは程遠いお宅でした
「うん、これ咲夜様に着て行けって…咲夜様の衣裳部屋凄かった…買う!じゃなくて貰えるんだってー」言ってて悲しくなるよ‥‥‥
「えっと…稽?」
ん~なんて伝えたらいいんだろう‥‥‥
咲夜様に絡んだら抱きしめられた?
咲夜様に嫉妬したら女の子にされた?
ざけんなっ!と言ったら冬夜様を紹介された?
そして冬夜様は
家を‥‥‥旅行を‥‥‥
「あーお母さんコレ冬夜様から…」
と、物件案内の用紙を渡すしかなかった
「ん?‥‥‥‥‥ん?‥‥‥ナニコレ?」
だよねー
「えっと、うちの引っ越し先で好きに選べと‥‥‥今度の土曜日に見て回るって冬夜様が…」
「えっと…家?…冬夜様が…?」
「うん咲夜様が言ってた。うちはもう高柳の仲間なんだって!だから遠慮はしないって…それからコレも冬夜様からプレゼントだって…」
温泉施設のパンフレットも
「なにこれ‥‥‥え?えっと…」
あぁ~解りたくは無いけど理解しました。これがサプライズですね!
「えっとお母さん、冬夜様からのサプライズらしいよ?温泉旅行のプレゼント…冬夜様も気に入って一緒に行くらしいけど…ほんと…何がなんだか…」
「家?…温泉?」
と何やらブツブツ言い始めたお母さんは絶賛混乱中である事は理解出来るが、私も何から説明したらいいか解らないんだよ!
取り敢えずはあの家がオカシイのは理解したけど
「あー私お風呂入ってくるねー」
落ち着いて整理しよう‥‥‥
‥‥‥‥‥
‥‥‥
…
「うん!無理!私には理解できないよ!!」
お母さんに一から説明しよう
「‥‥‥って事が有ったのよ!私には無理だったの!理解出来ないんだよ!あの家は夢のお宅だったんだよ!!」
高柳家に関わる今日の出来事を説明したんだけど
「ねぇ稽?失礼の無い様にって言ったわよね?絡んだ…?で、服を貰った?冬夜様のお部屋にお邪魔した?…何してんの稽?図々しいとか勘違いとかしちゃうかもしれないけど、元々住んでる世界が違う御宅なのよ?私達はその御宅の御厚意で生かされてるの解かる?ねぇ稽…お願いだからあの方達の機嫌を損なう様な事はしないでね…」
お母さん…言いたいことは分かるんだけど卑屈過ぎるよ!?
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