第37話  あるご家庭での一幕

ある佐々木家の夕食時


「弘美。あなたに家庭教師付ける事にしたから」


え?

「はっ?いきなりどーしたの?」


「いきなりって…冬夜君がこのままじゃ三桜厳しいかもって言ってたからよ!」


え?厳しいの?

「えっ?今以上にやらないとって事?」


「当たり前じゃない。それにあそこって成績順でクラス分けするって聞いたわよ?あなたは同じ学校に入れるだけで満足?」


「え?そーなの?って事は冬夜君と同じレベルにならないと、ずっとクラスが別…?」

知らなかった事とは言え、出来れはずっと一緒が良い…

なら今以上に頑張らないと…だから家庭教師か…


「冬夜君が言うには基礎からとことんやり直した方が良いって言ってわよ?だからこれからは遊ぶ時間なんて無いわよ!」


「えぇ~そんなぁ~…そろそろ秋物買いに行きたかったのにぃ~」


「安心しなさい!香奈ちゃんも由華ちゃんにも家庭教師付けるって言ってたから」


「えっ?由華にも!?」


「えぇ冬夜君がそう言ってたわ」


‥‥‥もしかして私ってほんとヤバい?由華に泣き付けばとか思ってたけどそれも出来ない?


「ねぇ弘美、あなた既に冬夜君に選ばれてるなんて思ってないでしょうね?そんなちょっと頑張った程度の女を冬夜君が選ぶと思う?旅行で一緒に居たいって言ってたのは何だったの?咲夜ちゃんがどれだけ頑張ってるか見て来たんじゃないの?やる気の無い娘を応援するほどお母さんも暇じゃ無いのよ?それが出来ないのなら冬夜君は諦めなさい!!」


ホントに咲夜ちゃんは凄かった…私なんかよりずっと…

旅行先で一緒に過ごしたり、勉強会呼ばれたりで、私は安心してたのかも、でも違ったんだね?もっともっと頑張らないと…


「うん…うん!お母さんわたしもっと頑張るよ!冬夜君に選んで貰うためにもっともっと頑張るから応援して下さいお母さん!」


「それで良いのよ。頑張りなさい。それからもう少し頑張れる言葉をあげるわ。冬夜君、交流会に既に参加してて何人かの女の子と仲良くなったみたいよ?」


「なっ!?」


(冬夜君が言った通りね…今選ばれてもこの娘はダメになる、だから今は頑張りなさい。そして何時か…冬夜君にお義母さんって呼んで貰うのよ!)





ある加藤家にて


「香奈。冬夜君が家庭教師付けて勉強させた方が良いって言ってたけど、どうする?」


「え?冬夜君が?」

今のままじゃ足りないの?


「里佳子も紗香もやる気マンマンだったわよ?」


「えっ由華にも?」

由華でも足りない…?


「えぇ冬夜君が言うには由華ちゃんも『もう少し頑張りましょう』だって」


そんな…それじゃー私なんか全然足りないじゃん


「このままだと選ばれるのは由華ちゃんだけかも…ね」


嫌!そんなの絶対嫌!


「あなたはこのままで良いの?三桜って成績順でクラスを分けるらしいわよ?それに今の成績だと厳しいかもって冬夜君言ってたわよ?志望校変える?」


「嫌よそんなの!お母さんお願い!私もっと頑張りたい、全然足りなかった!どれだけ頑張れは良いか解らないけど出来る事全部やりたい!だからお願いしますお母さん!!」


「うふふ…任せなさい。ちなみに咲夜ちゃんは夏休み中、ご飯と寝る時以外は勉強して、お風呂にもタブレット持って入ってるらしいわよ?」

咲夜ちゃんも大概よねぇ~気持ちは解るけど…


「え‥‥‥そんなに…?」

た、たしかに咲夜ちゃんは凄かったけど、そんな努力してるなんて思わなかった…


「あらあら…あなたの努力はその程度なのね?もう冬夜君は諦めたら?」

わたしの娘だからか…今一やる気に欠けるのよね~


「嫌よ!諦めるなんて無理!あんな理想の男子居ないもん!いーわよ、やってやろーじゃない!こうなったら寝る間も惜しんでやってやるわよ!」

そうよ!冬夜君と一緒に居る為だもん、死ぬほど頑張ってやる!


「そうよ、いい香奈。その位の覚悟じゃないと冬夜君からは選んで貰えないと思いなさい!その為の応援ならしてあげるから。でも食事と睡眠はちゃんと取る事!いいわね?」

(むふ、これで冬夜君に連絡する口実ができたわねぇ)


「うん!有難うお母さん」


「あぁそうそう、冬夜君が特別交流会に参加したらしいわよ?」


「えっ!?なんで?」


「知らないわよ」



(やっぱり冬夜君ね~気合が入った様で何よりだわ。そして何時かは冬夜君と添い寝を…うふふ)





ある三好家にて


「冬夜君から家庭教師を付けたらと言われたのですが、由華はどうします?」

まさか由華ですら、もう少し頑張れなんて言われるなんてね…


「冬夜君が?ん~冬夜君が言うならそうすべきだと思います」

確かに冬夜君と咲夜ちゃんの勉強風景は凄かったですね

私もそれなりに努力を重ねたつもりでしたが、まだまだなのは理解出来ました、それにしても塾ではなく家庭教師ですか?


「そうですか、ではその心算で居て下さい。冬夜君からの感想は『もう少し頑張りましょう』でした、なのでまだまだ気を抜かない様にね」


「分かってますよお母さん。三桜は成績順でクラス分けされるので、一緒に居る為にはまだまだ全くもって全然足りて無いのは理解しています。なので主席目指すつもりで頑張るだけです。まぁ恐らくは冬夜君が主席でしょうけど」


えっ?冬夜君ってそんなにすごいの?イヤ…最近の冬夜君は男子らしからぬ行動してますけど、勉強も?

「益々楓の息子なのか怪しくなってきましたね…ですが流石冬夜君です、我が社も安泰ですね」


「気持ちは解りますけど楓さんに失礼では?私の将来のお義母様ですよ?」


「あらあら…気が早いわね。ふむ…これは伝えるなと、言われましたが、あなたに気合の入るなら伝えても良いでしょう」

これでダメならそれまで…ですね


「なんですか?」

伝えるな…ですか?


「覚悟して聞きなさい!冬夜君はあなたを選んでも良いと言ってました。ですがそれを今、伝えると駄目になるとも…解りますか?これ以上の覚悟を持って努力をしなければ見限られるって事です。どうですか?気合の入る言葉でしょう?ですが香奈さんと弘美さんには内緒ですよ」


「えっ…嘘…冬夜君が私を…?うふふ…もう飛び跳ねたい位の気持ちですがこの気持ちは入学まで心に仕舞っておくとしましょう。それにしても…えぇ…気合入りましたよお母さん!もう本気で主席目指したく思います。なのでお母さん!全科目集中出来る様に家庭教師の調整をお願いします」


私が選ばれたとあの二人に伝えればそれだけで気合入りそうですけどね~ですが、嬉し過ぎてしばらく抜け殻みたいになるのも目に見えそうですね

ん~やはり内緒の方が良いですかね?‥‥‥私が選ばれた!?ホントに?夢みたい…今日だけは喜んでもいいよね‥‥‥


「それでこそ私の娘です。ですが安心だけはいけませんよ?選ばれたじゃなく選んでも良い?ですからね!冬夜君、特別交流会に参加して既に何人かの女性と仲良くなってるみたいだし…はぁ~ちょっと目を離すとこうなんだから…私が知らないだけであと何人居るのやら…」

早瀬さんのお姉さんとか…後でしっかり確認しないとですね


「えっ?交流会!?」


「安心するな!の言葉を理解しましたか?」


「あ、はい!」


「理解出来たなら後は頑張るだけです。私は応援しか出来ませんが、とことんやりなさい。受験に受かるまでは泣き言も愚痴も許されない状況だと思いながらやり遂げなさい。その先の冬夜君の笑顔を想いながら」

まぁ困ったら私が冬夜君に泣き付くけど…


「やる事をやって出来る事をして…恐らくですけどそれでも足りない気がします。なのでお母さん私を助けて下さい」


「解かっていますよ由華。だから今はとことん頑張りなさい。私の愛しい由華」


(いつか冬夜君の背中を流す時を想いながら…)















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