第28話  私のお兄ちゃん

お兄ちゃんが倒れた!

目の前が真っ暗に‥‥‥


嫌、助けなきゃ!

私は叫んだ!!


目が覚めたお兄ちゃんはとても凄くお兄ちゃんになってた

安心?安寧?安らぎ?

まるっと全部含めての私の理想のお兄ちゃんになってた‥‥‥


我儘を、理不尽を、お願いを、抱き着くのも全て全部優しく温かく受け止めてくれるお兄ちゃん


その目が優しくて

頭を撫でてくれる手が温かくて

声が安心出来て

名前を呼ばれるのが嬉しくて

私の全部受け止めてくれる


私の——『お兄ちゃん』



お兄ちゃんが夏休みの旅行の提案

一緒の旅行楽しみ


着いた先では面識はあるけど、私ではライバルにもなれない人達が居た!


私はとことんお兄ちゃんに甘えた

ライバルの人達は私の事睨め付けるけど


ふざけんな!!!!


だって私は


『妹』


どれだけ優しくされても

どれだけ甘やかされても

どれだけ大事にされても

どれだけ一緒に‥‥‥居られても


恋人には———


だから私は甘え続けるに‥‥‥‥‥




私の、私だけの永遠に叶う事の無い小さな恋の物語





「ただいま~」


お兄ちゃんが帰ってきた

今日はどんな女の匂い付けてきたの?


「お帰りお兄ちゃん」

「あ、うん。ただいま咲夜」


相変わらずの優しい瞳

思わず抱き着くけど

色んな女の匂い‥‥‥


「あー咲夜。取り敢えず着替えたいんだけど」


それには賛成、出来れば直ぐにでも匂いを消してきて

「だったらお風呂入ったら?疲れたでしょ?」


「んーそうだな、じゃ行ってくる」


うんうん知らない女の匂いなんてさっさと消してきて!


「ふぅ…さっぱりスッキリ。何気に疲れてたんかなぁ~やっぱ家が落ち着く」


「お兄ちゃん冷たい麦茶だよ」


「ありがと咲夜」


この『ありがとう』の時ってとてっも凄く凄い優しい顔

こんな顔を見たらどんな女でも‥‥‥


「今日はどうだった?友達出来た?」


「あーうん…男子は一人居たんだけど、なんか話し方とか態度とかがムカついて無理だった……あはは」


頬を掻きながら照れくさそうにそう話すお兄ちゃん

(そっか…友達出来なかったんだ‥‥‥)

安心?じゃない‥‥‥困惑?


友達なら私も何人か居る

相談もする

冗談も言える

遊びにも行ける


でもお兄ちゃんにはそれが居ない


でも‥‥‥でも‥‥‥でもね


あっ‥‥‥‥‥

そっか——


私の独占欲


お兄ちゃんごめんなさい

これは私の我儘で

甘えで

そして私の気持ち

私の願う

私だけの



「でも何人かの女性とは仲良くなったよ!」


くっ!これさえ無ければ!!!


「今度ランチに行く約束したから咲夜も一緒にね」


その優しすぎる優しさが私の心を傷つける


「ねぇお兄ちゃん……」


ダメっ!

「色んな女の人が」


言うな!

「お兄ちゃんの側に」


黙れ私!

「居るのって」


壊れる!

「すっっっっごく嫌!!」


この関係!

「だってお兄ちゃんは私のお兄ちゃんなんだからっ!!!!!!」


私は泣いていた。

後悔と感情と理性と‥そして‥‥‥この気持ちと



「そっか咲夜はそんな風に思ってたんだな~。ごめんな気づかなくって、でもな咲夜、俺はずっとずっと死ぬまで、いや違うか、死んでもお前のお兄ちゃんなんだよ」


知ってるよそんなの

痛いくらい理解してる


「だからな咲夜、俺は格好良くて頭が良くて運動が出来て仕事が出来て何でも出来る。お前が出来るお兄ちゃん目指すから、ずっと側で見て絶対目を離すなよ!」

って頭を撫でてくれたけど


そっか‥‥‥‥‥うん、判ってた


これが私の自慢のお兄ちゃん

これが私の理想を努力するお兄ちゃん


でもねお兄ちゃん

お兄ちゃんが頑張れば頑張るほど私の胸は痛くなるの


どれだけ優しく愛されても

私の心は満たされない


だって私は妹なのだから

そしてお兄ちゃんは妹を見てるから


永遠に伝わらないこの言葉


我慢するしかないこの傷しか付かないこの思い


だからお兄ちゃん‥‥‥


ずっと———




だから私は見続ける

お兄ちゃんの隣で‥‥‥


この場所だけは誰にも渡さない!


「なぁ咲夜。この関係は嫌か?俺は好きだぞ!だって咲夜が妹じゃ無かったら今一緒に居られないんだぞ!」


そーだけどそうじゃない

きっとお兄ちゃんには分からない…






思いと理解は全く別物‥‥‥そして心も‥‥‥‥‥‥












































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