第18話  とある会長のお仕事。

今日は珍しくモニターを見つめながら何やら難しい顔をしてる。


カタ・カタ・カタ…


「ん~」


なんとなく気になった私は声を掛けてみた。


「何か調べものですか?」

なし崩し的に秘書課に配属になり。社長秘書のはずか社長ご自身いつ出社するか判らないので、会長秘書補佐とゆう立ち位置になった私…


「ん? うちの保養所の事調べたいんだけど、このパソコンの調子が悪いみたいなの。このテレビも電気付かないし…」


はっ?パソコンの調子が悪い?

それにモニターじゃなくてテレビって言った!?


「え?もしかして会長ってPC使った事無いのですか?」


「馬鹿にしないでよ佳織ちゃん!私だってパソコンくらい使った事あるわよ!ただいつもは紗香ちゃんが準備してくれてたから‥‥‥」


馬鹿にするつもりなんて無いんだけど、仕草とか一々可愛らしいのよね。

なんだか最近恋する乙女オーラ出してるし…




「失礼します。‥‥‥少し休憩しませんか、会長?」

スッと差し出されたカップからは紅茶の良い香りが漂う。


「ありがとう紗香ちゃん」


「あっ!そうそう紗香ちゃん。うちの保養所の資料ってない?今度の夏休みに行ってみようかと思ってるんだけど…」


「保養所…ですか?」


「うん!冬夜君がね、体動かしたいとか、キャンプしたいとか言っててね。それだったら保養所行けば出来るんじゃないかと思ってね。 ほら、冬夜君が一緒だと変な所行けないでしょ!」


「冬夜君と…旅行…ですか?」

ピクリと片眉を動かしながらそう質問するが

「うん♪」

とカップを片手にとても幸せそうな楓である。


(冬夜君と旅行ですか…これは里佳子達に伝えないとですね)

「ふむ、そうゆう事でしたら周りの煩わしさはあそこなら無いでしょう。…解りました少し調べてみます」


「ありがとう紗香ちゃん! うふふ…今から楽しみだわぁ~ 色々準備しなくっちゃ!!」


妄想全開でとても幸せそうな姿だが、さすがにイラッとし

「母親の仕事もいいですが、会長としての仕事もして下さい!書類チェック全然終わってないじゃないですか?今何時だと?もうすぐお昼ですよ!?終わるまで昼食は用意しませんよ!」


「えぇ~ そんな酷いよぅ紗香ちゃん!」


「酷いよじゃありません!毎日毎日、冬夜君冬夜君冬夜君と聞かされるこっちの身にもなってください!酷いのは会長の方です!!」


「だってだってぇ 最近の冬夜君とぉーっても素敵になったのよ!

大人の色っぽさが出てきて、優しくてカッコいいし、それに抱き着くとなんかこう蕩けるような甘い香りがしてすっっっごく好いの♪」

頬を赤らめ手をあてながら、身体をクネクネしグヘヘと悶え始めた姿に更にイラッと


「なっ!?なんてうらやま……コホン。(いつの間にかそんな素敵な男性になってたなんて…これは報告案件ですね)と、兎に角私は保養所の事調べてくるので会長は仕事をちゃんとして下さい!」


「ねぇ紗香ちゃん!どうやったら冬夜君と結婚出来ると思う?」

何を言ってるんだろうこの人は…


「バカな事考えて無いでさっさと仕事を終らせて下さい!じゃないとお昼抜きですよ!!でわ、私はこれで失礼します」


ええぇ~と聞こえてきたが、それを無視して先を進む。


梨香と里佳子にメールっと…【緊急案件につき至急会議室へ】

上手くいけば娘たちも冬夜君と‥‥‥








私は保養所の事を調べながら彼女達を待つ事にした。


フムフム…温泉にプールですか…運動施設に少し走ればキャンプ場。

予約は……ほとんど空いてますね。まぁ私も楓から聞くまでは興味すら無かったですからね…


そんな時バタンと扉が開き


「緊急案件って何かしら?」

と、梨香と里佳子が入って来た。


「まず。扉を閉めて下さい、これは誰かに聞かれると少々…では無いですね、色々と大変な事になるので…」


その言葉にキョロキョロと廊下を見渡してから扉を閉めた事を確認した私は

「楓が冬夜君と夏休みに旅行へ行くそうです…」

と、二人に伝えた。


「えっ?冬夜君と旅行?なんて羨ま…けしからん!」

「同感だわ!それで何処へ?」


全くもって同意です。

「まだ予定ですが…うちの保養所です。少し調べたのですが、冬夜君と一緒ならとても楽しそう……コホン! 此処なら冬夜君も安心して過ごせそうです」


「本音が駄々洩れね紗香……ふぅ~ん避暑地って場所かしら?」

「へ~たしかに此処なら冬夜君も安心できそうね…」

資料を見ながらそう呟く二人が何かを思いついたようだ。


「まさか私達も此処へ?」

「ええ。できれば娘達も一緒に…受験勉強も有りますが、息抜きと冬夜君に会えばやる気も出るのではないかと。そして仲良くなってもらえればと思いまして」


「確かにそうかもしれないけど…」

「私達ですら冬夜君と挨拶程度しか会話した事ないのに…」

分かります…私もそう思いましたから。


「ですが!最近の冬夜君は楓曰く『大人の色気が出てきて、優しくてカッコイイ、そして抱き着くと甘く蕩けそうな香りがしてすごく好い』らしいですよ?」


「「なっ!」」

目を見開き驚きの様相の二人に


「そんな素敵な男性になった冬夜君に会いたくないですか?」


私達三人してニヤケ顔で頷き合うのであった……


「紗香!あなたは楓が行きたくなるように誘導しなさい!」

「解かってます。冬夜君は運動とキャンプがしたいらしいですよ!」

「じゃー私達はその準備をするわ!必要な物有ったら直ぐに伝えて!」




ウフフ…夏休みが楽しみだなんて何時以来かしら………

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