第16話 早瀬 佳織 ①
株式会社 riliKs
大手アパレルメーカー
そんな企業のデザイン部へ私は就職した。
進路には迷った。デザインを学んでから就職しようかとも…
でも、実戦で学びながら力を付けようと思い、大学へは行かずにこの道を選んだ。
現在、入社式が終わり、社内を案内してもらってる所。
隣に居るのは大卒かしら…周りをキョロキョロしながら不安な顔してる可愛らしい女の人だ。
「そんな不安そうな顔しなくても…すぐに覚えるのは無理でしょ?」
私はそう伝えてみた。
「でも私いっつも迷子になっちゃって…」
方向音痴なのかな?
「私、《はやせ かおり》よろしくね」
「私は《たかやなぎ かえで》よ。こちらこそよろしくね、佳織ちゃん」
そう自己紹介をし。高柳って名前に何か引っかかったけどキャイキャイと話す彼女に気にならなくなってた。
そして到着!デザイン部
今日から此処が私の職場!
不安も大きいけど、やっぱりワクワクしちゃってる。
そんな中、高柳さんはキラキラとした顔で『へー』とか『今はこんな事するんだー』とか、あっちへこっちへと興味深そうにしてる。
怒られるんじゃないかと思うけど、周りで働いてる先輩方は叱ることもせず苦笑いで対応してる。
みなさん優しいのね、上手くやっていけそうだな……
バタン!っと扉が開き入って来たのは恰好良いスーツ姿の女性だった。
「おー 新人の諸君! 私が此処の統括の佐々木
めっちゃ恰好良いな! 私もこんな人になりたい!
「じゃ全員揃ってる‥‥‥な‥‥‥なん…で、かえで…コホン、何で会長が此処に…?」
はっ?会長…?どこに…?
「すぐに紗香を呼びなさい! そしてかえ、じゃなくて、会長を逃がさないで!」
「「「「解かりました!」」」」
そう声掛かるとスタタタタと先輩方がテキパキと動き出し、何故か高柳さんが確保されてる・・・
「えっ、えっちょっと離して! このままじゃ私、紗香ちゃんに怒られちゃう!」
「「すみません!すみません!離してしまうと私たちが怒られます!」」
なにやら必死だ!何だろう…
しかし紗香ちゃんって誰だろう…
暫くして…
恐ろしく冷たい雰囲気のスーツ姿の女性が入って来た。
その女性がスッと拘束されてる高柳さんに近づくと…
「こんな所で何をしてるのですか会長?」
淡々とそう言葉を紡ぐ。
はぁぁぁぁっ? 会長って何?
言ってる意味は分かるんだけど、理解が追い付かない。
えっ?この大学生みたいな人が会長?
あっ! たしか名前聞いたわよね……たしか‥‥‥高柳楓………
って創業者の一人で会長じゃん!
ギャー!!私そんな偉い人にタメ口!?
ヨロシク!とか言っちゃったよ!
えっ?えっ?
私、入社初日でクビにならない?
「紗香ちゃん、私迷子にならない様に案内してもらっただけなのよ?」
自分の会社で迷子になるのか…
「会長…迷子は兎も角仕事をして下さい!」
迷子はいいのか!?
「えぇ~だって~冬夜君が来た時に社内デートしたいじゃない?ちゃんと案内してあげたいしぃ~♪」
何を言い出すんだこの人…
こんなドタバタ見せられて、なんとなく周りの雰囲気を探ってみたが、拘束してる人以外全くもって興味すら無い様子…
アタフタしてるのは私達新人だけ…
えっ?もしかしてこれが日常?
「行きますよ、会長!」
と、その言葉に周囲の温度が下がった様な気がした…
「ん~ちょっと待って紗香ちゃん」
この人はなんでこの空気の中、平気な顔が出来るんだろう…
と、なにやらキョロキョロし始めた…そして目が合った…
「あ!佳織ちゃん」
テテテテテーと私に向かって来て
「ねぇ佳織ちゃん、秘書やってみない?」
「えっ?」
突然何を言い出すんだろうこの人は?
高卒の私に出来る仕事じゃないでしょ?
すると
「会長。何故この子を秘書に?」
紗香さんが訪ねてきた。
「佳織ちゃんは高卒らしいのね、って事は冬夜君と年が近いの!」
と、なにやらドヤってるけど、何言ってるか分からない。
「もしかしてこの子を冬夜君の秘書に?」
「うん、そうなの!良いと思わない?」
「ちょっと待って!楓、紗香、勝手にうちの新人連れて行くとかやめてよね!」
私の事を他所にワーワーと話し始めた…
そんな時だ、バタンとドアが開き、ゆるふわな雰囲気を持った優しそうな人が入って来た。
「あなた達、何をやってるの?」
そんな声に会長が
「あ!梨香ちゃんだ」
「何やら楽しそうね。私も混ぜてよ!」
ふむ。会長に対してこの対応…
きっとこの人が装飾部統括の《加藤 梨香》さんね。
TOP四人が揃っちゃったよ!
「あのね梨香ちゃん! この子を冬夜君の秘書に置こうと思ってね、みんなで話してたの!」
会長の答えに『ふぅ~ん』と値踏みでもされるかの様に頭の天辺から足元まで見られ
「あなた、お名前は?」
(なんか怖いんですけど……)
「あっはい。本日よりお世話になります。早瀬佳織と言います。宜しくお願い致します。」
あまりの出来事に声が大きくなってしまいました。ごめんなさい…
「早瀬さんね。私は加藤梨香よ!よろしくね」
手をヒラヒラさせながら緩い雰囲気に戻って行った。
「はい!よろしくお願いします」
雰囲気は緩いけどまだ緊張が溶けない…
「で?なんでこの子なの?」
あー分かった…『冬夜君』ね!
たしか会長の息子さんで社長だったわね。
「ねぇ、こんな所で社長を『冬夜君』呼びは良くないわよ」
佐々木統括がそう言って。
確かに!私だって冬夜君って呼んじゃいそうだもの。
「そうですね。移動しますよ」
「じゃー私の部屋へ行きましょ!佳織ちゃんもおいで♪」
「あなた達、私は少し席を外すから、新人の面倒は任せたわよ!」
「私も行く~」
(えぇっ!? ちょ、ちょっと待って!!)
どうして良いか分からず周りを見渡すが、可哀そうな子を見る視線しかない…
(誰かたすけてぇ~~~~!)
役員四人に囲まれて今日入ったばかりの新人がドナドナ‥‥‥
※
書き始めたら長くなりそうなのでここでいったん切る
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