第13話  やっと退院・・・

やっと帰れる…

たった四日なのに二週間近く居たような気がする……


先生や看護師達がやたら引き留めるのは何故だろう…


「お兄ちゃん、荷物はこれで全部だよ!」

「お母さんは車取ってくるね!」


「それでは皆さんお世話になりました」

ペコリと頭を下げ挨拶をするが…


「ぐす…冬夜君またきてね……」

「何時までも待ってますから……」

「………帰らないで!」

「ひっく…うぇぇぇん」

「‥‥‥‥‥‥‥‥」




おかしい…これが退院する人を送り出す光景だろうか?

本来喜ばしい出来事なはずなのに、すごく帰りずれぇ…


後ろ髪を思いっきり引っ張られる感を何とか振り切り帰路に就く。


30分程走っただろうか…なんだかとても懐かしさを覚える我が家が見えてきた。


この辺りはごく普通の住宅街なのだが、どうだ!と、言わんばかりの存在感たっぷりの無駄に広い我が家に到着。


周りの景観損なう感があり、ちょっと恥ずかしい我が家…

立派な門構えで奥に見える洋風の3階建て、テラスにバルコニー、庭にはガレージに軽く運動出来るスペースもあるし、更には警備員宿舎まで。

《おほほ~》と声を上げる人が住んでそうな家である。


三人で住むには広過ぎるが、すべては【俺の為】ハンパなし!親バカを突き進む母なのである。


ご近所付き合いは嫌みのない性格の母と妹のおかげもあり良好らしい。



車を降り、母は車をガレージへ…5台ほど置けるであろう立派なガレージなのだが今は母が乗る軽自動車がポツンと…

まぁ乗らない車が何台も有っても無駄でしかないからね。



「ただいま~」


たった数日の入院には多過ぎる荷物を抱え家に入ると

「お帰りなさいませ 冬夜様。 お元気そうで何よりで御座います」

と、お手伝いさん達が目元にハンカチを当て、笑顔で出迎えてくれる。


この広過ぎるだけにお手伝いさんは必要なのだが。

そのお手伝いさん達の立ち振る舞いがもはや使用人レベルなのだ。


幾度となく『お手伝いさんなんだしそんなに畏まらなくていいよ』

と伝えても『いえ、冬夜様にお仕えすることが私達の幸せなのです!』

って会話にすらならないので、既に諦めてる。


雇ってるのは母なのに・・・


「心配してくれてありがとう。検査でも何も問題なかったし、もう大丈夫だよ!」


「それは何よりで御座います。もし冬夜様に万が一が合ったら私たちの生きる意味を失う所でありました。奥様からご無事の知らせを聞いた時には嬉しすぎて、失礼かとは思いましたが、私達だけでパーティーを開いてしまいました」


色々と大袈裟だな君たち!?


「お荷物お持ちしますね」

「うん、ありがとう。俺も少しは持つよ!」

「いえ、冬夜様は病み上がりですので、ご自愛下さい」

「あっ うん」


母親に負けず劣らす過保護っぷりがハンパない・・・



「じゃ 咲夜、俺は荷物かたずけてくるから」

「うん わかったー」


階段を上がり自分の部屋に向かうのだが、俺に与えられたスペースは3階部分すべて…部屋が五つ在ってその中の一つが俺の部屋。

広過ぎて逆に不便なのだ!エアコン付けっぱなしにしないと夏も冬も過ごしずらいし…

リビングとか風呂とかトイレとか遠いんだよ!


母曰く『広い方が何かと都合が良いでしょ!』との事。


スケールが違う母の言葉に納得…………出来るか!

といっても咎めると泣き出すので何も言えないのだが…


昔、隣のウォークインクローゼットに、といっても、そこも20畳位あるのだが… 

そっちに引っ越ししようとしたら『何が気に入らないの?冬夜君の為にと思ってお母さん頑張ってるのに』とガチ泣きされたので、泣きたいのはこっちなのに我慢することにした。


なのでこの教室3クラス分位ありそうな部屋の隅っこ、8畳ほどのスペースに纏め過ごしている。


この状況に何も言わないんだから部屋を代えても問題無い気がするが、母的にダメらしい…





親の心子知らず・・・って難しい言葉だよね!





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