第2話  帰りの際

入院する事になった冬夜の着替えやらなんやらと準備の為

帰宅中の楓と咲夜。

そのタクシー車内にて・・・。


「お兄ちゃんなんか変わったよね~」

「そうね~優しくなったのはもちろんだけど、なんかこう雰囲気が大人になったってゆうか・・・色っぽく?なってた♡」

「そうそう それ! でね。 すんっごい良い匂いしたの♪ 甘くて蕩けるようなずっと嗅いでいたいようなそんな香りがしたの!! 抱きしめられて凄い幸せだったの♡」

「えっ!? なにそれずるい!」

「えへへ~ お母さん先生呼びにいったじゃない?その時安心して泣いちゃって思わず抱きしめちゃったの。そしたらお兄ちゃんあたしが泣き止むまでずっと頭を撫でてくれたの~♪」

「いいな~ お母さんもお願いしてみようかしら・・・

ベッドの中で…ボソッ」


ぐへへとだらしない声を出しながら自身の体を抱きしめクネクネと未だその情景に身悶えする『妹』の咲夜。と、その姿に羨ましさを覚える『母』の楓である。


「そうだお母さん!お兄ちゃんの着替えとか買っていかない?」

「ん? 今有るので十分じゃない?」

「何言ってるのお母さん! あたしたちが選んだ下着とかパジャマとかを着てくれるんだよ!!」

ふんす!と、何かスイッチが入ったように気合が入る咲夜が吼える。

「なっ! そっ そうね今有る着替えだと少し古いかもしれないから買い物して行きましょうか。」

『妹』咲夜の言葉にゴクリと唾を飲みつつ、冷静を装うも興奮を抑えられない『母』楓である。


「少し遠回りだけどショッピングモールに寄って行くわよ!」

「よっしゃ!」

何故か入院準備に気合が入る二人であった・・・。


しつこい様だが冬夜にとって『母』と『妹』なのだが、キャッキャと、とても楽しそうに男物下着を選ぶ二人である。



その頃病室では・・・


喉乾いた。ジュースって売ってんのかな?

買いに行くか…

病室を出て辺りを見渡しキョロキョロと自動販売機を探す。

そしてナースセンターを見つけ声をかけることにした。

「すみません。自動販売機って何処ですか?」

その言葉にハッっとした看護師さんが何故か奥に入っていった…

そして微かに聞こえるその声は

”じゃんけんポン あいこでしょ”

‥‥・・・・・・場所聞いただけなのに何してんの??

待つこと数分… 自分で探した方が早かった気がする…

ナースセンターから出てきたのはさっきの女医さんだった。

「お待たせ致しました高柳様。自動販売機はこちらですよ。」

うん、すごく良い笑顔なんだけど、待たせ過ぎだよ!?

胸元に下がるネームプレートを見れば『平川 明美』と書いてある。

「あっ 有り難うございます、平川先生。」

「いえいえとんでも御座いません。

まだ目覚めたばかりで体調優れないとも限りませんのでお手をどうぞ。」

自販機に行きたいだけなんだが? まぁ確かにまだ怠さは残ってるけど。


そして、自販機前

「あっ」

財布もスマホ持ってない…

「どうなさいました?」

「いや お金が・・・」

手ぶらで自販機来るとかありえないよね お恥ずかしい…

「そうでしたか。ではここは私が出しましょう!」

「すみません。ここはお願いします。後で返しますね」

「ジュースくらいお姉さんにお任せよ!」

「ありがとうございます」




ってか 母さん何時戻ってくるんだ?




ショッピングモールを出る頃にはすっかり日が落ちていて買い物に夢中になりすぎて、慌てる姿の二人であった・・・ 


「きゃー お母さん急がないと面会時間がぁ~」

「そ、そうね。急ぎましょ!」





そして病室にて・・・


何故に一週間の入院でそんな大きなバッグ四つも・・・??

疑問符しか浮かばない冬夜であった・・・・・・・

遅いよ!

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