第78話 震えて待て!
そしてもう一つ。
なんとリーチュンまでもが、メインクエストを正規ルートでクリアしていたのだ。
これには俺も驚いたが、特に驚いていたのはイーゼで、凄く悔しそうな表情をしながら、愉快に話すリーチュンを睨んでいた。
んで、リーチュンが受けたメインクエストの内容だけど、これもまたシロマとほぼ同じで、
【ダークエルフの長老達を説得して、会談の場を設けさせよ】
である。
ただシロマと違って、前提クエストがなんだったのかは、未だにはっきりとわかっていない。
実際リーチュンは、特に何かを考えることなく、ひたすらダークエルフ領内で人助けをし続けていたらしいので、その中でどれが前提クエストだったかなんてはわからないのも無理もない。
だけどもしかしたら、それらの人助けクエスト全てが前提クエストだったのかもしれないと俺は思ってる。
というのも、偶然にしては出来過ぎているからだ。
俺はメインクエストを正しくクリアできなかった後、リーチュンとすれ違い、その時にシロマを探してゴールマスまで連れて来るようお願いする。
しかし、結局リーチュンはシロマを見つけられなかった。
まぁその頃、シロマはエルフ領にいたのだから当たり前なんだけどね。
だが代わりに、俺が探していたダークエルフの長老達と遭遇した。
ダークエルフの先発隊は既に編成されており、エルフ領に向かって進軍していたのである。
その軍の中には、以前リーチュンが助けた者もいたらしく、その者自体は戦争反対派であるも、半ば強制的に軍に参加させられたと聞き、そこで初めて
【ダークエルフの長老達を説得して、会談の場を設けさせよ】
というクエストを請け負ったらしい。
とはいえ、エルフ領のすぐ近くまで侵攻している長老達を、何の策もなくリーチュンが止められるはずもないのだが、そこに来て、今まで助けた者全てがなぜか集結し、リーチュンの援護に回ったそうだ。
その者達が援護に来るまでは、ダークエルフというよりも、一緒にいた人族からかなりの暴言を吐かれたり、説得の邪魔をされていたらしく、とても説得できる状況ではなかったそうだ。
しかし援護に来てくれたダークエルフの中には偉い人なんかもいたようで、結局長老達はリーチュンの説得に応じることとなり、戦争の前に会談を行うと約束する。
それを聞くと、やはりクリアできたのは偶然なんかではなく、数えきれない程の善行が巡り巡って自分に返ってきたということだと思う。
本当にリーチュンらしい良い話だった。
ちなみに報酬としては、俺と同じで30万パサロの他、【密書】という手紙を手に入れたそうな。
これもシロマの親書と同じで中身を確認することはできないが、違いがあるとすれば、これには差出人も宛先もないというところだ。
まぁ、だから密書なわけなんだけどね。
いずれにしても、これも最終クエストを有利にしてくれる物だと俺は信じてる。
本当にシロマもリーチュンもナイスだぜ。
んで最後にカリーだが、残念ながら失敗に終わっている。
というかカリーの場合は、俺やイーゼとも違い、本当に失敗らしくパサロもロザーナも貰っていない。
カリーはダークエルフ領でお宝探しのようなクエストを結構受けていて、その職業らしいと言えばらしいのであるが、船で海を移動したりしていたそうだ。
俺には海を渡るようなマスは見つけることができなかったので、もしかしたらそれは職業による恩恵かもしれない。
まぁそんな訳で、海に現れる海賊やらと戦ったり、密入国者と戦ったりと、この第三ステージでは一番戦闘していたのがカリーだ。
そして肝心のメインクエストだが
【最近黒い噂のある商団の違法物件を確保せよ】
というクエストらしく、その商談の取引先が人族であることがわかり、その人族のアジトを発見して潜入するも、実はそれはダミーで、本当のアジトの場所がわかった時にはもぬけの殻になっていたそうだ。
結果クエストが失敗に終わっていたのだけど、俺達の話を聞くまではそれがメインクエストだとは気づいてなかったみたいである。
ということで全員の話を聞いたところで、大分情報が揃ってきた。
一応みんなが集まる直前に近くの町に向かったイーゼが手に入れた情報は、ここでエルフとダークエルフの話し合いがあるということだけで、それ以外は特になかったらしい。
ただその時のイーゼにとっては、その情報だけで十分だった。
実際には、ゴールマスでいきなり二種族間の戦争が始まる可能性も高いと踏んでいて、それが話し合いから始まると聞いた時、他の仲間達が何かをして事態が動いたのだと感づいたらしい。
だからこそ、真っすぐ戻ってきたとのこと。
まぁそんな訳でとりあえず今聞いた話を集約した結果、その中でわかることを予想も含めてまとめると、
・一人がメインクエストをクリアすれば良いということではない。
・全員がクリアした場合、第三ステージクリアルートにつながる可能性があった。
・みんなの受けたクエストは全て繋がっている。
そして……
・人族めっちゃ怪しい
ということだ。
正直、俺とイーゼだけが得ていた情報だけでは、どっちが悪いのかわからなかったが、これだけ肝心なところで人族が関わっているのであれば、今一番疑わしいのはどう考えても人族である。
特にカリーの情報はでかい。
結果は失敗に終わっているが、その黒い取引先が人族であるならば、ほぼほぼ人族はアウト!
実際には魔王軍が人族を操っているという可能性もあるが、グレーなのは間違いない。
ただどちらにしても、具体的な証拠がないのも事実。
まぁそれが【親書】や【密書】である可能性も高いんだけどね。
だけどそれだけで全てがわかると考えるのは流石に甘いだろう。
この第三ステージがそんなに簡単な訳がないのだから。
と、そしてそうこう話している内に、残り時間も後5分を切った。
「ねぇサクセス、あれ見て!」
俺はリーチュンが指す方に目を向けると、黒い鎧を着た集団がこっちに向かっているのが見える。
どうやらダークエルフ軍が間もなくここ到着するようだ。
一方……
「サクセス様、あちらにも……」
今度はイーゼが逆方向を指すと、そこには白い鎧を着た集団が……
「エルフ軍も来たようだね」
俺がそう口にした瞬間、ゴールマスの形が変わっていく。
今までは中央にテーブルとイスが置いてあるだけの殺風景な場所であったが、気が付けばコロシアムのような会場に変わっている。
ただコロシアムと違うのは、まず円形ではなく、半円の形になっているところ。
そして中央にお立ち台が置かれ、その左右縦長に複数の椅子とテーブルが設置されている。
そして俺達がいるのは、中央北側だ。
「サクセスさん。これは裁判所ですね」
「そうみたいですわね、そして私達の場所は裁判官が座る場所ですわ。つまり、ここで行われるのは話し合いではなく、どちらが悪いかを決める裁判。そして決断を下すのは、わたくし達のようですわ」
「裁判? 裁判所? うわ……まじかよ」
あれ? 会談じゃなかったの?
なんでこうなってんの?
と理解が追いつかない俺であるが、それよりも裁判という言葉を聞いて、凄く嫌な事を思い出す。
かつて俺は大国アバロンにおいて、濡れ衣を着せられて、王様に化けていた魔物達に裁判されたことがあるのだ。
思い出すだけでムカついてきたわ。
あの時のハゲ……いや、大臣のカッパの野郎ときたらもう本当に……
あの時の事を思えば、冤罪の辛さは俺自身が誰よりもわかっているのかもしれない。
誰も何も信じてくれなくて……
本当に仲間が助けに来てくれた時は嬉しかったな。
だが今回は俺達が見極めて、裁く側だ。
絶対に黒幕を見つけて裁いてやるからな、震えて待て!!
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