第69話 情報が鍵?
既に第三ステージに入ってから100ターンが経過し、丁度折り返しまで来ていた。
ここまで進む間に幾度となく仲間達とすれ違い、情報を共有し合ってきたが、依然として誰もストーリークエストを発見できていない。
これだけ進めているにも関わらず……だ。
だが重要な事が一つだけ判明した。
それは第三ステージのクリア条件がゴールマスへの到達ではないこと。
今までのステージでは最後のマスがBOSSマス兼ゴールとなっていたが、この第三ステージは違う。
第三ステージのスタート地点から一番奥のマスまで俺は既に踏破しているのだが、予想外な事に、丁度スタート地点と最奥マスの中間に【GOAL】と書かれた札の立ったマスがあった。
ここは確かに広いのだが、そのGOALマスまで行くだけなら多分最短で40ターンもあれば行ける。
だが詳しくその話をする前に、まずは判明したこの第三ステージの世界感について少し話そう。
この世界には、三つの種族が存在する。
エルフ、ダークエルフ、そして人間だ。
その三つの種族の友好関係についてだが、エルフとダークエルフはお互いが協力し合わなければならない存在であれど、基本的にお互いに好意的ではない。
もっとわかりやすい表現をするならば、好きではないけど仕方なく付き合っているといったところだろうか。
ではなぜ二つの種族は嫌いあっているのに、付き合いをやめる事ができないのか?
それについては、二つの種族の得意分野にあった。
エルフは農作物等を育てるのが得意で、食料生産技術が高い。
ダークエルフは狩り等の戦闘が得意で、かつ、鉱山における採掘等も得意。
そういった特性上、お互い交易をすることで今の生活を維持できている関係上、付き合って生きていくしかないらしい。
では人族はどういう立場なのか?
まず初めに人族は、エルフにもの凄く嫌われている。
だが逆にダークエルフとは仲が良い。
エルフにとって人族とは、何の役にも立たないダークエルフの腰巾着という認識であるが、ダークエルフにとっては、人族は多くの情報を仕入れてくる便利な種族といったところだ。
こういった関係性なんかは、各街で発生するイベントをこなすことで、自然と理解できるようになる。
だけど、なんでエルフとダークエルフがいがみ合っているのかがわからないんだよな。
もしかしたらそれは、このステージをクリアするのに非常に重要な部分な気がしなくもないのだが、そこらへんの事について街マスにいる住民に聞いても、大体は
「ムカつくから」
としか答えてくれないし、もっと追及しようものならば、
「黙れ童貞!!」
やらなんやらと罵詈雑言を浴びせてくるので、まともに聞くことができなかった。
このステージでその事について聞くのはタブーなのかもしれないが、俺としては初見で童貞と見抜かれて悪口を言われるのは普通に傷つく。
あと目がエロいとか、顔がキモイとか……まじで酷くね?
友好関係のあるダークエルフですら、似たような事をやんわり言ってくるんだぜ? もうこのステージ嫌い。
とまぁそれはさておき、こういった関係性からなのか、二つの種族の街はゴールマスを境に分かれて存在しており、エルフの街はスタート地点からゴールマスまでの間、ダークエルフの街はゴールマスから最奥マスまでの間にある。
ちなみに一応探してはみたが、どういう訳は人族の街は無かった。
ただ話を聞く限り、このステージには存在しないけども、人族の国はどこかに存在するという設定っぽい。
そして肝心のゴールマスについてだが、残念ながら俺はそこに止まることなく、そのままスルーして先に進んでしまった。
しかしシロマとすれ違った時に聞いたのだが、彼女は既に一度ゴールマスに止まってるとのこと。
だがおかしい。
これまでのステージだと、誰かが先にゴールマスに止まると、他のキャラクターに急いでゴールマスに向かうようにステボや上空の掲示板に表示されるのだが、今の今までそういう事は起きていないのだ。
もちろんトンズラからもそんな事は聞いていない。
そのため、そこら辺の事も踏まえて詳しく聞いてみると、
「はい、何も起きませんでしたね。一応、闇の力の封印を解き放ってみたのですが……いえ、なんでもありません」
どうやらまだ完全に厨二病が抜け切れていないシロマ。
だが、言いたいことは伝わった。
そして、そこからシロマが導き出した答えは……
「サクセスさん。今回はゴールに行く事がクリア条件ではありません。同時に、分岐した道による錯誤関係の問題もないかと思料されます」
…………。
「ごめん、もっとわかりやすく教えて」
急に真面目モードで難しい言葉を言われてもわからない。
厨二病の時よりはましかもしれないが……
「えっと、ゲームマスターからもらったヒントについて、分岐した道の進む方によってクリアできなくなるかもしれないという話がありましたが、その可能性がなくなったということです」
「ん? じゃあ、クリア条件はどうなるんだ?」
「……わかりません。ですがもっと多くの街で情報を集めることができれば少しはわかるかもしれません」
「なるほど、確かに……」
「ただ私はエルフの街では上手くイベントをこなせないので、ダークエルフの街を中心に調べてみようと思います。だから、残り10ターンを切ったらゴールマスに集まりませんか?」
おぉ、素晴らしい案だ。
それにエルフ族から邪険にされているのが俺だけではないと知り、少し安心した。
「オッケー。みんなにもすれ違ったらそれを共有するわ」
「はい、よろしくお願いします」
とシロマと話し合った後、今度はイーゼとすれ違う。
「やはりそうでしたか……となると……」
シロマからの話を伝えたところ、イーゼは何か思いついたようだ。
「なんかわかったの?」
「いえ、まだ確信した訳ではないのですが……」
「構わない。教えてくれ」
「わかりました。わたくしの予想ではあるのですが、この第三ステージは200ターン経過すると、強制的にGOALマスに飛ばされてイベントが始まるのかもしれません」
「ふむふむ、なんでそう思うの?」
「一つは、このゲームの性質からの分析。二つ目は、これだけ全員でストーリークエストを探していても見つからないのは、200ターン目に強制イベントが始まる為であれば納得できるからですわ」
うーん、俺にはよくわからないけど、イーゼが言うならその可能性は高いと思う。
なんせ第三ステージがどんな仕様であるかとか、全て事前にイーゼが予測していた状況がほとんど的中しているし、今までも彼女の予測が外れたことは記憶にない。
「そうなると、第三ステージの攻略の鍵はやっぱり情報か……あれ? つまりここで起きている全てのイベントが、そもそもストーリークエストなのでは?」
「流石です、サクセス様。その通りですわ。わたくし達はできるだけ多くの街を訪れ、多くの者から情報を得る必要があります。ヒントにある、真実はその目に映るものに限らぬ……を見極める為に、より多くの情報と多角的な視点が求められますわ」
「う、うん。なんとなくわかった。要はどんどん街を訪れて情報収集しろってことだよね?」
「はい。シロマさんがダークエルフ側なら、わたくしはエルフ側をメインに街を回りますわ。同じエルフ同士、人族の方より色々教えてくれる可能性がありますから」
という事でイーゼはシロマとは逆に、エルフ側の情報収集となった。
イーゼ曰く、エルフの街では、俺のように目が合っただけで罵倒されるようなことはないらしいので、確かに適任と言える。
ただ、イーゼの場合はダークエルフの街では結構酷い扱いをされたらしい。
やはりこういったところで、エルフ族と人族の両方がパーティにいるのは有利に働くのかもしれない。
まぁ他のパーティでも人族が混じったパーティもあったらしいので、それがクリアに必須な状況ではないと思うが。
んで肝心の俺はというと、これまで通り、エルフの街とダークエルフの街の両方を訪れることにする。
カリーやリーチュンも俺と同じでいいだろう。
そんな感じで俺はトンズラと二人で現在ダークエルフの街に向かっている訳なんだが……
「しっかし、なんでこんなにいがみ合ってるのかね?」
(わからん!)
「だよね、知ってる。ところでさ、ダークエルフの街に行くと、なんで人族がクエストの仲介してくるんかね?」
(あぁ、それと大体がむさいおっさんな。いらんわ)
「そう、おっさん。まじあれはないよな」
(あぁ、ないよなぁ~。ボインボインのダークエルフチャンネーから受けたのにな)
「それな! ほんと最悪。次の街はしゃしゃり出てくる人族無視して、ボインと話すわ!」
(そのいきだぜ、相棒!)
そんな他愛のない会話をトンズラをしながら、再びダークエルフの街へと辿りつくのであった。
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