第68話 クエスト
「なんか緊張しますね」
「あぁ、今日が正念場だからな。みんな体調に問題はないか?」
「はい、問題ございませんわ。お昼までゆっくり休めましたので」
「アタイも元気一杯だよ! 早く戦いたい!」
「お前の方こそ、大丈夫か? 夜遅くまで出歩いてたみたいだけど」
あら、バレてたか。
「ちょっと色々考え事があってね。別にやましい事をしてた訳じゃないから! とりあえずみんな問題ないみたいだから入るぞ。気合入れて行こう!!」
今日は昼まで休むことができたので、みんな体調は良さそうだ。
この第三ステージは未だ誰もクリアできていない未踏のステージ。
だが俺達ならきっとクリアできる。
ビビアンの為にも、ここで躓く訳には行かない。
やってやんぜ!
※ ※ ※
「大樹海……ここは、エルフの森か?」
巨大……というには大きすぎる樹木が生い茂るこの場所。
最近は王都の中にいたので忘れていたが、俺達が今いる場所は大樹海の中。
それを思い出させる程に、目の前には壮大な景色が広がっている。
「へぇー、第三ステージはまんま樹海なんだな」
俺より少し遅れて到着したカリーも、目の前に広がる樹海を見て口にした。
「そうみたいだね、結構広そうだなぁこのマップ」
「だな、制限ターンでも見てみるか」
二人してステボの右上に表示されている制限ターン数を確認すると、
「200……200って凄いな」
「あぁ、こいつは色々面倒そうだな」
どうやらこのステージのマップは、かなり広大な可能性が高い。
ただでさえ色々精神的にキツイのに、200ターンは普通にヤバイだろ。
でも本当にマップが広大なだけなのだろうか?
それとも会議で可能性として挙がっていたクエストの関係だろうか?
俺達が情報収集をしている中で、具体的にクエストがあるという話を聞くことはできなかったが、どこかそれをうかがわせるような話はいくつかあった。
第二ステージをクリアしているパーティの話になるが、彼らはクリアできないにも関わらず、すごろく券が手に入り次第、必ず第三ステージをプレイしている。
それは女王様達も例外ではない。
イーゼが確認したところ、女王様も月に一度は第三ステージをやっているそうだ。
その理由が、現実世界にも利用できる何かをもらえるということだけは聞くことができた。
そういった小さな情報をいくつか総合的にまとめた結果、第三ステージからはランダムでクエストが発生して、その報酬が現実世界でもかなり有用な物であるということを予想する。
まだ今の段階ではその予想が正しいかどうかまではわからないが、一応、俺達の中では、クリアに必要なクエストをストーリークエスト、それ以外のものをサブクエストと分けて、できる限りすれ違った際には情報交換をする予定である。
まぁ実際にやってみないことにはわからないけど、色々事前に準備をしておくにこしたことはない。
「みんな集まったね。もう気付いていると思うけど制限ターン数は200。事前に話し合ったとおり、情報を共有しながら進むぞ」
その言葉に全員が頷いた。
※ ※ ※
第三ステージに入ってから既に50ターンが経過した。
「お、また新しい街だな」
(そうだっぺな。でもどうせまたハズレだべ)
そんな会話をしながら、俺は5マス先にある街に向かう。
ここまでやってきて、いくつかわかったことがあった。
まず初めに、うちの天才達が考えていた通り、第三ステージには膨大な数のイベントが用意されていた。
というのも、この第三ステージにはバトルマスがなく、代わりに街マスと呼んでいるマスが追加されていて、そこに到着すると必ず何かしらのイベントが発生する。
街マスは少し特殊で、そのマスに到着すると、4マス四方のミニマップに強制的に転移して、そこをグルグルと回りつつイベントやクエストをこなしていくのだ。
ただ別に、必ずイベントをこなさなければミニマップ(街マス)から出られないという訳でもなくて、街の門というマスにさえ止まることができれば、自由に出入りができる仕様。
でもまぁミニマップに入ってからイベントをこなさずに、街の門に行って外に出ようとすることはほとんどない。
なぜならばミニマップ内では5ターン経過するごとに、全体マップでのターン数が1減少する仕様となっていて、更にイベントを達成するとミニマップ内のどこに居ようとも、次のターンで街マスから出ることができるからだ。
無駄にグルグル回って門マスに止まるより、どう考えてもそっちの方が効率的だし、イベントを達成することでもらえる報酬をスルーする馬鹿はいないだろう。
だってこのイベント報酬は、非常に貴重な物が多いからね。
既に俺もいくつかのイベントをやっているが、報酬としては、すごろく内で使えるアイテムや武器防具の他、現実世界に持ち帰ることが可能な食べ物や鉱石等も手に入れることができる。
つまり第三ステージをプレイしているパーティのほとんどは、この外の世界に持ち帰れるアイテムが目当てという訳だ。
その中でも特にメインとなっているのは、多分この魔液晶石だろう。
俺も小さい物だが一つだけ手に入れた。
そして次にイベントについてだが、大体は討伐クエストだったり、街の中のマスを探索して必要アイテムを取りに行くようなお使いクエストだが、大体5ターンもあれば達成できる。
というのも、ミニマップは街の門を抜かせば合計11マスの作りなっているが、目的のアイテムを発見したり魔物を討伐すれば、クエストを受注したマスに強制的にワープができて、クエストクリアできるからだ。
そんな親切仕様な街マスではあるが、この第三ステージにはかなりの街が存在するっぽいし、その中でストーリークエストを探すのは結構骨が折れそうだ。
まぁとりあえず今わかることは、他のパーティがクリアできないにも関わらず、この第三ステージを繰り返しやっている理由だけ。
ここは言うなれば、完全にボーナスステージ。
第一や第二と違って、現実で使える物をたくさん持ち帰られるのは非常に有益である。
秘密クラブがなぜあれだけ高度なマシンや魔水晶を大量に用意できた理由が、ここに来たことで理解できた。
それらは全てここで手に入れていたものだったのである。
そんな感じで非常においしい第三ステージであるのだが、俺とトンズラにはとても不満に思っていることがあった。
それは最初にトンズラが「ハズレ」と言っていたことで、それが意味することは、別にストーリークエストがなさそうという事ではない。
そう、二人がこの街に……
いや第三ステージに求めているのは……
(やっぱ宿屋ねぇなぁ~)
「だな。まぁ戦闘があまりないからじゃね?」
この会話からもうわかるだろう。
何がハズレって、どこの街にも宿屋がないんよ。
魅惑の45タイムを期待している俺達にとって、これは死活問題なんだ!
もちろんクリアするためにやるべき事とかさ、色々忘れてはいない。
でも……ね、ほら、一度良い思いするとね
……また期待しちゃうんだ。
だって、俺達……童貞だもの……。
それから更に50ターンが経過する。
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