第63話 二次転職

「ぐわぁぁぁ! やっちまったぁぁぁぁ!!」


(やっちまったなぁぁ! おい!!)



 現在、第二ステージのボスマスの中央で、叫び声をあげる俺とステボ、もといトンズラ。


 何がやっちまったって、調子に乗り過ぎてたんよ。


 ここに来るまでの間、途中に一度宿屋を見つけたんだけど、もっと奥に同じような建物があったのでスルーしてしまったんだ。


 というのも、ギリギリまでレベルアップしてからの方が、余裕を持って一人情事……ではなく、ステータス強化をできると考えてたからなのに、まさかボスマス近くに見えた宿屋っぽい建物が偽物だったなんて……。


 数字カードを使ってまで訪れたその建物は、なんと



  【モンスターハウス】



と呼ばれる、魔物との連戦エリアだったのだ。


  その事実を知った時は、そりゃあもう怒り狂いましたわ。


 あれほどまでに股間も期待も膨らませておいて、バトルとかありえんばい!


 気が付けば無意識に


   【エレクト】


を久しぶりに使っており、その結果、レベルアップで覚えていた


   謎スキル【オナスラッシュ】


を使えるようになってしまった。


 オナスラッシュはエレクト発動時のみ使えるスキルらしく、鞘を激しくこすればこする程攻撃力が増す、範囲斬撃スキルだった。


 そしてその威力と範囲は、モンスターハウスのモンスターをその一撃を持って、殆どが瞬溶けするほどで、凄まじい破壊力。


 スキル自体はディバインチャージと非常に似ている感じかな、スキル名と発動条件以外はね。


 ちなみに、最初はこする方を間違えて発動できなかったのは愛嬌。


 っていうか、それもこれも全部トンズラの中途半端な説明のせい。



(そのスキルはこすればこする程強くなるぜ、相棒!)



 とかいうからさ、てっきりエレクトした息子の方かと思うじゃん?


 まさか鞘の方とは思わなかったわ。



 とまぁそんな訳で、俺は宿屋に到着することなくボスマスまで来てしまったって訳なんだわさ。


 んでもってボスマスまで辿り着いたはいいんだけど、残りターン数は2。


 俺であっても神殿に寄るとギリギリだった。


 であれば、当然仲間達が辿り着くことは無い。


 イーゼに見極めをお願いしたが、見極める前にこりゃ終わりですばい。


 でもそういう話をしたのもあって、多分全員転職はできたはず。


 すごろく回数券にはまだ余裕もあるし、同じステージなら今日中にもう一回できるだろうからそれでオッケーさ。


 ところで話を少し戻すが、戦いまくっていた結果、俺のスキルについてわかったことがある。


 それは



  【無修正】



というスキルだ。


 このスキルは予想以上に使えるかもしれない。


 というのも、まず第一にこのスキルは使用しても自分のターンが消費されないのだ。


 そのくせ、敵に使う事で、敵の弱点部位を丸裸にしてしまう。


 ファイヤータートルや熱スライムなんかは、弱点以外は攻撃力が高くてもダメージが入りづらかったけど、このスキルのお蔭で弱点部位が透けて見えるので、余裕で倒せるようになった。


 その他にも、俺の見た目にかかっていたモザイクもこのスキルでオン、オフができる。


 しかし俺にモザイクが掛かっている状態だと、敵の攻撃がミスりやすくなるため、結局はずっとモザイクマンのままなんだけどね。


 今は一応オフにしてるけど。


 他にも相手のバフを解除したりと、とにかく優秀なスキルだよこれは。



  最後に暴走というスキルだが、これはいざという時以外使うつもりはない。


 トンズラが言うには、【暴走】はターン制バトルというのを無視して攻撃できるようになるという、完全にチートスキルらしい。


 ただそれを使った後は、何ターンも自我が消えたままになってしまうらしく、戦闘が終わってもずっと自分のターンで動くことができなくなるそうだ。


 使いようによっては凄そうだけど、今のところ使う必要性はない。


 使わなくても十分すぎる程強いからね、これでステータスが更に上がったらもはや敵なしな気がする。


 そんな感じで新しい職業のスキルに慣れることもできたので、第二ステージのファーストアタックにしては上々ではないだろうか。



 そして、残りの2ターンも気づけば経過する。



(相棒! 終わったぜ! 失敗だ!)


「嬉しそうだな、トンズラ」


(あたぼうよ! 早く俺っちを宿屋に連れてってくれ!)


「わかってるって、場所はもう把握してんだ。それまで我慢しようぜ! お互いな!!」



 いつの間にか仲の戻った俺とトンズラ。


 やっぱりなんだかんだ言って、こいつとは馬が合うんだよなぁ。



 ※  ※  ※



 ファーストアタックに失敗した俺達は、第一ステージをクリアした後に移動していた部屋へと転送された。



「おっつーー! みんな!」


「お疲れ、リーチュン」


「サクセス様、会いたかったですわ!」


「我はまた強さの深淵を覗いてしまった……そして我もまた深淵に覗かれている」


「シロマちゃん、相変わらずだな。もうステージ終わってんぞ」



 みんな失敗した割に表情が明るい。


 実際、誰もが今回はクリアが目的ではないと認識していたからだろう。


 ということはもちろん……



「んで、みんな二次転職はできたのかな?」


「あぁ、問題なくな。やっぱり転職すると間に合わなかったな」


「だね、ちなみにカリーは何に転職したんだ? いや、カリーだけじゃない。再戦する前にみんなの職業や能力、また何かわかった事とか感じたことがあったら教えてほしい」



 俺がそう口にしたことで、二回目のアタックの前に少し昼食がてら作戦会議をすることになった。



※  ※  ※



 みんなから大体の話を聞いたところ、職業やレベルはこんな感じだ。



 カリーは


  海キング(カイキング) レベル17


 装備は同じく斧で、職業は海賊の上位互換といった感じ。


 より耐久性と力が上がった感じで、水系のスキルも使えるようになったそうな。


 凄くまともっぽい感じで羨ましい。



 リーチュンは


  美舞闘士 レベル16


 攻撃はパンチとキックと変わらないが、回復スキルや補助スキルも身に付けたらしい。


 これもまた踊り子の上位互換だ。


 ちなみに装備の肌面積が更に広くなったらしいので、すんごい興味がある。



 イーゼは


  森の魔女 レベル21


 今回一番変わったのはイーゼかもしれない。


 今まで通り、風魔法で攻撃や回復もでき、かつ敵の技を使えるというのは変わらないが、それに加えて、戦った事のある魔物を召喚して使役できるようになったそうな。


 といっても、使役召喚できたのは第一ステージにいた森系の魔物のみで、炎系の魔物はできなかったらしい。


 でも単独でステージを進める上でパーティがいるのはかなり強い。


 俺もある意味一人ではなくなったんだけど、イーゼと俺では違い過ぎるな。


 そして最後は


 シロマ


  闇の使徒 レベル8


 厨二病が大分進行しているのが非常に不安になるが、ダイスの他に、儀式というスキルが使えるようになったらしい。


 これはイーゼが使う使役召喚の能力と似ていて、簡単に言うと悪魔召喚。


 しかし使役召喚と違うのは、召喚した悪魔は召喚主の生命力と引き換えに敵を攻撃するというもの。


 その威力は凄まじいらしい。


 しかし同時に常に生命力がカツカツになってしまうから、回復アイテムが大量に必要になるため、気軽には使えないそうだ。


 基本はダイスでの戦闘で、ここぞって時に儀式を使うんだって。



  んで最後は俺。


 サクセス 

 狂人(童貞を拗らせた男) レベル34


 詳しいことは説明しなかったが、ディバインチャージ的なスキルを覚えたという事と、敵の弱点を見破るスキルを覚えたと伝えた時、みんなが期待に目を輝かせていた。


 実際のスキル名とか色々説明したら、ドン引きだろうけどね。


 まぁもとから強かった俺が更に強くなれば、そりゃみんな期待するわな。


 んでもって、トンズラについてだけど敢えて説明はしなかった。


 というのもする必要がない。


 トンズラの声は俺にしか届かない訳で、もしトンズラの事を話せば色々ややこしくなりそうだったからだ。



 知らない方が幸せな事ってあるよね……。



 まぁそんな訳で全員無事転職もできたし、その能力もわかったことから、早速二回目のチャレンジに向かうことにする。


 道も大体覚えているし、今回は普通に全員がボスマスまで行ける可能性は高い。


 後はボスがどの程度強いかというのと、道中にどれだけレベル上げられるか、そして生命力を温存できるかがクリアへの鍵だ。


 

「うし、2回目でクリアしたグループはいないらしいけど、やってやろうぜみんな!」


「おぉぉ!!!」


 

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